はじめての高断熱住宅
プランニングが特徴的な「BEAM」は、別の意味でも、私たちにとって重要な住宅でした。2006年に竣工したこの家で、私たちは初めて全ての窓にペアガラスを採用したのです。きっかけになったのは、以前ご紹介した「テレスコープハウス」です。室内空間が縦につながった「テレスコープハウス」で、私たちは居間の暖房にエコキュートのお湯で温めるヒートポンプ温水式床暖房を採用し、一定の効果を得たのですが、その一方で夏には、暑い空気が最上階に溜まって不快なほどの温度になるという経験をしました。
「BEAM」も、1階から2階へと、空間が連続的につながっていく作りです。そして敷地は、夏の暑さで有名な甲府盆地の真ん中。どちらかと言えばローコストだった「BEAM」ですが、夏も冬も快適に過ごせる室内を作るために、壁や窓の断熱性を高めることは、どうしても必要なことでした。
Aさんが以前住んでいた家は灯油で暖房していましたが、断熱性が悪かったために、冬の光熱費は相当なものだったといいます。そこで私たちは3mの天井高を持つ食堂に、ランニングコストを抑えることを第一に考え、エコキュートのお湯で温めるヒートポンプ温水式床暖房を採用しました。。
「BEAM」の名前の由来は?
ところでなぜこの家は、「BEAM」という少し変わった名前なのでしょうか?その答えは、家の玄関代わりでもある、2階のテラスにあります。車の上部分が、2階のテラスにあたります。ここは、柱ではなく、壁で支える構造になっており、強度の確保とコストダウンを両立させることができました。
この長さ5.7mのテラスには下に柱がなく、両端にある木造の壁だけで支えられています。少し専門的な話になってしまいますが、5.7mという長さは、木造で支えるには長すぎて、普通ならば鉄骨を使う必要があります。ところが、鉄骨を使うと工事が複雑になり、かなりコストが上がってしまうのです。
長い間試行錯誤して考えた結果、私たちは、テラスの両端に高さ85cmの「手摺壁」を木造で作り、さらに構造用合板で挟み込むことで、手摺壁全体を巨大な「木造の梁(はり)」にすることを思い付きました。つまり、この手摺壁は「テラスの床を吊りさげる、大きな構造体」なのです。結果的に、安全上必要な手摺と、テラスを支える構造体をひとまとめに作ることができ、コストを抑えることができました。これがなければ、全ての窓にペアガラスを使うことは、難しかったに違いありません。
「BEAM」という単語には、建築の構造を支える「梁」という意味があります。家の側面を横切る梁は私たちにとって、デザイン面では大きなブレイクスルーになり、外観上のシンボルでもあります。これが、私たちが「BEAM」という名前をつけた理由です。
では、甲府市のオール電化住宅「BEAM」は、どうやってクレープ屋さんになったのでしょう?
続編はこちら→「クレープ店に変身!使い方自在のオール電化住宅」