防犯/防犯小説

【連載第3回】帰れない理由と会う方法 テレクラの甘い罠~シティホテル(4ページ目)

女が帰りたくない理由はもっともなものだった。女の要望の通りにシティホテルに泊まることにした男は予約の電話を入れる。そして女に連絡をすることに…

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

携帯電話番号

「じゃ、私の携帯電話の番号を教えます。番号通知でかけて下されば、私もあなたの番号がわかるし」

「いいの?」
(携帯の番号を教えてくれるなんて…。これはもう間違いなく本気だ。マジだな)

「ええ。だから、予約してもらってお部屋に入ってから、お部屋番号を教えて下さい。絶対に行きますから」

「信用していいのかな」
(ホントかよ~)

「だって、今日、私、帰れないんですもの」

「じゃあ、今、かけたら、キミすぐに出る? ウソじゃないよね? この電話を切ったらお終いってことはないよね?」
(だったらひどいよ。本当の番号を教えてくれるのかな)

「心配しないで下さいよぉ(笑) だって、そんなことしても私に何のメリットもないじゃないですか」

「いやー、サクラってこともありえるかなと思ってさ」
(ここまで話を引っ張られたらな)

「あー、けっこう多いって言いますよね。でも、それだったら、もっと別の話をするでしょ? 私は、今日、本当に一人でいたくないし、あなたがちゃんとした会社のサラリーマンで、奥様もいらして、真面目な方だと思ったから。あの、もし、おいやだったら、私、他の人を探しますけど…」

「あ、いや、とんでもない。ゴメンゴメン。他の人にだなんて言わないでよ。いやー、なんか信じられなくてさ」
(おっと、他の男に取られるなんてもったいない)

「そんな…。私、けっこう切実なんですよ(笑)」

「そうか、そうだよね。ごめんね。」
(どうやら本気だな)

「ううん。大丈夫。じゃ、番号を言いますね」

「うん。ちょっと待ってペンを出すから…。よし、いいよ」
(これでもう間違いないな)

「090の、××××ー△△△△」

「△△△△と…。じゃ、すぐに切ってかけてみていい?」
(ウソじゃないよな)

「ええ。でも、その前にホテルの予約を取ってくれますか? 二度手間になってもいけないから」

「そうだね。じゃ、10分以内に必ずかけるからね」
(よし、絶対に大丈夫だ!)

「はい、じゃお電話待っています」

「それじゃ」
(待っててよ~)

「じゃ、後で」


そう言って電話を切ってから、ちょっとの間考えたが何も迷うことはないと思った。自分の携帯電話の番号を言うのも、聞かれなかったことも忘れていた。一種の賭けのようなものだったが、会話の内容からK介は疑うこともしなかった。女と会うことに舞い上がってしまい、実は、会話の内容はすべて女にリードされているということには気がつかないでいたのである。


K介は、急いでホテルの電話番号を携帯で検索して電話をかけると、運良く部屋が空いているというのですぐに予約を入れた。それから、彼女の携帯電話の番号をプッシュした。


次回【連載第4回】テレクラの甘い罠~インザルームに続く


【連載第1回】テレクラの甘い罠~夫の言い訳
【連載第2回】テレクラの甘い罠~女からの誘い
【連載第3回】テレクラの甘い罠~シティホテル
【連載第4回】テレクラの甘い罠~インザルーム
【連載第5回】テレクラの甘い罠~深夜の訪問者
【連載第6回】テレクラの甘い罠~夜明けの苦悩
【連載第7回】テレクラの甘い罠~妻の覚悟
【連載第8回】テレクラの甘い罠~ヤツらの最後

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