新規公開株市場
今年、これまでに(8月20日現在)新規上場してきた企業名と日付、公募価格、初値等を記載した表を以下に作成し、添付しました。クリックで拡大します。
今年はこれまで28社が上場。14社が公募価格を上回る初値を付け、残り14社は公募価格を下回りました(つまり今年の新規公開株市場においては初値が公募価格を上回る確立は50%)。従来は新規公開する大半の企業の株価は公募価格を大きく上回り、勢いよく上昇していたのですが、最近では初値が公募価格を下回ることも増え、だいぶ新規公開株市場の風向きも変化してきたといって良いでしょう。
新規公開株市場の傾向
上記の表からすると統計上、新規公開株の初値が公募価格より上昇する確立が50%、下落する確立が50%となっていますが、上昇する時の傾向が一定の条件下に存在している様に思われます。その条件とは
1、新規公開する時期
2、新規公開して株式市場から調達する金額
3、新規公開する市場
4、企業の業種
まず1点目の新規公開する時期についてですが、以下の表を見て頂ければ分かるのですが、2月下旬から3月中旬及び4月から7月にかけて初値が公募価格よりも上昇する傾向がありました。これは例年この時期が上昇するというよりはその時期の新規公開株市場が良かったからであると言えるでしょう。また逆に初値が公募価格割れしていた時期も明確に存在するため、新規公開する時期に新規公開株市場が好調であるか、不調であるかが初値形成に大きな影響を与えると言って良いでしょう。
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2点目として上場する際に株式市場から調達する金額の大きさが影響してきます。
以下の表を見て頂くと分かるのですが、株式市場から調達する金額が5億円以下となると
今年に入って7件が5億円以下の上場でしたが公募価格割れした企業はそのうちの2社にとどまり、勝率としては71.4%まで上昇します。
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ちなみに10億円以下の調達額だった企業は全部で19件でしたが、公募価格を上回ったのは9社。勝率は47.3%。15億円以下の調達額だった企業は24件で公募価格を上回ったのが11社。勝率は45.8%となっていることからも、新規公開する際に株式市場より調達する金額が小さければ小さいほど需給が良くなる点も含めて、初値が公募価格よりも上回る可能性が高いと言って良いでしょう。
3点目は新規公開する際の市場も初値形成に影響を及ぼすことが多い傾向があります。
今年に入り、東証2部への上場企業数は3社、ジャスダックは9社(NEO除く)、ジャスダックNEOは1社、東証マザーズが8社、大証ヘラクレスが5社、札証アンビシャスが1社、名証セントレックスが1社となっています。このうち東証2部及びジャスダックNEO、札証アンビシャス、名証セントレックスに上場した企業の初値は全て公募価格を下回っています。逆に公募価格を上回る初値を付けることが多かったのは大証ヘラクレスの4勝1敗(勝率80%)、東証マザーズの7勝1敗(勝率87.5%)です。ちなみにジャスダックは3勝6敗(勝率33.3%)と負け越しています。
4点目は企業の業種によって投資家に対する人気度合いが大きくことなるため、人気のある業種であると初値は公募価格を上回って高く上昇する傾向があり、不人気の業種であると下落することが多いのです。
最近で顕著に人気が無い業種の筆頭と言えば、不動産といって良いでしょう。今年に入り不動産企業の破綻が伝えられており、目先の不動産市況に対する懸念から不動産企業に対する人気は低く、不動産企業の初値は公募価格割れする傾向が大変強くなっています。不動産業を営む企業のブックビルディングは慎重に行うか、見送った方が良いとも言えるでしょう。