退職願は合意退職の申し込み?
通常「退職願」というものは「合意退職」と考えられているので、労働契約が有効に解約されるためには、使用者の承諾が必要になります。
このように退職願は、「使用者との間の労働契約を合意解約する」旨の、使用者に対する申し込みの意思表示です。それに対して使用者の「承認」の意思表示がなされ、その意思表示が労働者に到達したときに、合意解約の効果が発生します。労働者は、合意解約の効果が発生するまでは退職願を自由に撤回することができます(福岡高等裁判所・昭和53年8月9日判決)。
なお、合意解約の効果が発生する使用者の「承認」については、社長や人事部長など、退職承認の決定権がある者の意思表示であることが必要とされています(最高裁判所・昭和62年9月18日判決)。
ご相談のケース
ご相談のケースでは、相談者は直属の上司である観光部長に対し、退職願を提出しています。ですから、相談者の直属の上司である観光部長に、会社の職務権限規程などで、人事権の規定が定められているかどうかが、重要な決め手になります。もし観光部長に上記のような人事権等が与えられていなければ、観光部長には退職承認の決定権はない、ということになります(岡山地方裁判所・平成3年11月19日判決)。
もし、観光部長に退職承認の決定権がない場合、相談者は社長など退職承認の決定権がある人に退職願が届く前に「退職願は、撤回する」と伝えているのですから、相談者の退職願の撤回は有効です。相談者は、旅行代理店を辞める必要はありません。