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飲酒運転をするとどんな罪が待っている?(4ページ目)

飲酒運転の罪はどんどん厳罰化されていますね。その成果が出たのか、飲酒運転による交通事故は毎年減少しているようです。今回は、飲酒運転をするとどんな罪に問われるのかを説明します。

酒井 将

執筆者:酒井 将

暮らしの法律ガイド

危険運転致死傷罪の創設!

危険運転致死傷罪の創設!
飲んだら絶対に運転してはいけません。もし事故を起こせばあなたの人生は終わったも同然です。
もともと、交通事故で人を死傷させた場合には、刑法211条の業務上過失致死傷罪が適用され、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金でした。しかし、悪質なドライバーが酒に酔ったうえに、スピード違反を犯して、交通事故を起こし、多くの人命が奪われる痛ましい事態が相次ぎました。むごい事故を起こしておいて、たくさんの命を奪ったのに、刑罰が最高でも5年では軽すぎると言われるようになり、このような世論の後押しを受けて、平成13年12月に、新たに「危険運転致死傷罪」がつくられ、死亡させた場合は最大で15年、ケガをさせた場合は、最高で10年の懲役に処せられるようになりました。

危険運転致死傷罪は、飲酒運転や薬物を使用しての運転、スピードの出しすぎ、割り込み・幅寄せ、信号無視などの悪質なドライバーが交通事故を起こした場合に適用されます。同罪は、平成17年1月にも厳罰化され、現在では、死亡させた場合は最高で20年、ケガをさせた場合は最高で15年の懲役に処せられます。

ひき逃げの増加と逃げ得

このように、飲酒運転が厳罰化し、危険運転致死傷罪などの重い罪が新たに創設された結果、交通事故の加害者が飲酒運転の発覚をおそれてひき逃げをしてしまう事態が増加しました。酒が抜けてしまえば、危険運転致死傷罪での立件は困難になりますから、ひき逃げをして翌日酒が抜けてから自首するというようなケースが増えたのです。

当時、ひき逃げは5年以下の懲役または50万円以下の罰金であり、業務上過失致死傷罪は、前述のとおり、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金でしたから、ひき逃げと業務上過失致死罪の併合罪となっても、最高で7年6ヶ月の懲役にしか処せられませんでした。つまり、飲酒運転の発覚をおそれて、ひき逃げをした悪質なドライバーが、逃げ得となってしまったのです。

ひき逃げの厳罰化と自動車運転過失致死傷罪の創設

このような事態を受けて、平成19年、ひき逃げの厳罰化と、危険運転とは言えない自動車事故自体の厳罰化がなされました。ひき逃げ(救護義務違反)は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金から10年以下の懲役または100万円以下の罰金に引き上げられ、自動車による人身事故は、自動車運転過失致死傷罪として、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金となりました。その結果、ひき逃げをした場合は、最高で15年の懲役刑が科せられることになりました。なお、ひき逃げは、同乗者も罪に問われます(5年以下の懲役または50万円以下の罰金)。

このように、飲酒運転の重罰化に端を発して、ひき逃げやそれ以外の自動車事故自体もどんどん厳罰化されています。ドライバーは、より一層、気を引き締めて自動車を運転する必要があるでしょう。
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