投資家との地道なコミュニケーションがIRの基本 |
IRとはInvestor Relationsの略
日本語に直訳すると「投資家関係」。つまり、企業と投資家、および市場との関係構築がIR活動の基本です。企業によっては、IRをPRと勘違いしている場合もあれば、広報、PRの職種につきたい転職希望者が、間違ってIRに応募をするケースも見られます。
IRと広報、IRとPRは全く別個のものです。本来はある程度似ている部分があるのですが、日本企業では、従来から広報、PRは自社商品、サービスのアピールの意味合いが強くありました。広報、PRの一番の相手はメディアであるわけですが、IRの場合は、投資家が一番の相手です。
メディア相手の場合は、美人広報、美人PR担当者だとテレビ映りもいいのでウケがいいのですが、IRの場合は投資家は企業の収益状況、将来性を見極めたいだけであり、担当者が美人であっても美人でなくとも関係ありません。
IRは投資家、市場とのコミュニケーション部隊
企業は定期的に決算報告を市場に対して行います。また、何か業績に関係あるニュースが発生した場合は、プレスリリースの形で市場に対して一斉に情報発信を行います。IR部は、そういう企業からのメッセージ配信を担当します。
発信する情報は会社経営に関する事項が中心となり、代表的なものは役員の交代、資金調達の実施、業績予想の修正、他社の買収などとなります。一方、企業が発信するニュースには「○○商品に新味登場!」「テレビCMに○○さん(芸能人)を起用!」のような内容のものもありますが、これらはIRの範疇には入らず、広報、PRの対応分野です。投資家、市場は企業の収益状況、将来業績、そして株価の動向にしか興味がないと言っても言い過ぎではありません。彼らは、不必要な情報は必要としませんし、企業からの一方的な売り込み情報もいらないのです。
企業が行う経営戦略、財務戦略に関して、何か質問があれば投資家が問い合わせる先、それがIRとなります。
IR部は経営陣の代行役でもある
IR部にはさまざまな投資家から質問や連絡が来ます。会社の戦略に関わることが多数含まれますので、IR部は経営陣の代行役を務めることになります。つまり、経営陣の考えや戦略をIRを担当する人たちはつぶさに理解しておく必要があります。また、どこまで答えてよくて、何を言ってはいけないかも把握しておかなければいけません。IR部にいる人たちは、完全に経営者目線を共有する立場にあります。その点、海外企業では、IR部で働くことが出世コースと見られるケースもあります。
社内の全事業の状況を把握する必要性
投資家から来る質問は、企業経営全般に関することだとは限りません。ある事業部、または、ある商品やサービスに関することかもしれません。したがってIRのスタッフは、社内の各事業についても詳しくなります。他の部署の仕事内容は分からないぐらいに社内が細分化されている企業も増えていますので、IR部に求められる情報の網羅性は高度なものとなります。
実際には、IR部に配属される前に社内の全事業について詳しい社員はほとんど存在しませんので、IRに配属されて、投資家からさまざまな質問を受けていくうちに、徐々に社内の各事業の内容について把握していくというプロセスを経ることになります。
あまり知られていないIRの重要な目的は…?>>