為替レートと日経平均
昨年4月頃からじわじわと円高が進み、4月に1ドル93円台であったものが、8月には84円台にまで円高となりました。この期間において、為替は約9%変 動したことになりますが、日経平均株価はというと、11,200円台から8,900円台まで大幅下落しています。この間の日経平均の下落率はなんと約 20%。この状況を見ても分かる通り、為替変動が株価に与える影響は小さくないことが分かります。円高が企業に与える影響とは?
では具体的に為替変動が与える影響を簡単に解説します。例えば、ある日本の企業がアメリカで100万ドルの売上をあげたとします。この額を日本円に換算して計上しなければなりませんが、ここで1ドルが80円だとすると、売上は80×100万ドルで8000万円を計上します。
しかし、ここで1ドルが70円だった場合どうでしょうか?
日本円に換算した場合、売上は70×100万ドルで7000万円となり、円高の影響で1000万も減収が発生してしまいます。
逆にアメリカから商品を買うとき、円高は有利に働きます。
ある企業が原材料を1個100ドルで購入したとします。
この時、1ドル80円だったとすると、円に換金した場合、円建て費用は 100×80=8,000円となります。
ところが円高が進み1ドル70円時に購入したとすると 100×70=7,000円となり、1,000円安く購入できます。
日本を基準に考えると円高は相手国(この場合アメリカ)からの購入(輸入)に有利、販売(輸出)に不利となります。
円高に対する企業の認識
かつて経済産業省は緊急に円高影響調査と言うものを実施しました。その当時の円高に対する生の声を挙げてみます。■全体的に市場価格が低下しており、円高の影響を価格転嫁することは極めて困難。円高が中期的に進行する場合、海外シフトを加速せざるを得ない。
■輸入原料の割合が高く影響は短期的には少ないが、中長期的には、需要先の輸出型産業や日本経済全体の影響から、業績への悪影響を懸念している。
■円高が長期に及んだ場合は、海外向け船積み価格の値上がりに伴い、販売へ影響が出る可能性があり、経営計画の見直しが必要。
■円高がこれ以上進んだ場合には、収益の悪化、受注の減少に伴い更なるリストラが必要となり、設備投資も控えざるを得ない。
■海外調達や海外生産を増加させ、国内生産設備の閉鎖も考慮せざるを得ない。
■円高が回復しかけた株価や景気を停滞させることで内需に悪影響を与えることを懸念。
■回復傾向に反転した市場が冷え込む事態になると損益に大きな影響を与える恐れあり。
■原料輸入が多いため円高はプラスに作用、円高が国内の景気悪化につながるとマイナス。
■製品輸出入はほぼバランスしており、影響は少ないが、需要悪化を通じた間接的な影響の可能性も。
などの回答が得られました。
こうしてみると円高は輸入に関してはプラス材料です。しかし企業の目的は販売活動を行い、売上を増やすと言うことであり、その目的に直接マイナスの影響を与えるため、悪材料として認識されています。
私たちも多かれ少なかれ輸入品や海外旅行で価格変動を受けています。企業、特に海外売上の影響の高い会社は1年を通じてこの為替変動に直面しています。その動向をチェックすることは将来の株価を計算する上で重要であると言えるでしょう。