寺・神社/京都の寺・神社

京都の萬福寺で、豪華精進料理をいただく(2ページ目)

お寺でいただく精進料理には、実は、さまざまな種類があります。宗派によって、また、お寺ごとに、調理法や食材や見かけに違いがあるのです。今回は、精進料理の中でも、もっとも豪華な普茶料理が食べられる京都の萬福寺をご紹介します。萬福寺は、中国直伝の禅宗の一派である黄檗宗の総本山で、料理以外にも、中国風の建物、仏像など、見所がいっぱいです。

吉田 さらさ

執筆者:吉田 さらさ

寺・神社ガイド

まずは仏像ウォッチング

萬福寺の仏像は、われわれディープな仏像マニアの目から見ても「えっ?」と驚くものが多いです。隠元さんは「仏像も中国風でなければ」ということで、中国から范道生(はんどうせい)という仏師を連れてきました。そのため、萬福寺の仏像は、見た目も、穏やかな表情の日本の仏像とはずいぶん違うのです。

多くの寺では、仏像の写真を撮るのは絶対に禁止です。が、嬉しいことに、萬福寺では、「修行中の僧侶以外なら、何の写真を撮ってもよろしい(仏像も含む)」ということになっているので、たくさん撮っちゃいましょう。まずは、巨大な黄金の布袋さんから。
萬福寺のシンボル、黄金の巨大な布袋さん

萬福寺のシンボル、黄金の巨大な布袋さん


日本では、布袋さんは七福神の一人として人気ですが、お堂の真ん中に、こうした形でどぉんと祀られることはあまりありません。布袋さんは実は、中国に実際した禅宗のお坊さんで、実際に、このようなおなかが突き出した福々しい風貌の方だったとか。大きな袋を担いで各地を渡り歩き、あちこちで人を助けたため、「弥勒菩薩の化身」とも呼ばれました。したがって、こちらの寺でも、この布袋さんは、「弥勒菩薩」と呼ばれています。

弥勒菩薩とは、お釈迦様の入滅後、56億7千万年後にこの世に降臨して人を救ってくださると言われる未来の仏様で、仏教の世界ではたいへん重要な存在です。そのためこちらでは、天王殿というお堂の真ん中に鎮座し、お参りに来る人を出迎えてくれます。

萬福寺の人気者、イケメンの韋駄天さん

萬福寺の人気者、イケメンの韋駄天さん

布袋さんの背後には、韋駄天さんがいらっしゃいます。萬福寺の、いや、京都の中でも、「いい男仏像ベスト10」にランクインするほどのイケメン仏で、ファンが多いです。この韋駄天さんは、萬福寺の本堂である大雄宝殿(だいおうほうでん)内には本尊の釈迦如来坐像と向かい合う形で祀られています。韋駄天さんは、中国では、お釈迦様を護る役目を持つとされているからです。また、足が速いことでも有名で、お釈迦様が入滅されたのち、仏舎利の中から歯を盗んで逃げた者を追いかけて取り戻したという逸話もあります。確かに、すばやく走りそうな、颯爽たるお姿ですね。

 

珍しいのは仏像だけじゃない

魚の形の開板は、木魚の元祖といわれます

魚の形の開板は、木魚の元祖といわれます

この寺には、仏像以外にも、日本の他の寺ではあまり見かけないものがあります。その代表例は開版(かいぱん)という巨大な木製の魚です。

おなかのあたりを木の棒で叩いて、食事時間などの始まりを修行僧たちに知らせます。これがだんだんと丸い形になり、どこの寺でもよく見かけるあの木魚に変化したんですよ。わたしたちもつい叩いてみたくなりますが、現在も現役で使われているため、一般人が叩くのは禁止です。

 


 
開山堂と法堂正面の勾欄(柵)は卍及び卍くずしの文様になっています。 中華料理屋さんでよく見かけるラーメンどんぶりにも使われており、いかにも中国風です。ちょっとお寺に詳しい方なら、「これはどこかで見た」と気づかれるはずです。そう、あの法隆寺でも、同じような文様が使われています。しかし、それ以外の日本の寺でこの文様を見かけることは少ないです。それはなぜか?この文様は、法隆寺が建てられた飛鳥時代に一度日本に伝わり、その後日本ではあまり使われなかったものの、中国ではずっと伝承されており、江戸時代になって、隠元禅師が再び伝えたためです。なるほど、これがあるせいか、萬福寺を歩いていると、ふと法隆寺を歩いているような錯覚を覚えることがありますね。
この写真の左右にある塀が、卍と卍くずしと呼ばれる文様です

この写真の左右にある塀が、卍と卍くずしと呼ばれる文様です


  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます