人材育成・社員教育

20代の8割「出世したくない」は当然? “成長しない日本”で「成熟」を目指すべき理由

「出世したくない」20代が約8割に上るとの調査結果がある。一見、それは社会を衰退させるようなネガティブな考え方だと嘆くこともできるが、社会がより多様化していくプロセスのひとつであると見るのはどうだろう。低成長時代の中で考えたい「成熟した社会を築くこと」について、人材コンサルタントが解説する。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

出世,出世したくない,成長,成長したくない,成長しない,日本,成熟,管理職,責任,報酬,ワークライフバランス,プライベート,給与,給料,年収,年俸

20代の「出世欲のなさ」が話題だが、「成長しない日本社会」では当然との見方も?

人はなぜ出世したいのか。出世すると、出世しない人よりも給料を含めて待遇が良くなり、特に自分がやりたい仕事を任される可能性があるからだ。ではなぜ人は成長したいのか。自ら成長すれば知的好奇心や社会貢献欲を満たせるが、それ以前に成長することで目の前にある仕事をうまくこなせるようになり、残業も減り、人間関係も改善されるはず。

一方、最近の若者の間では、「出世したくない」「成長に興味がない」という意見も増加中という。このような状況・社会に対する、人材コンサルタントの見解は。
 

「出世したくない」20代が約8割。理由は「責任を負いたくない」

もし「出世しても給料が変わらない」としたら、あなたは出世したいだろうか。つまり、仕事の難易度が高く責任も重くなったが、待遇は変わらないということだ。たとえば、「みなし管理職(名ばかり管理職)」が問題になったことは記憶に新しい。

みなし管理職とは、肩書は管理職でありながら、管理職の権限を持っていない従業員のことである。出世して管理職になっても、給料がほとんど上がらなかったケースも実際にはあったようだ。将来なりたい職業ナンバーワンは「みなし管理職」である―これはブラックジョークの利いたパロディ映画やお笑い芸人のコントには登場する話だろうが、現実ではありえないだろう。

原則として、出世は昇給や業務に対する責任とセットである。これは本来当たり前の話だが、実際には、出世したが新しい仕事と役割・責任に対して昇給分が少なすぎて、これでは割に合わないと社員が嘆くケースが増えているという。
出世,出世したくない,成長,成長したくない,成長しない,日本,成熟,管理職,責任,報酬,ワークライフバランス,プライベート,給与,給料,年収,年俸

「出世欲がない」20代が約8割に上る

東晶貿易が運営する転職メディア「転職サイト比較plus」が6月、全国の20~29歳2327人に実施した調査によると、「将来役職者になりたいか」との問いに、「はい」と回答した人は22.4%、「いいえ」と回答した人は77.6%と、約8割が現時点で出世欲がないことが分かった。
出世,出世したくない,成長,成長したくない,成長しない,日本,成熟,管理職,責任,報酬,ワークライフバランス,プライベート,給与,給料,年収,年俸

出世したい派の理由は「給料を上げたいから」が大多数を占める 

出世,出世したくない,成長,成長したくない,成長しない,日本,成熟,管理職,責任,報酬,ワークライフバランス,プライベート,給与,給料,年収,年俸

出世したくない派の理由は、「責任のある仕事をしたくない」「プライベート重視」が多い

出世したくない理由は、「責任のある仕事をしたくない」「プライベートを大事にしたい」の2つに回答が集中しており、同調査は、近年の給与低下や出世したい派の理由の大多数が「給料を上げたいから」に集まっている状況を踏まえ、「現代の仕事で得られる報酬と付随する責任が釣り合っていない現状がある」と推測している(※)。

部下がサービス残業をしている状況や管理職なのに担当者と同じ仕事をせざるを得ないような人材不足が激しい職場など、組織にはあらゆる個別の事情によるゆがみがあり、出世したくなるような会社ではない、このような職場や仕事の状況で責任を取らなければならないような地位に自分は就きたくないという、いわば損得勘定の問題が発生しているのかもしれない。

現実の職場環境を見た上で、若手社員は「自分は出世したくない」と結論づけているのだ。このような事態を迎えている責任は、良い手本を若手に示せないでいる管理職やベテラン世代にあるのではないだろうか。
 

「出世したくない」のは、出世した人の現状の姿に共感できないからか

人が出世を望まなくなる理由はほかにもある。本来「出世」とは、人よりも早く、より責任の重い仕事につくことであり、それは名誉なことであるとみなされてきた。努力の末、社内競争に勝った証でもあり、報酬として好待遇や周囲からのリスペクトも期待できた。頑張って獲得するだけの価値が出世にはあったということだ。

当然ながら、出世した人には周囲からも期待が集まる。仕事の難易度やリスクが高く、さまざまな難しい判断や決断が求められるがゆえに、能力や人望を携えた優秀な人材が出世することが会社や社員にとって望ましい。つまり、人よりも優れた能力を持つ人には、その力を自分のためだけでなく、広く他の人のためにも使ってほしいのである。

しかし、必ずしもそうはならない事例が目立つ。社長や管理職が引き起こした不祥事は絶え間なく続き、逮捕者まで出る始末である。スキャンダルまみれの大臣の更迭、辞任も続いている。もちろん、そのような人たちは昔の時代から一定数はいたが、最近になって私利私欲をあからさまに優先させるリーダーが目立つようになったのではないだろうか。

たとえば五輪汚職、スポーツの祭典の裏舞台で、いわゆる政財界の立場あるリーダーたち、まさに出世の最前線にいるような人たちが自分たちだけが得すればそれでいいという言動を重ねてきたことが明らかにされつつある。利権を得た人たちが、自分に対してあからさまに利益誘導をしているのであり、その結果出世することに汚いイメージがついてしまっているとしたら、これは社会の活力を奪いかねない深刻な事態である。

次ページ:「成長しない」日本で、「成熟する道」を模索するのはどうか
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます