蔦の生い茂る建物が目印。看板は小さいので見逃さずに。
趣きあるこのビルの中には、クラシカルなデザインが美しいジュエリーのアトリエ「tmh. SLEEP(ティーエムエイチ スリープ)」や、キュートな帽子が見つかるギャラリー「I FIND EVERYTHING(アイ・ファインド・エブリシング)」 など、個性的なショップが密かに並び、知る人ぞ知るエリアです。その二つの店に挟まれた、秘密の小箱のようなギャラリーが「LIBRAIRIE6(リブレリーシス)/シス書店」です。
ひそやかに落ち着いた空間。
小さな作品が多いので、目を凝らしてみて下さい。
写真右上の小箱のオブジェは銅版画家・山下陽子さんの作品。オブジェのほかに、平面作品やコラージュなども制作しています。いずれも手のひらに乗るほどの小さな作品が多く、目を凝らしてじっと見れば見るほど、ポエティックで幻想的な世界に引き込まれていきます。
右下のビーズブローチは、刺繍家・小林モー子さんの作品。オートクチュール刺繍に欠かせないリュネビル法というかぎ針使用のテクニックを駆使した、繊細なビーズ刺繍が施されています。大人っぽさの中に、どこかユーモラスで愛おしさを感じさせる、独特の雰囲気があります。絵画をビーズ刺繍で表現した作品やウエディング等も手がけています。
博士の標本室のような雰囲気。
奥へ進むと、一段上った舞台のように区切りを付けた空間に、アンティークの不可思議な道具や、書籍が並んでいます。一言では表現しきれない、ミステリアスなものが多いですが、その奇妙で優雅な造形の狭間に強烈なパワーを感じます。書籍は、幻想文学やシュルレアリスム関連の書籍、図録などを中心に揃えているそうです。表紙のデザインにも独特の神秘性があります。
本そのものがオブジェのようです。
オーナーの佐々木聖さんは元々美術家であり、写真のコラージュ、オブジェなどを制作していたそうです。このギャラリーのテーマはシュルレアリスム。アーティストの作品もアンティークも書籍も、お互いを引き立て、空間全体をアートとして体感してもらえるよう、選ぶものやディスプレイにも趣向を凝らしています。
「ジャンルや年代は問わず、幻想的・神秘的要素の含まれたものを幅広く集めています。また、動物モチーフを取り入れていることもコンセプトのひとつ。私が動物好きだからでもあるのですが、いずれは動物達を守る活動などに役立てたいという思いがあります」。
佐々木さん自身もかつて犬を飼っており、いつも一緒にいる大切な存在でした。店名「リブレリーシス」とは、パリにかつてあったギャラリーの名から取ったこともひとつの由来ですが、”シス”は、6を表すフランス語であると同時に、佐々木さんの愛犬、”ピュシス”の呼び名でもあったそうです。
「きちんとマナーを守ってくれる動物なら、ギャラリーに連れて来てもいいですよ。ペットも一緒に楽しめるような空間にできたらいいなと思っています」。
そういえば、ヨーロッパのギャラリーなど、よく入り口に大きな犬がどーんと寝そべっていることがあります。お客さんが入ってこようがお構いなしに居座ってたりしますが、でも聞き分けのよい、おとなしいワンコばかり。ちょっと緊張感のあるギャラリーでも、気ままな風体の犬の存在にほっと和まされます。ここには本物のワンコはいませんが、彫刻家の前川秀樹さんが作った、思慮深い目をしたゴールデンレトリバーのオブジェが、ひょっこり静かに置かれていました。
窓辺にはスクリーンがあり、この日は宇野亜喜良さんのアニメーションを。
ギャラリーをオープンして初めての個展を開催します。
野中ユリ「夢の結晶力」展
7月28日(水)~8月22日(日)
野中ユリは1957年まだ10代の頃、タケミヤ画廊にて瀧口修造企画による銅版画展で鮮烈なデビューを飾り、その後現在に至るまで版画・装丁・挿画・コラージュ・デカルコマニ-・オブジェなど様々な表現媒体を駆使しながら独自の透明な幻想世界を生み出し続ける作家です。彼女の世界は、シュルレアリスム的精神を出発点としながら、多くの詩人、文学者、芸術家たちと詩的、文学的想像力を分かちあう中ではぐくまれ、20世紀後半の現代美術史の中に特異な位置を占めています。
今回は、そんな野中ユリの初期の銅版画作品から彩色版画、そして「コリントン卿登場」「狂王」等の限定本までを展示します。
LIBRAIRIE6(リブレリーシス)/シス書店
東京都渋谷区恵比寿南1-14-12 ルソレイユ302
TEL 03 6452 3345
OPEN / 水-土 12:00‐19:00 日 12:00-18:00
CLOSE / 月 ・ 火(祝日の場合も店休)
http://www.librairie6.com/