一番感動されたスピーチ、NGだったスピーチを教えてください
私は誰よりも多くのスピーチを拝聴してきました。議員秘書をしていた時代から、毎日あらゆるスピーチに触れ、スピーチを作成し、検証し、数多くの失敗と喝采、しびれるような経験の中でスピーチの持つ力、怖さを、身を持って知りました。聞いたとたん胸にくるのは、話し手の心を感じる時です。心とは何か。聞き手の心に響くことです。それには、下準備が必要なのです。
市井の一般人には、びっくりするほど、聞き手の胸をかき乱す、そこにいる人の魂をふるわす、そんなスピーチをする方がいます。それは、本人のセンスとしか言いようがありません。しかし、そのスピーチを、じっくり検証すると、実に多くの時間をかけて、考え、構成されたことがわかります。
それが、本番で、等身大の自分の言葉で、表現された時、その話し手の誠実で真剣な心を感じて、胸にくるのです。評価に値しないのは、ネタを引用したスピーチです。そんなもので、一瞬、拍手喝采とったところで、邪道です。スピーチが終わってから、そのスピーチをした方の評価が上がることも、ありません。
誰の心をも動かさず、例文を引用したようなスピーチをする方が、実際多いのですが、それは、聞き手にとって無駄な時間であり、その方にとっては、人生最大のチャンスを棒に振るようなものです。もったいない。一生懸命スピーチに向き合えば、それは聞き手が感じます。そうでないスピーチは、新郎新婦やゲストへの冒涜です。悲劇は、あなた自身に跳ね返ってくるのです。
質問には、ありませんが、稚拙な表現が、スピーチをつまらなくします。「思いやりがあって、優しくて、気づかいができて、料理が上手で」などの連続した形容詞・修飾語(褒め言葉)は、聞き手に何も感じさせません。言うだけムダです。それは、あなたの主観を並べただけで、聞き手には、何も伝わらないのです。エピソードや、客観的事実を通して、そう感じてもらうことが必要です。
最後に鈴木さんにとって「美しいスピーチ」とは?
スピーチの際、話し手と聞き手は、お互いの時間と空間を共有します。そこで何らかのチカラ、ベクトル、気、のようなものを全員が、同じように感じ、同じ空気感を心地良く感じ、その瞬間、それぞれの人たちが、何かを悟ったことを実感し、言葉で言えない充実感に包まれた時、スピーチは素晴らしい効果を発揮します。それは、話し手にとって至福の時です。しかし、100人中、100人に受け入れられるスピーチなど、ありません。AKBのライブとは違います。聞きたくて集まってきた人が、聞いているわけではないのです。どんなに評価の高いスピーチでも、よかったと思ってくれる人は、せいぜい、80人以下でしょう。
私の作成したスピーチでも、よく、ゲスト全員が泣いていた、会場が一つになった、などの報告がありますが、実際にそんなことはありません。親戚のご婦人方などは、聞いていないことが多いし、メールしてる人もいますから。
ただ、前述した通り、話し手の心が感じられるスピーチは、1分、2分、と過ぎていくに従い、会場が静かになります。聞き手の心が、話し手の心を、受け入れるのです。そして、いい人だね、いい子だね、という気持ちを、みんなで共有した時、それは、美しいスピーチとなるのです。
いかがでしたか? 一生懸命に練習して本番に臨めば、自分が真剣に取り組んだ姿勢が、聞き手に伝わり、感動に繋がっていくんですね。そしてあがっても大丈夫!これならガイドも自信を持ってスピーチを披露できます。
⇒プロに聞く、結婚式のスピーチのコツ(前編)
取材協力:「幸せを呼ぶ美しい結婚式スピーチ」