解約返戻金には、3つの型がある
生命保険は20年、30年、終身(一生涯)など、契約期間が長いのが一般的です。長い人生には、ライフスタイルや保障ニーズ、家計などの変化があり、保険を続けられなかったり、違う保険に入り直す必要が生じたりすることがあります。そんなとき、保険を中途解約したとします。その際、契約者(保険料を払っている人)にお金が払い戻されることがあります。そのお金を「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」と言います。会社によって、解約払戻金(かいやくはらいもどしきん)など、別の呼び方をしていることもあります。
解約返戻金には、下記の3つの型があります。
- 従来型
- 低解約返戻金型(解約返戻金抑制型と呼ぶ場合も)
- 無解約返戻金型
2と3は、比較的、最近になってからできた型です。無解約返戻金型はその名の通り、解約返戻金がない保険、低解約返戻金型は保険料払込期間中の解約返戻金を従来型の70%程度に抑えた保険です。保険料は、従来型>低解約返戻金型>無解約返戻金型の順に安くなります。
解約返戻金がどの型かは、保険の種類で異なります。終身保険や学資保険は低解約返戻金型、定期保険や収入保障保険、医療保険は無解約返戻金型が多いようです。
中途解約するとペナルティを取られる!
解約返戻金は、下記の計算式を使って計算します。契約者価格 - 解約控除 = 解約返戻金の額
「契約者価格」は、将来の保険金などの支払いに充てるために積み立てられている責任準備金のうち、個々(解約する保険)の契約の収支残高(すでに支払われた給付金などがあれば、それを差し引いた残高)です。説明がややこしくてわかりにくいかもしれませんが、払い込んだ保険料の合計額ではないと覚えておいてください。
「解約控除」は、保険契約を結ぶにあたってかかった費用(営業職員への手数料、審査にかかる費用、保険証券の発行費用など)のうち、未回収の部分にあたります。その理由は次のようなことです。
私たちが払う保険料には、保険会社の経費が含まれています。そのうち、新契約にかかる費用は契約時に集中します。しかし、保険料はずっと一定になるよう平準化されているので、新契約にかかった費用も平準化して少しずつ回収することになります。しかし、中途解約すると、回収できない分が発生します。それを解約控除として差し引くわけです。つまり、ペナルティを取られるということです。
解約返戻金はどれくらい戻ってくる?
解約返戻金の額は、契約の時期、保険種類、保険期間、保険金額、中途解約の時期(契約してからの経過年数)で異なります。一般的に、早い時期に解約するほど解約返戻金の額は少なくなります。下表は、解約返戻金の推移の一例です。この終身保険は低解約返戻金型なので、保険料払込期間中の解約返戻金は抑えられています。その代わり、払い込みが満了すると、解約返戻金は従来型と同じ水準に戻るので、急に増えて元本(払い込んだ保険料の合計額)を上回ります(表の赤字部分)。
解約返戻金は保険のソントクに関係するの?
では、解約返戻金がもらえる保険のほうがおトクなのでしょうか? 保障目的で加入するケースと貯蓄目的で加入するケースでは、考え方が違います。前者のケースは、保険種類としては定期保険、収入保障保険、医療保険が該当し、最近では、無解約返戻金型が主流となっています。解約返戻金をなくすことで保険料を安くしているので、少ないコストで保障を確保できるメリットがあります。解約返戻金はなくてもいいと考えられます。
後者のケースは、終身保険、学資保険が該当し、これらには無解約返戻金型はほとんどありません。低解約返戻金型か従来型です。どちらのタイプも、保険の貯蓄性は最低水準の昨今、あまりおトクとは言えません。
ただ、終身の死亡保障が必要、もしくは学資保険で教育資金を作りたい場合は、中途解約はしないはずなので、解約返戻金を抑えて保険料を安くした型のほうが家計の負担は軽くできます。
結論は、解約返戻金で保険のソントクを判断するものではないということです。
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