今回は新聞に取り上げられました記事から、なぜ遺産の総額がわかるかの謎の解明です。相続税の用語解説と、この記事から読み取れることを解説するシリーズの第2回目です。
■記事の紹介■
佐川急便(本社・京都市)の元会長で、昨年3月に79歳で死去した佐川清さんの課税対象となる1.遺産総額は約53億2000万円になることが24日、京都・左京税務署の2.公示で分かった。3.相続税額は約28億円で、既に納付されているという。 公示などによると、遺産は4.長男ら4人が相続した。5.遺産の主な内訳は不動産や現金など。 [毎日新聞2003年3月24日]
■用語解説 vol.2■
1.遺産総額
遺された財産の評価額―相続税の非課税財産―債務・葬式費用(ここまでを「純資産価額」といいます)+暦年贈与によって加算される贈与財産価額
上記のことを言います。相続税の申告書では合計の課税価格という名で呼ばれています。公示制度では相続人毎に課税価格が開示されています。よってこの記事の遺産総額は記者の方が足し算したと思われます。
ここから基礎控除を差引き相続税の計算をしていきます。
2.公示
被相続人(亡くなった方)の純資産価額に相続時精算課税制度による贈与財産価額を加えたものが5億円超の方は納税者(相続人)全員が自動的に公表されることになっています。
相続人として単独で課税価格が2億円超の方はその方の名前も自動的に公表されることになっています。
税務署長は提出があった日から4月以内に氏名(相続人の名前)、納税地(被相続人の住所)、課税価格(相続人毎に)を少なくとも1月間公示することになっています。よって相続人の住所はわかりません。
3.相続税額28億円
課税価格から基礎控除を引いたものを、取り合えず法定相続人が法定相続分で分けます。この分けられた価格が多ければ多いほど、税率は高くなります。最高税率はなんと50%です。各法定相続人の取得金額に税率をかけて算出された全員の税額の合計から各種税額控除を引いたものが相続税額です。これは公示されてませんので、記者の方が推定計算したものと思われます。
4.長男ら4人が相続
公示により、通常相続人全員の名前がわかります。その方が長男かどうかは公示ではわかりませんので記者の方が調べたと思われます。さらに相続人ごとの課税価格もわかりますのでどのような遺産分割がされたかは総額では推測できます。
5.遺産の内訳
これは推測です。内訳までは公表されません。ただし、遺産のほとんどは不動産と現金になりますので、この推測はまちがっているわけではありません。