団塊の世代が大学生の頃に学生紛争の象徴でもあった東京大学の「安田講堂」を寄付した人は? それは「安田善次郎」翁、旧富士銀行を含む旧安田財閥の創業者であり、日本一の金融王とも呼ばれた銀行家です。

現在の日本は、インフレ時代からデフレ時代へ、右肩上がりから右肩下がりの経済へ、終身雇用制が崩壊など、まるで明治維新を迎える江戸末期のような混乱の時代です。江戸末期にすい星のごとく現れ、混乱の時代を乗り越え一代で日本一の金融王になった安田善次郎翁の生き様に、今の時代を生き抜くヒントを見出すことができるかもしれません。そこで『金のすべてを知り尽くした男』(青野豊作著 PHP研究所)から、安田翁の生き様、信条をご紹介します。


日本的不幸感を拒否!

安田善次郎翁は、極貧の家に生まれ6年間の奉公生活を経て江戸時代末期(明治維新の5年前)に25両を元手に露天の両替商として独立開業しました。26歳のことです。20年後には、安田銀行(旧富士銀行の前身)を中心とする金融グループを作り上げ、日本一の金融王と呼ばれるまでになりました。

彼の成功を支えたのは、幼少時代に培われた「日本的不幸感」に対する激しい拒否感と、彼独特の人生哲学でした。

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「日本人の不幸感とその対処法は独特のものがあり、今現在置かれている不幸に対して、

・今の境遇をただそのまま我慢する
・何らかの理由を見つけてあきらめる
・慰めになることで気を静める
・不幸の原因を自分自身に負わせて自責・自罰の気持ちになる


の4つの心理的解決法——「日本的マゾヒズム一つの型と考えてよい心理」——で対処する」(『日本人の心理』南博著 岩波新書より)。

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現代の多くの日本人も、このような対処法で日々を悶々と過ごしているといえるでしょう。しかし、安田翁は違いました。彼はこのような思考を拒絶し、常に前進あるのみという生き様を選択したのです。


家族円満で資産が増える

先の読めない時代に、夢を実現するためはどのような生活信条で日々を過ごせば良いのか。安田翁の人生信条の中に学ぶべき7つのポイントを見つけました。

その1財産を作るためには
その2借金は斯くして返せ
その3金の留まる生活
その4予算表の作り方
その5勤は主人で倹は妻女の如し
その6意志が弱いゆえに独立できぬ青年の5大特徴
その7難行を遂行しうる人の資格


その1 財産を作るためには

・目的に向かって順序正しく進む。
・自分の弱点悪癖は矯正し固く実行する。
・真心をもって事にあたる。
・虚飾を避けて実益を収むる。
・身の分限を守り公費を省いて不時の用に備える。


その2 借金は斯くして返せ

見栄や外聞を気にせず、一日も早く身を落とすべきところに落ち着けて新規に出直すこと。(=決断をズルズルと引き伸ばさない)


その3 金の溜まる生活

月末に収入の2割を非常準備として取り置き、残り8割で来月の生活をまかなう。やむお得ない臨時出費の予定があっても、断固として残り8割の中で納まる生活をする。


その4 予算表の作り方




経常費食費、住居費、光熱費等の支出
給与費個人の身上に関する出費(教育費、衣服費、交際費、こずかい等)は月給制にして個別に管理すること
義務費税金、公共的交際費、ローン返済費等
保険料生命、家屋、物品等の保険料、冠婚相殺費、住宅準備費等
予備費病気や天災、不意の失敗等に対する準備金や貯蓄



予算は月収を元に緻密に十分考えて計画し、あとで変更しないことが肝要である。予備費が少額であっても失望することはない。無形の効果——世間の信用と自分の安心——がある。


その5 勤は主人で倹は妻女の如し

勤と倹は車の両輪のごときものである。倹約一点張りは不可。勤と倹を相まって実行すれば次の効果がある。





第1の効果身体自然に壮快を覚え追々健康体になる
第2の効果何の職業にかかわらず繁盛する
第3の効果他に援助を仰ぐ必要なし。ゆえに心中常に安隠にして家庭円満、物議起こることなし。
第4の効果分度を守るようになり、簡易生活を好むことなるゆえ自ら品行方正になる
第5の効果資産の増えること疑いなし
第6の効果本業を経営する上において万事誠意を持って人に接し、豪も人を欺くの意志なきこととなる



その6 意志が弱いゆえに独立できぬ青年の5大特徴

・気が移りやすい。例えば衣類持物を流行にふれて欲しくなり、不必要なものまで作って過分の外見を張ろうとする。
・軽々しく人の保証人として不測の禍を買うことがある
・取引終始人の後ろに立ち、いわゆる「ひけ」をとるものである。
・困難なる事柄、または紛糾、錯雑なる事件に遭遇すれば、直ちに屈服頓挫してこれをいとい、ついに何事もなしあたわざるものである。
・その行為常に不規則で、何事も締めくくりのつかぬものである。


その7 難行を遂行しうる人物の資格
才能や技術よりもその人の熱心さと誠実さ



TVや雑誌の「家計お助け○○○」関連をよく見ると、相談者の多くは、安田翁の7つの信条から大きく外れている!ことに驚くでしょう。「これは別枠、月に1回のお付き合いだから、たまには外食、……」などなど収入以上の生活をしているのですから当然資金不足に陥り我慢を強いられ不満に満ちた生活になるわけです。

ライフプランをたて、強い意志を持ち、1~2割を天引貯蓄し、見栄を張らないで身の丈にあった生活をすることが、自分らしい豊かな生活につながるのでしょう。資産運用はその後ですね。

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