暮らしの法律/金銭問題

だまされて保証人になった場合でも払わないとダメ?

保証人は、主債務者が返済をしない場合、債権者から請求されてしまいます。したがって、気軽に保証人を引き受けることはやめましょう。資金繰りに窮した知人から、保証人になってほしいと頼まれたら、弁護士を紹介してあげるべきです。

酒井 将

執筆者:酒井 将

暮らしの法律ガイド

相談内容:だまされて保証人になった場合

だまされて保証人になった場合、お金を払う必要はあるのか?

だまされて保証人になった場合、お金を払う必要はあるのか?

先日、友人のA君から「お金を借りるのに貸主からどうしても保証人が必要だと言われてしまったので、何とか保証人になってくれないか」と頼まれました。私は、自分の親から「保証人にだけはなってはいけない」と言われていたので、初めは、A君の依頼を断っていました。

ところが、A君は「他にも保証人を付けていて、その人は大金持ちだから君には絶対迷惑がかからないよ」などと言ってどうしてもお願いしたいというので、断りきれずに保証人になってしまいました。

それから半年ほど経った頃、お金の貸主から私宛に電話が入り、「A君が借金を返せなかったから代わりに借金を返してほしい」と言われました。私が「他の保証人がいるはずなので、その人に言ってほしい」というと、なんと貸主は「あなたの他に保証人はいない」というのです。

A君に確認したところ、他の保証人は契約直前になって逃げてしまったとのことでした。A君は他の保証人が契約直前に逃げてしまったにもかかわらず、他にも保証人がついていると私に嘘をついていたのです。私は、A君にだまされて保証人になったのですが、このような場合でも、お金を払わなければいけないのでしょうか。

保証人の責任とは?

法律上、保証人の責任は、「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う」(民法446条1項)と規定されています。

つまり、保証人は、主債務者(質問の事案ではA君)が、お金を返せないときには、主債務者に代わって、お金を返す義務を負うことになります。

法律上はどのような反論ができる?

では相談者も、A君に代わってお金を返さなければいけないのでしょうか。

そもそも保証は、貸主と保証人(相談者)との間の契約によって成立するものです。A君は保証契約の当事者ではありません。しかし、A君が嘘をついたことにより、自分には絶対に迷惑がかからないと思って保証人になったのですから、相談者の保証人になるという意思の表示は不完全なものであったと言えます。

この不完全な意思表示について相談者は、「錯誤(さくご)」(民法95条)又は「第三者詐欺」(民法96条2項)であるとして争うことが考えられます。
 

錯誤とは?

錯誤とは、簡単に言うと、何らかの勘違いをして意思表示をした場合のことです。もう少し詳しく言うと、その人が言ったことから推測される意思とその人が実際に思っている意思が食い違っていて、そのことにその人自身も気づいていないことをいいます。

例えば、本人は、ある物を「1000円で買います」と言ったつもりで、「1万円で買います」と言ってしまったような場合、「1万円で買うと言っているのだから、その人はその物を1万円で買う意思を持っているんだな」と周りの人は思いますが、実は本人は1000円で買う意思であり、2つの意思は食い違っていて、加えてそのことに本人自身も気づいていないので錯誤であると言えます。

錯誤が成立すると、本人に重大な過失がない限り契約は無効になります。
 

第三者詐欺とは?

第三者詐欺とは、契約の当事者ではない第三者が他人をだましてその人を錯誤に陥れることを言います。この場合、もう一方の契約当事者がだまされたことを知っていれば、だまされた者は契約を取り消すことができます。

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