都市における建物の用途は、12種類の「用途地域」によって一定の規制がされています。その具体的な内容については ≪住宅購入者は必須! 用途地域の基礎知識≫ にまとめていますが、文字による解説ではなかなかイメージをつかみづらい場合も多いでしょう。
そこで今回は、用途地域によって町並みがどのように変化していくのか、その違いや特徴を写真で追ってみました。
ただし、それぞれのエリアがもつ条件によって、あるいは建ぺい率や容積率との組み合せなどによって、同じ用途地域でもずいぶんと様子が異なる場合もあります。あくまでも町並みの一例としてご覧ください。
【第一種低層住居専用地域】
住宅地の環境として最も優れた地域であり、建物の高さは10メートル(一部は12メートル)に制限されるため、2階建ての一戸建て住宅が大半を占めます。
必ずしも町並みが整えられているわけではなく、細い街路に沿って住宅が密集している場合も多いでしょう。
ただし、第一種低層住居専用地域のすぐ隣に商業地域などが指定されていることもあります。そのような場合には、第一種低層住居専用地域でありながら店舗併用住宅なども少なからず混在しています。
【第二種低層住居専用地域】
第一種低層住居専用地域に比べ、3階建ての住宅やアパートなどが増えてくる印象です。小規模な店舗や飲食店などが立地する場合もあります。低層のマンションが建てられることもありますが、どちらかといえば分譲よりも賃貸マンションのほうが多いでしょう。
【第一種中高層住居専用地域】
建物の高さや容積率の制限が低層住居専用地域よりも緩やかになり、分譲マンションなども目立つようになりますが、一戸建て住宅も数多く存在しています。
【第二種中高層住居専用地域】
第一種中高層住居専用地域との違いは分かりづらいでしょうが、ある程度の大きさの店舗や事務所などの混在も進んできます。やや広めの通り沿いに指定されていることも多いでしょう。
【第一種住居地域】
住居系の用途地域でありながら制限は比較的緩やかで、大きめの店舗なども目立つようになります。大規模なマンションが増える反面で、一戸建て住宅の割合はだいぶ減ってきます。残った一戸建て住宅は、3階建てや4階建ての鉄筋コンクリート造となる場合も少なくありません。
「近隣商業地域」に隣接して「第一種住居地域」が指定されることも多く、商店街の一部に組み込まれている場合もあります。そのときは「店舗がまばらになった商店街のはずれ」といった雰囲気になることもあるでしょう。
【第二種住居地域】
制限はさらに緩やかとなるため、幹線通り沿いに指定されることが多いでしょう。写真は環状8号線であり、オフィスビルや店舗に混じって住宅が存在するイメージです。
【準住居地域】
住居系地域の中では最も制限が緩やかであり、比較的大きなマンションやオフィスビル、店舗などが混在します。オフィス街でもなく、商店街でもなく、かといって住宅街でもありません。
【近隣商業地域】
駅前通りの商店街などは一般的に「近隣商業地域」です。場所によってそれぞれの特徴は大きく異なるでしょうが、店舗併用住宅も少なくありません。一戸建て住宅やアパート、小ぶりな賃貸マンションなどが混在している場合もあります。
【商業地域】
都心部や主要駅の周辺が商業地域に指定されます。商業施設だけでなく、超高層マンションやオフィスビルなども目立つようになる一方で、一戸建て住宅はほとんどみられなくなります。
他のエリアから人が集まる「繁華街」の場合が多く、東京でも都心区を除けば「商業地域」の指定はそれほど多くありません。
【準工業地域】
比較的小規模な工場が多く混在するものの、環境を悪化させるようなものは建てられないため、マンションや一戸建て住宅も数多く存在しています。工場を誘致する地域というよりも、「昔から町工場が多い住宅地」に指定されていることが多いでしょう。
【工業地域】
これまでの写真はすべて東京都世田谷区で揃えてみましたが、世田谷区では工業地域の指定箇所がないため、この写真は横浜市内です。
準工業地域とは異なり、あくまでも工業用途の建物が主体となるため、住宅は「工場に挟まれてぽつぽつ」と建っているイメージです。トラックなどの通行量も多くなるため、十分な注意が欠かせません。
【工業専用地域】
用途地域の中で唯一、住宅の建築が認められない地域ですから、ここで住宅を購入することは考えられないでしょう。ただし、工業専用地域を通り抜けた先に住宅が存在する場合もあるため、交通面や環境面での注意が大切です。
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