株式(=株)って、何?
ある街にとても評判のよいパン屋さんがありました。店主の田中さんは、「うちのパンを全国の人に食べてもらいたい」と思い、「大きなパン工場を作ろう」と考えました。しかし田中さんには、大きな工場を建てるお金も、工場で働く人をたくさん雇うお金もありませんでした。さて、田中さんはどうすると思いますか?
田中さんが最初に思いついた方法は、「銀行でお金を貸してもらうこと」でした。しかし、田中さんはためらいました。「お金を借りるってことは、約束の日までに返さないといけないってことだよなあ。ちゃんと返せるかなぁ」。田中さんはパンの味には自信がありましたが、すぐに大ヒットするとは限らないこともわかっていました。売り上げが少なくて、借金返済に精いっぱいになってしまったら、社員のお給料が払えなくなったり、小麦粉を仕入れるお金が足りなくなったりして、パン工場はつぶれてしまいます。
「あ~あ、誰か、『返さなくてもいいよ』ってお金を出してくれる太っ腹な人はいないかなぁ」。
困っている田中さんを見て、田中パン屋ファンの山本さんがお金を差し出していいました。「よし、君を応援しよう。このお金を使ってくれ。返してくれなんてことは言わないよ。その代わり、もうかったら、ボクにも少し分け前をくれよ」。「山本さん、ありがとう。このお金でパン工場を成功させて、恩返しができるように頑張るよ」
田中さんは、山本さんと同じ形でお金を出してくれる人を探すことにしました。一人一人と交渉するのは大変なので、『パン工場のもうけの一部を分けてもらえる券』を作って、1枚1万円で売ることにしました。すると、たくさんの人がその券を買ってくれて、山本さんはたくさんのお金を集めることができ、無事にパン工場を作ることができました。
解説
このお話の中の『もうけが出たら、もうけの一部を分けてもらえる券』が株式です。今は、紙で作った券(株券・かぶけん)ではなく、コンピュータ上のデータで管理されています。1枚2枚ではなく、1株2株と数えます。株式の持ち主になった人を「株主・かぶぬし」といいます。田中さんのパン工場のように、株式を発行してお金を集め、事業を行っている会社のことを「株式会社」といいます。「もうけの分け前」のことは、「配当金・はいとうきん」「配当・はいとう」といいます。
また、株式を買うことを「投資」といいます。パン工場が成功する保証はないけれども、成功を期待してお金を出す、というのが投資です。山本さんは、仮に1年目はダメでも2年目からはうまくいくかもしれないので、気長にパン工場を応援するつもりでいます。ここが、すぐに勝ち負けが決まってしまう賭け事と、投資の違いです。
さて、もうけの一部がもらえるだけでなく、買った株式をほかの人に売ってもうけることもできます。