相続・相続税/相続・相続税の基礎知識

贈与と相続はどちらが得になる?注意点は?

親から財産を受け継ぐ場合、生前贈与と相続ではどちらが得なのでしょうか?ケースによって異なりますので確認してみましょう。また注意点、リスクについても解説します。

小野 修

執筆者:小野 修

相続・相続税ガイド

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相続税は以前より増税、贈与税は税率が下がり減税に

平成27年の相続税の増税や贈与税の減税により、生前贈与を活用した相続対策が盛んです。しかしながら贈与と相続のそれぞれに有利不利があり、ケースによっては結果的に生前贈与が逆効果の場合もあります。贈与と相続のそれぞれの有利不利を確認してみましょう。
 

相続税の増税と贈与税の減税

贈与か相続か。ケースによって有利不利が異なります。

贈与か相続か。ケースによって有利不利が異なります。


平成27年より、相続税の基礎控除の縮小と税率の上昇から相続税は以前より増税になりました。反面、贈与税は直系尊属(父母や祖父母など)から20 歳以上の子や孫に贈与された場合の贈与税の税率が下がり減税になりました。これは早いうちから次の代に財産を移転して使ってもらい経済を活性化することが狙いのようです。
 

主な生前贈与の財産とは?

生前贈与は言い換えれば相続の前借りのようなものです。いずれ受け継ぐ財産を相続で受け継ぐか先に受け取っておくかの違いで、相続の際は相続税、先に受け取っていれば贈与税が課されます。生前贈与をする主な財産は不動産、金融資産、非上場株式といった財産が多いようです。
 

そもそも生前贈与すべきか?

生前贈与をする前に、まずは生前贈与すべきかを検討することが大切です。例えば600万円の財産を子に贈与した場合、贈与税は82万円(子が20歳以上の場合は68万円)になり、税負担は13.67%(同11.33%)になります。将来の相続税が15%以上の税率であれば生前贈与の方が有利ですが、将来の相続税がかからない人や税率が10%の人は相続の方が有利になります。節税を考えての生前贈与であれば、まずは将来の相続税の税率を確認し、生前贈与をすべきか否かを検討することが大切です。
 

不動産の生前贈与と相続

不動産を贈与する場合は贈与税とは別に「登録免許税」「不動産取得税」がかかります。不動産を相続する場合は「登録免許税」はかかりますが5分の1の金額です。また「不動産取得税」はかかりません。贈与をするのにコストがかかるため、このコストが節税額を上回ってしまうこともあります。将来の相続税の税率が高い人でなければ逆効果になってしまいます。なお相続税では適用できる「小規模宅地の特例」も贈与税では適用がありませんので、特例対象地は相続の方が有利ということになります。
 

金融資産の生前贈与と相続

金融資産の贈与や相続は、コストはほとんどありませんので贈与税と相続税を比較して有利な方を選択することが一般的です。難しい手続きも少なく、また110万円までの贈与には贈与税がかからないため、毎年110万円程度の贈与を繰り返すケースもありますが、この場合は財産の移転額が少ないため一度に大きな節税は難しく、または長い年月をかけて生前贈与を続けなければ大きな効果は期待できません。
 

非上場株式の生前贈与と相続

元気なうちに事業承継をするため、経営する自社株(非上場株式)を生前贈与で移転することがありますが、どちらが有利かを判断するのにとても難しい財産です。この株式が将来に価値が大幅に上昇するなら生前贈与が有利ですし、下落するならその時まで待つか相続まで待つ方が有利です。非上場株式に限らず、将来の価値が大幅に変わる財産は単に税率の比較でなく、時期の見極めが重要になります。
 

早すぎる贈与にはリスクもある?

以前に相談者から聞いた生前贈与の失敗談を2つ紹介します。どちらも20代の子に贈与したケースでした。
  • 相続税の節税のため毎年500万円程度の贈与をしていたところ、それまで働いていた子が働かなくなってしまい、毎年その贈与された500万円で生活するようになってしまった。
  • 複数年の生前贈与で3000万円の贈与を受けていた息子が結婚をしたが、不幸にもその息子は1年後に事故で他界した。孫はおらず、財産は妻が法定相続分3分の2の2000万円を引き継ぎその後は疎遠になってしまったため、他人に2000万円を渡すような結果となってしまった。

贈与が有利か相続が有利かは、ケースやその後の状況によって結果的に有利か否かということになります。節税面だけにとらわれて生前贈与をしてしまわないよう、事前に様々な要因を考慮して有利不利を検討することが大切です。

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