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『渇き。』と中島哲也監督作ベスト4(3ページ目)

中島哲也監督の新作『渇き。』(2014年6月27日公開)は、登場人物すべてを痛めつけながら展開する、家族と友情と青春に唾を吐くようなドロドロのバイオレンスエンタティメントです。今回は『渇き。』を中心に中島哲也監督作セレクションをお届けします!

斎藤 香

執筆者:斎藤 香

映画ガイド


極彩色の青春と美しく彩られた女の一生!

『下妻物語』(2004年度作品)
ロリータファッションに夢中の桃子(深田恭子)とヤンキーのイチゴ(土屋アンナ)が、茨城県下妻市を舞台に友情を築いていく女子の青春映画。まだ中島監督が映画界にその名を轟かせる前であり、そのきっかけとなった作品です。

中島監督は突出した映像センスや色使いがクローズアップされますが、中島作品の面白さのポイントは、キャラクタ―造形の的確さとわかりやすさであり、この映画はそのことが一番よくわかります。嶽本野ばらの同名小説の映画化なので、もともと小説に存在するキャラとはいえ、それを的確につかまないとこれほどインパクトのある映画にはならないからです。

ロリータファッションに夢中な下妻娘の桃子はメルヘン好きなわりに、共感してくれる人がいないし、友だちなんて必要ないわという意外と硬派な一匹狼です。ヤンキーのイチゴは言葉も気性も荒っぽいけど、人一倍寂しがり屋。ヤンキー仲間と群れるし、桃子に興味を抱くとずっとついていきます。

見た目と正反対のキャラをしっかり見せて、その意外性のおもしろさをわかりやすくストーリーに乗せていくのですね。見た目と性格が同じだったらつまらないでしょう。そうじゃないから面白い! 原作の魅力を脚色で倍増させ、スクリーンで描くのが監督の仕事ですが、これをバチっと決めることは難しい。でも中島監督作はいずれの作品でも見事に着地しているのです。

監督:中島哲也 出演:深田恭子、土屋アンナ、宮迫博之、篠原涼子、阿部サダヲ、岡田義徳、小池栄子ほか

『嫌われ松子の一生』(2006年度作品)
53才で殺害されて一生を終えた松子(中谷美紀)の一生をドラマありミュージカルありと華やかに綴った同名小説の映画化。

甥(瑛太)が紐解いていく松子の一生はまさに波乱万丈です。お姫さまみたいな人生を夢見ていたのに、教え子のせいで教師をクビになったり、風俗嬢になったり、浮気した恋人を殺したり、やっと得た幸福を目前に逮捕されたり……。出会う人たちがもたらす不幸の雨あられを一身に受けて懸命に生きる松子。これを普通に描いたら、本当に暗く辛く見るのが苦痛な映画になったでしょう。


しかし、中島監督は主役に美しい中谷美紀を迎えて、美麗なめくるめく映像と歌を投入して、松子の人生を思い切り華やかに見せていきます。生々しい物語をファンタジーに塗り替えてしまうのですよ。そして、その華やかさの裏に、松子は決して不幸じゃないという監督のメッセージがあるような気がします。松子は人生を全力で生きた。たくさん傷つけられたかもしれないけれど、常に生きることを実感しながら生を全うしたじゃないかと。中島監督の華やかな映像と楽しい演出には、ヒロインの人生を思い切り華やかに盛り上げてあげようという優しさを感じるのです。

監督:中島哲也 出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子、黒沢あす、柄本明、木村カエラ


※ほかにも『パコと魔法の絵本』『夏時間の大人たち HAPPY-GO-LUCKY』『バカヤロー! 私、怒ってます』(オムニバス映画・中島監督作は第2話「遠くてフラれるなんて」)などもありますからね、ぜひ制覇してくださいね!

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