マンション購入術

2016年もマンションの買い時は続くのか?関西エリア編

史上最低水準の住宅ローンや優遇税制など、マンション購入しやすい環境が整っていたおかげで、買い時と言われる状況が続いていました。では今年も買い時は続くのでしょうか?2015年のマーケットを振り返りながら、2016年の予測をしてみたいと思います。

井口 克美

執筆者:井口 克美

関西の住宅事情ガイド

いよいよ2016年が始まり、今年こそマンションを買おう!と決意された方もおられるでしょう。ここ数年は、史上最低水準の住宅ローンや優遇税制など、マンション購入しやすい環境が整っていたおかげで、買い時と言われる状況が続いていました。

では今年も買い時は続くのでしょうか? マンション価格は依然上昇傾向にあり、2017年4月からの消費税増税を控え、マーケットが変化してくる気配があります。そこで、2015年のマーケットを振り返りながら、2016年の予測をしてみたいと思います。

2015年は価格上昇にも関わらず売れ行き好調

いよいよ2016年が始まり、今年こそ家を買おうと決意された方もおられるでしょう。史上最低水準の住宅ローン金利や、優遇税制などのおかげで、価格が上昇しているにも関わらず、マンションの売れ行きは好調です。

2015年11月の関西新築分譲マンションの平均価格は4,454万円(前年同月比22.1%アップ)、平均坪単価は約210万円(前年同月比+17.8%)と大きく上昇しました。平均坪単価は8月に続き2度目の200万円超えです。

11月は、平均坪単価約270万円の「ザ・パークハウス中之島タワー」が1期1次・2次で405戸発売されるという特殊な状況ではありましたが、初月契約率は70.2%と、好調の目安である70%を超えています。

2015年は、価格上昇による販売状況の悪化が懸念されていましたが、11月までの平均契約率は72.1%と、なんとか好調に推移した年と言えるでしょう。
それは、多くの消費者が買い時と判断して購入した結果でもあります。

契約率

関西マンション 平均坪単価(万円)と契約率(%)の推移(不動産経済研究所データより)


では、この好調なマーケットを支えている要因は何でしょうか?

それは、4つの要素がうまくかみ合っていることが大きな要因だと考えられます。(文章中のデータは全て不動産経済研究所データより)

マンションマーケットを支える4つの要素

1.魅力的な立地
マンションデベロッパーは、リーマンショック後の厳しいマーケットの経験から、景気に左右されにくい、交通利便性や生活利便性が高い魅力的な立地に絞って用地を仕込んできました。

例えば、2015年(11月まで)に発売されたマンション328物件の駅徒歩分数を分析すると、駅徒歩5分以内が約55%、駅徒歩6~10分以内が約36%、駅徒歩11分以上(バス便含む)が約9%という割合になっています。
つまり、昨年発売されたマンションの半分以上は駅徒歩5分以内であり、ほとんどのマンションが徒歩10分以内という、交通アクセスのよさなのです。

また、2015年の11月までの発売戸数17,046戸の発売エリアを分析すると、大阪市内が約39.3%、 北摂が約14.3%、阪神間が約9.4% 神戸市が約14.0%となっており、この4つのエリアで約77%となります。


つまり、マンション立地として人気のあるエリアに発売が集中しているということになります。消費者から見れば、「少し高くても欲しい」と思える魅力的な立地のマンションが、とても多いのです。

2.抑えられた発売戸数
2015年11月までの年間発売戸数は17,046戸。前年期間比でいけば、99.2%(2014年17,176戸)なのでほぼ同じペースと言えます。不動産経済研究所の予測によれば、2015年の最終発売戸数は18,600戸と予測されているので、2014年(18,814戸)に引き続き2年連続で19,000戸を切る発売戸数となりそうです。過去と比べてもこの2年間の発売戸数は少なくなっています。

発売戸数が少ない要因は2つ考えられます。

一つ目は、条件のいい立地にこだわるために、なかなか土地が購入できず、マンション用地の数が減少していること。
二つ目は、建築費の上昇などによる販売価格の上昇懸念のため、プロジェクト化に時間がかかったり、発売が後ろ倒しになってることです。

また、いつでも購入できる継続販売在庫数も11月末で2,133戸と過去と比べても低い水準で推移しています。マーケットで購入できるマンションの数が抑えられていることで、消費者から見れば、一種の品薄状態になっていると言えます。

発売戸数

関西マンション 発売戸数推移(不動産経済研究所データより)


3.史上最低水準の住宅ローン金利
住宅ローンの金利は史上最低水準で推移しています。長期固定金利の代名詞であるフラット35は金利1.5%台を推移し、銀行の変動金利においても、優遇金利ということで、実質1%未満で融資実行されています。この異常ともいえる超低金利のおかげで、価格が上昇しても月々の返済額が抑えられているのです。

低金利の背景としては、日銀による金融緩和があるのですが、マンションの発売戸数が過去よりも減少していることで、各銀行の競争がより激しくなり、金利の下げ合いが起こっているのです。消費者からみれば、とても恵まれた条件で住宅ローンを組むことができるのです。

4.恵まれた税制・補助金制度

住宅を購入するにあたっては、様々な税金面でのバックアップ体制が用意されています。特に、年末のローン残高(上限4000万円)の1%が10年間にわたって戻ってくる「住宅ローン控除」については、上限金額もさることながら、住宅ローンが1%未満で融資される現状において、1%が戻ってくるということから、非常に魅力的な制度になっています。

また、低所得者向けには年収に合わせてお金を給付してくれる「すまい給付金」などの制度も用意されています。他にも、「贈与税の非課税制度の特例」などで、親からの資金援助が受けやすくなっています。

消費者から見れば、マンション購入に対する税制面でのバックアップがとても充実しているということになります。

2015年のマンションマーケットは、価格上昇局面にも関わらず、この4つの要素が組み合わさることで、魅力的な立地のマンションが、超低金利の住宅ローンと税制優遇で、とても買いやすい状況になっていたということです。

この4つの要素のバランスが保たれていれば買い時は続くと思われますが、逆に、バランスが崩れ始めると危険です。2016年は果たしでどうなるでしょうか?

2016年のマーケットに影響を与える3つの要素

2016年のマンションマーケットを考えるにあたり、購入環境に影響すると思われる3つの現象について、考えてみたいと思います。

1.マンション価格の上昇  
分譲マンションの事業は、用地の取得から発売までの間にだいたい2~3年かかりますので、上昇した建築費で計画された新価格のマンションが、本格的に登場するのは今年あたりからです。今年も後半になるほどマンションマーケットにおける新価格物件の割合が増えていきます。

東京オリンピックに代表される公共事業や震災復興事業など、まだまだ建設現場に人手が足りない状況が続くので、労務単価は高くなり、建築費が下がる気配はありません。また、土地価格もリーマンショック後の下落から回復し、関西の主要なエリアでは上昇傾向にありますので、マンション価格が急に下がることは考えられません。今年1年は価格上昇が続くと考えられます。

2.立地の郊外化
マンション立地は、引き続き魅力的なものがマーケットの中心ではありますが、この何年かで駅の周辺はかなり整備されてきており、新しくマンションを建てる場所がどんどん少なくなってきています。

また、交通アクセスの良い都心では、ホテルや商業用地との競合が激しくなり、なかなか土地が仕込めなくなってきています。今後のマンション計画を聞いていますと、今までより少し駅から距離があるところや、郊外エリアのマンションが増えてきそうです。

3.消費税増税によるかけ込み需要の発生

2017年4月1日以降に引き渡されるマンションについては、消費税率が10%にアップする予定になっています。ただし、新築分譲マンションは完成までに長い年月がかかりますので、大型マンションなどでは、現在購入しても既に間に合わないものもあります。

そこで、税制の経過措置として、今年(2016年)の9月末までに契約すれば、引渡しが2017年4月以降でも、消費税率は8%で据え置かれます。そうなると、来年以降に購入を検討していた人が今年の9月末までに契約を早める、いわゆる駆け込み需要が発生するでしよう。

前回ほどの盛り上がりはないかもれませんが、一時的に購入検討者の数が増えて、人気のあるマンションや住戸に申し込みが集中すると思われます。

2016年は、この3つの項目(価格の上昇、立地の変化、消費税増税前の駆け込み)により、後半になるほど購入環境が厳しくなることが予測されます。

2016年も買い時は続くのか?

2016年も、魅力的な立地のマンションがマーケットの中心であり、住宅ローンは引き続き低金利で推移すると予測され、優遇税制や補助金制度もまだ2年~3年先まで継続することが決まっていますので、購入しやすい環境は続きます。そういう点では、2016年は引き続き「買い時」と言える状況が続くと思います

しかしながら、価格の上昇やマンション立地の変化、消費税増税前の駆け込み需要などで、今年の後半は4つの要素の組み合わせバランスが崩れてくる可能性がでてきました。特に消費税の経過措置の期限である9月末がひとつの目安となるでしょう。

自分の希望条件を満たすマンションを購入するためには、今年の上半期が一つの山場になると思いますので、余裕を持って早めに動くことをおすすめします。

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