本格的な乳腺炎の原因・症状とは
乳房の皮膚が発赤し、痛いしこり、38度以上の発熱、全身倦怠や悪寒戦慄(全身が震えて寒く感じる)などの症状になると本格的な乳腺炎です。
非感染性、細菌感染性のいずれでも起こりますが、正確な区別はできないので、病院で抗生物質、解熱鎮痛剤による治療が必要になります。その際は、保険診療になります。熟練助産師による適切なマッサージであれば改善する場合もあります。
正確な統計はありませんが、乳腺炎になりかけた人の1割弱の方がこの状態に進行します。
乳腺炎になったら授乳を続けながら、病院で治療相談を
本格的な乳腺炎になったら、一番大切なのは授乳を続けることです。また食事内容に注意する、授乳リズムを崩さない、休養を十分に取るなどの基本的な対処に加え、全身発熱時には十分な水分摂取、水かカロリーの少ないスポーツドリンクを、解熱までに2リットル以上の摂取が必要です。牛乳、炭酸、果汁100%ジュースなどは逆効果です。
痛いしこりは冷やします。おっぱいは冷やしたほうがいいのか、温めたほうがいいのかについては、「乳腺炎は冷やす? 温める?」で詳しく解説しています。
乳腺炎の治療の相談は、分娩をした産科施設を受診するのが理想ですが、里帰りの場合や、地域によって実情、対応は異なると思います。母乳育児に理解のある乳腺外科なら、適切な対応が期待できます。
本格的な乳腺炎と判断されれば、解熱鎮痛剤と、抗生物質が処方(場合によっては点滴治療)されますが、授乳を続けながらの治療をお願いしてみましょう。授乳を続けることが最も大事です。
乳腺炎の病院で処方される治療薬
乳腺炎に限らず風邪などでも、授乳中に、かかりつけの医師を受診すると、薬が処方され、一時的に授乳を控えるように、指示されることがあります。こんな時は、授乳を続けることができる抗生物質、解熱鎮痛剤を処方してもらうようにお願いしましょう。具体的には、
解熱鎮痛剤としては、
■アセトアミノフェン
(処方薬品名:カロナール、コカール、ピリナジン)
■イブプロフェン
(処方薬品名:ブルフェン)
抗生物質は医師の処方が必要ですが、授乳を中止する必要はありません。
■経口用セフェム系抗生物質
(処方薬品名:フロモックス、メイアクト、セフゾン、トミロンなど、市場占有率順)
乳腺炎の病状により別の系統の抗生物質が必要になることもありますが、よほどのことでなければ授乳禁止の抗生物質が必要になることはありません。
治療薬は、授乳直後に服用し、次の授乳までに時間を空ければ母乳中への薬の移行が少ないと、指示されることがあります。有効な方法ですが、あまり神経質になる必要はありません。授乳リズムを守ることの方が重要です。
自分で市販の鎮痛剤の内服は?
医療機関を受診できないような緊急事態の際、使用法を守れば解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン、イブプロフェンを1、2回、服用できます。それで改善しなければ、医師の受診が必要です。この2剤はWHO(世界保健機関)他からも授乳中の鎮痛剤として認められています。具体的には■アセトアミノフェン
国内市販名 タイレノールA、タイレノールFD (第2類医薬品)
商標のTylenol は、英英辞典、英和辞典にも記載されている世界標準薬で、
世界中のホテルにも常備されています。
■イブプロフェン
国内市販名 イブ (第2類医薬品)
これも世界中で手に入る薬ですが、日本では小児適応が制限されており、授乳中は医師の指示の元で、セカンドチョイスとして使用されます。
以上の2剤は、医師に電話確認して、服用OKになることがあります。私は薬剤アレルギーなどの問診が済んでいる方には、夜間などで受診が難しい場合に許可しています。