乳腺炎の要因はさまざま
乳腺炎にはさまざまな要因がある
生活環境や育児環境、産後の乳頭亀裂、お母さんの疲労、乳栓、不適切な授乳姿勢、不適切なくわえ方、不適切なミルク補充、授乳間隔の急な変化などが要因となって、乳腺炎が起こります。それぞれについて説明します。
1.生活習慣や育児環境
乳腺炎を繰り返す方がいます。多くの場合、お母さんの生活習慣や育児環境などが影響しています。乳腺炎を繰り返さないために、授乳に適した環境の整備や、食事内容の見直しなどが必要です。2.乳頭亀裂により母乳育児が
お産後、乳輪部がまだ柔らかい時期から頻回に授乳をすることで、乳頭・乳輪部が授乳に適した状態になります。このタイミングを外してしまい、乳房が張り出してからでは、赤ちゃんは乳頭の先端にしか吸い付けずに、乳頭、特に根元に亀裂ができてしまいます。それをきっかけに乳腺炎になったり、授乳リズムが作れずに、母乳育児がうまくいかなくなる人が、たくさんいます。3.疲労が原因
お産後、お母さんはしっかり休みましょう。赤ちゃんを抱く、授乳する。水分を十分摂り、ご飯、お野菜を食べる。トイレに行く。そして寝る。もし、それ以外の用事や、面会などを控えていたら、乳腺炎にならなかったのに、と思うことがよくあります。家族以外の人が、お祝いと称してケーキなどを持って、お母さん、赤ちゃんを見物しに行ったりするのも、昔は慎んだものです。4.乳栓
お産後、初めの頃に出る初乳はネバネバしていて、特に赤ちゃんに与えたい成分が含まれています。ですから、早くから授乳させないと乳管にネバネバが詰まり、乳腺が痛くなります。十分な水分補給も大事です。血液がドロドロしていると、作られる母乳もドロドロになって乳管が詰まりやすくなります。血液サラサラを意識した食事は授乳中のお母さんにも大事です。
5.授乳間隔の急な変化
母乳育児が順調にできていた人が、急に乳腺炎の症状を訴える場合には、授乳リズムが変わった、授乳間隔が空いた、食事の注意が足りなかったとか、必ず、何かの理由があります。母乳育児は、生理的現象なので、一旦順調になったら、理由なしにトラブルを起こさないものです。その原因に気がつけば、ひどい乳腺炎にはならずにすみます。6.不適切な授乳姿勢
授乳はお母さんと赤ちゃんの共同作業。色々な姿勢を試しているうちに、二人に適した姿勢が見つかるものですが、姿勢が不適切なままですと、赤ちゃんがうまく乳首をくわえられず、乳首トラブルの原因になります。お母さんが緊張したり、不安でいると、赤ちゃんも安心して飲むことができず、乳腺トラブルの原因になります。授乳姿勢については、助産師さんにアドバイスしてもらうと良いと思います。7.不適切なくわえ方
赤ちゃんがおっぱいを飲むときは、大人がストローでジュースを飲むように吸うのではありません。口を大きく開けて、乳輪まで大きくくわえて、あごを動かしながら飲みます(吸啜=きゅうてつといいます)。本来は、本能的にうまくできるようになるのですが、何かのきっかけで、うまくいかない場合があります。決して、お母さんや赤ちゃんがヘタなのではなく、お母さんと赤ちゃんの微妙なタイミングを妨げるようなことがあった、などが影響しています。これも、うまく赤ちゃんがくわえてるかどうか、助産師さんにアドバイスしてもらいましょう。
8.搾乳器の不適切な使用
何か事情がない限り、搾乳器は不要です。昔、よく使われた搾乳器は、乳牛から牛乳を搾るように、面白いくらいにシャーシャーと出て、うまくいく人もいましたが、悲惨な乳首損傷、乳汁分泌過多症、必要以上に巨大な乳房、乳腺炎を引き起こすこともあり、お勧めできません。赤ちゃんがNICU(新生児センター)に入院中とか、乳首トラブルがひどくて、直接授乳ができないときなどに、赤ちゃんの吸啜動作を考慮した、乳首にやさしい搾乳器を使うことはOKです。母乳育児に詳しい助産師・医師にアドバイスしてもらってから使うようにしましょう。「乳腺炎と搾乳」の記事で詳しく紹介します。同時に、搾乳したお乳をスプーンやコップであげる方法も教えてもらいましょう。
9.不適切なミルク補充、補完食
せっかく母乳育児がうまくできていても、もしかしたら、あなたのお母さん、お姑さん世代の方から、なんでミルクを足さないの、と言われたりするかもしれません。 うまく聞き流すことができれば良いのですが、そうはいかないこともありますよね。特に、正直でまじめな人は気をつけてください。順調な母乳育児がミルクを足したことで、乳腺トラブルになることもあります。もちろん、ミルク補充が必要な赤ちゃんもいるし、お母さんの事情でミルク育児を選択する方もいらっしゃいますから、ミルクも必要です。このミルク補充、補完(離乳)食の問題は、次の機会にご説明します。