骨・筋肉・関節の病気/その他の骨・筋肉・関節の病気

外傷性肩関節脱臼の症状・原因・治療

外傷性肩関節脱臼は事故、運動、なにげない日常の動作で肩関節を外転したり、外旋した状態で発生します。症状、診断法、治療法について解説します。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

外傷性肩関節脱臼とは

「外傷性肩関節脱臼(がいしょうせいかたかんせつだっきゅう)」とは難しい病名ですが、外傷が原因で肩関節の脱臼(だっきゅう)が発生する病態です。

脱臼

脱臼した左肩が変形します。反対の手で脱臼した腕を支えます。



外傷性肩関節脱臼の症状

脱臼した患者さんは、脱臼したほうの手や腕を反対の手で支えて受診します。肩関節の丸みが消失し平坦化します。時間が経過すると、肩関節の腫脹と皮下出血が発生します。


外傷性肩関節脱臼の原因

転倒、転落、スポーツ、交通事故などで肩関節が外転したり、外旋した状態で起こります。

外傷性肩関節の分類

●前方脱臼
上腕骨が前方に移動する脱臼。外傷性肩関節脱臼の95%以上を占めます。

●後方脱臼
上腕骨が後方に移動する脱臼。外傷性肩関節脱臼の5%以下の珍しい脱臼です。

外傷性肩関節脱臼の診断

●単純X線(レントゲン)

X線

       肩関節単純X線像。上腕骨が前方向に脱臼しています。



単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明をうけられるので、整形外科では必ず施行します。

●MRI
MRIは磁気を使用して人体の断面写真を作成する医療用機器です。被爆がないのが最大の特徴です。欠点は費用が約1万円程度と高額な点、狭い部屋に15分間ほど閉じ込められて、騒音が強いことです。脳外科の術後で体内に金属が残っている人、心臓ペースメーカー装着の人、閉所恐怖症の人などではMRI検査が無理なので、CT検査を行います。CT検査の費用は5000円程度で、MRIより安くなりますが、被爆があります。骨以外の損傷を調べるにはMRIないしCTが必要となります。


外傷性肩関節脱臼の治療

●徒手整復法(医師が手で脱臼を直す手技)

■ヒポクラテス法
患者の脇の下に整復を行う医師が足を入れ、患者の腕を下に引く整復法。

整復

              足を利用して脱臼を整復します。


■ミルチ法
脱臼した上腕骨頭を押さえながら患者の上腕を外転し、挙上位になった時に上腕骨頭を上方に押します。

■スティムソン法
うつぶせにベッドに寝た状態で、脱臼した上腕を台の外側にたらし、8kg程度の重りを手首に吊り下げ、10分から15分ほど放置します。整復されないときは、患者の腕を内旋、外旋させます。

整復

         手に重りを下げて自然に整復されるのを待ちます。



通常は外来で麻酔なしに施行しますが、時として入院および全身麻酔が必要となります。

整復後

整復後の肩関節X線像。上腕骨と肩甲骨が正しい位置にもどっています。



●鎮痛薬
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬を使用します。

問題点は長期の服薬で胃腸症状、腎機能低下が高率に発生しますので、急性期を過ぎたら主治医と相談し、減量ないし休薬を考えましょう。

外傷性肩関節の合併症

●反復性肩関節脱臼
1回外傷性脱臼を起こした後に、脱臼を繰り返すことを反復性脱臼と呼びます。若い人で脱臼を経験すると、反復性になりやすいことが知られています。

●内視鏡下肩関節修復術
反復性肩関節脱臼に対しては、脱臼で損傷した関節唇、靭帯、骨組織などを修復する必要があります。通常は内視鏡下に手術が行われます。
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