ベビーフードダイエットの効果とは
テレビで放送されて以来、ベビーフードダイエットが流行の兆しを見せています。医師が考案した方法だという説もありますが、本当に健康的なダイエット方法なのでしょうか?
番組で紹介されていたダイエット方法は、「1日3食のうち2食をベビーフードにし、残りの1食は何を食べてもよい」というものでしたが、果たしてベビーフードダイエットは本当に健康的なダイエット方法なのでしょうか? 中には医師が考案した方法だという説もありますが、その効果や注意点について、管理栄養士として詳しく解説します。
ベビーフードは必要カロリーの約1/8? エネルギー不足の原因に
エネルギー量について考えてみます。成人女性が1日に必要なエネルギー量は「約2000kcal」。一方で、番組で使われていた12ヶ月頃の赤ちゃんが食べるベビーフードは、1箱約110~130kcal程度。2食食べても「約250kcal」と、必要エネルギー量には到底及びません。エネルギー量は健康な体を維持するために必要なものですから、不足分の「約1750kcal」を何らかの方法で別に摂取しなければならないことになります。ジャンクフードやケーキ食べ放題などに行けば、あっという間に1750kcalの不足分を補うことはできるでしょう。とは言っても、並外れた量なので常識的に考えてダイエット中の女性が食べる食事量とは思えませんし、もし仮に1週間のうち1日くらい羽目をはずした日があったとしても、平均的には必要なエネルギー量は満たされません。つまり、この方法で体重が減少したとしても、それは「本来必要なエネルギー」を不足させたことにより、必然的に起こるもの。体重が減らないわけがありませんが、そのしわ寄せは避けられないものと考えられます。
「ベビーフードダイエット」はリバウンドリスクが高い
どんな方法であれ、体重が減ればそれで良いと考える方もいるかもしれません。しかし、そうは簡単にいかないのがダイエットの世界。ベビーフードダイエットで体重を減らせたとしても、一生ベビーフードを1日2回食べ続けるのは無理があります。そう考えると、ベビーフードをやめて普通の食事に戻したら、当然摂取エネルギー量は増えることになるのです。大切なのは、身体は必要な分のエネルギーの取り込みが見込めないと、呼吸や心臓を動かす「基礎代謝」のエネルギーを節約する、ということです。基礎代謝を減らすのは、脂肪の蓄積が減って生命の危機を感じているから。体重減少のスピードが早すぎて身体がその変化についていけないのです。
ここで1つ問題です。身体が生命の危機を感じている状態を「痩せた」と言って喜んでいいのでしょうか? 「やつれた」と言うほうが正しいのではないでしょうか? 実際、1ヵ月に3kg以上ダイエットした患者様に対しては、管理栄養士の立場から、「それは痩せたのではなく、やつれたと言うのですよ」と説明するようにしています。
さらに、こういった過酷な一過性のダイエットの場合、必ず「やめる」時が来ます。ダイエットをやめたときに摂取するエネルギーが増えると、一度、生命の危機を感じた身体の細胞は同じ轍を踏まないよう、基礎代謝を減らしたまま余分に入ってきたエネルギーは使わないで脂肪として蓄積しようとします。これがダイエットをやめた後に起こる「リバウンド」の原因のひとつです。
ダイエットはイベントのように期間限定で行うものではありません。苦労しても結局、無駄になってしまいます。
ダイエットは噛むことが大切! 柔らかい離乳食では噛む回数が減る
そもそも、ベビーフードは赤ちゃんが「食べる」という行為を練習するために作られています。12ヶ月ベビーフードのパッケージにもあるように、パクパク期、つまり歯茎で噛める硬さに調節された状態のものなのです。歯ぐきで噛める固さということは、当然通常の食事よりも柔らかく、さほど噛まなくても飲み込めてしまいます。「ダイエットには噛むことが大切」と言われています。噛む回数が減ってしまうと、より空腹感を覚えやすくなってしまうのです。こういった面から見ても、ベビーフードダイエットはダイエットの理に適っているとはいえません。
さらに冒頭でも述べましたが、本当にベビーフードを必要としているお母さんからは、「商品が無くなってしまうのではないか……」と懸念する声も出ているようです。店舗や地域によっても在庫の有無に違いがあるかもしれませんが、いずれにしても、栄養のプロとしては、目を覆いたくなるダイエット方法と言わざるを得ません。
管理栄養士が推奨する効果的なダイエット方法とは
テレビ等を見ていると、ベビーフードダイエット以外にも新しいダイエット方法が次々に紹介されています。効果があるように見えると、「やってみたい」と飛びつきたくなるのが人情というもの。しかし、専門的に見ても、番組で紹介されるダイエット方法は、一過性で長期間にわたって実践できない方法が多いのが現状です。ダイエットや健康について興味を持つ人が多いことは、栄養士として大変嬉しいことです。しかし、見て面白いものと、やってみて面白いものは得てして異なることがあります。テレビは飽きられないようにいかに「面白くするか」が勝負の世界。面白くないはずはないのです。
本当に効果的なダイエット方法は、一生続けられる「クセ」のように習慣になっているはずです。新情報でもなく、地味に思われがちなので注目もされませんが、米飯を毎食1口ずつ残す、1区間歩くなど地味な習慣の積み重ねこそがリバウンドしない、本当の意味で効果的なダイエット方法です。ダイエットは、地味にコツコツですよ!
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