適切な謝り方を知っていますか?

謝り方

謝り方によって結果は大きく変わる

気をつけていたのにミスをしてしまった。悪気はないのに相手を不快にしてしまった。みなさんにもそんな経験はありませんか? プライベートでもビジネスでも「謝らなくてはならない場面」は誰にでもやってきます。

ところが、謝り方については勘に頼るのみで、特に備えをしている人は少ないのではないでしょうか。謝っても許してもらえないということのないよう、この機会に、謝罪と感情のメカニズムを学んでおきましょう。やってしまいがちな謝罪の仕方、関係修復ができるような謝り方を知っていると、ピンチの時に役立ちます。

謝られるとこう感じる

相手から適切に反省の気持ちが伝えられた場合、相手には次のような変化が起きます。
  • 怒りや憎しみの軽減
  • 悲しみ、驚きといったショックの緩和
  • 改善してもらえるという期待
このような感情の変化が起こると、「怒っている」「悲しんでいる」という状態から、「許す」という状態に移行しやすくなります。

ところが伝え方を間違ってしまうと、謝っているのに「心から悪いとは思っていない」「言い訳ばかりしている」などと捉えられてしまい、さらに怒らせてしまうこともあります。どうして感情がこじれてしまうのか、具体例を見ながら考えてみましょう。

謝っても許されない3つのパターン

「プレゼント用にネットショップで購入したフォトフレームが、届いた時に破損していた」というケースで、NGな謝罪の具体例を見ていきましょう。

1. 謝っているつもりでお詫びの言葉がない

例)「フォトフレームはエアパッキンで包装していますし、割れ物注意の表記をして送付していたのですが。お取替えしますので、壊れているものを送り返していただけますか?」

お客様のために丁寧に送付しています、不良品はスグにお取替えします。誠意ある対応なのかも知れませんが、お詫びの言葉がないのは問題です。受け取り方によっては「交換すればそれで済む」というように聞こえるかも知れませんし、言い訳ばかりのように感じる人もいるでしょう。

もしかするとフォトフレームは、大事な日にプレゼントする予定で購入したものであり、割れていたことで困ったり、非常に残念な気持ちになっているかも知れません。お詫びの言葉や相手を気遣う言葉がないと誠意は伝わりにくいのです。

2. 責任があることを認めない

例)「すみませんでした。スグに宅配便の業者に問い合わせてみます。」

自分に責任がないと感じている場合、お詫びの言葉が表面的になりがちです。まずは原因を明らかにしてからという気持ちはわかりますが、仮に自分のせいでなかったとしても、心を込めて謝ることが2次クレームを防いでくれます。

自分に責任がない場合は謝らないほうがいいと思っている人がいますが、これは誤解です。こういった場合には、責任の所在には触れず、残念な想いをさせてしまったことに対して心からのお詫びをすればいいのです。

3. 謝罪に誠意が感じられない

例)「それはすいませんね。交換しますんで送り返してください。」

壊れた商品への対応も伝えていますし、お詫びの言葉もある。しかし、この謝り方では反省の気持ちは伝わりません。

謝罪は大きくわけると「表面的な謝罪」と「心からの謝罪」の2つに分けられます。謝られる側は、
  • 伝える順番
  • 選んだ言葉
  • 声のトーン
  • 表情、雰囲気
などから、表面的な謝罪なのか、心がこもっている謝罪なのかを判断します。謝罪の言葉があっても、それが表面的であると感じた場合、魅力的な対応策を提示しても納得してもらえなくなります。

もしかしたら、商品が破損していたことで思っている以上に迷惑をかけてしまったかも知れない。そんな想像力が持てない人ほど、丁寧に謝ることを意識しましょう。

謝罪には5つのタイプがある

謝り方のタイプ

飼い猫がケガをさせてしまった場合、責任は?

ひとくちに謝罪といっても、様々なタイプの謝り方があります。どのタイプが有効で、どのタイプがNGなのか、具体例を見ながら学んでおきましょう。

今度は、飼い猫が隣の家の子供を引っ掻いてしまったケースで見ていきます。

1. 関与は認める謝罪

例)「えっ、ウチの猫が○○ちゃんを? すみません。」

ウチの猫ではないかも知れないといった主張をしないぶん、感情の鎮静化には多少効果が見られる謝り方です。軽微なミスなどではこのパターンでOKですが、問題の程度によっては不十分。反省している感じも足りませんし、責任を認めているのかも伝わりません。言葉足らずな謝罪は不誠実な印象を与えることもあります。

2. 責任があることを認める謝罪

例)「ウチの猫がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。○○ちゃん、お怪我はありませんでしたか?」

非を認め、責任があることを受け止めている感じが伝わる謝り方です。ケガの有無を聞くことで、傷ついている相手の気持ちを気遣かう感じも伝わります。ただし責任を認めているため、最低限の賠償(治療費の負担等)は求められることもあるでしょう。

謝られる側は「突然、理不尽な被害を被った」と感じますので、
  • お詫びの言葉
  • 反省
  • 責任の受容
  • 賠償
などを期待します。これを満たすようにすると納得されやすい謝罪ができるわけですが、責任を受容するような謝罪を避けてしまいがちなのが現実です。

3. 責任はあるが正当な理由があることを伝える謝罪

例)「実は数日前から○○ちゃんがウチの猫を棒で叩いていまして、注意はしていたのですが……。結果としてケガをさせてしまったことに関してはすみませんでした。」

「事情の説明+お詫びの言葉」というパターンは、一般的に多く見られる謝り方です。しかしながら、言い訳に聞こえることもあるので、構成を考えずに口にしてしまうと思わぬトラブルに発展することがあります。

言い訳に聞こえないようにするには、構成が重要。先にお詫びの言葉を伝えてから、状況の説明をするようにしましょう。この時、反省している感じが伝わらないと言い訳に聞こえやすいので、声のトーンや態度に気を配ってください。事情を説明した後にもう一度お詫びの言葉を付け加えるのも有効です。

4. 自分には落ち度がないことを匂わせてしまう謝罪


例)「○○ちゃんが猫を叩いていたので、やめるように注意をしていましたし、トイレの時以外は外にださないように管理していたのですが。前にもあったんですけど、もしかしたら○○が中から出しちゃったのかしら。いずれにしても、ケガについてはウチが謝らなくてはならないと思うんですけど。」

こんな謝り方をする人はいないと思うかも知れませんが、限りなく弁解に近い謝罪をしてしまう人は意外に多いものです。当然、謝られる側は納得できません。謝った側は「謝っているのに」と被害者意識を持つこともあります。

背景や事情を説明することは必要ですが、落ち度がないことを匂わせるような伝え方はNG。相手にも落ち度があるような言い方になってしまうと事態はいっそうこじれてしまいます。

5. 表面的に見える謝罪

例)(態度が悪い感じで)「それは申し訳ありませんでした」

相手に責められたように感じると、自分のしたことの正当化や責任転嫁をしてしまうという反応が起こります。「不可抗力だった」「そちらにも責任があるのでは」といった気持ちは、態度や表情に出てしまいがちです。謝る側は、自分の感情を抑え、精一杯の譲歩をしたうえでの謝罪をしていると思うかも知れません。しかし謝られる側は「心がこもっていない」と感じるのです。

上手な謝り方とは

自分に責任がある場合は、以下のような謝り方を基本として覚えておいてアレンジをするといいでしょう。
  • お詫びの言葉を述べる(非があることを認める)
  • 自分に責任があることを認める
  • 今後の対策について話す
  • 相手の感情を思いやる
  • 最期にもう一度お詫びの言葉を述べる
先ほどご紹介した5つの謝罪のタイプを思い出して、残念な謝り方にならないよう気をつけましょう。態度や表情などもフルに使い、相手にわかるように反省の気持ちを表現しましょう。

テクニック的にはそれほど難しくないのですが、これを実行しようとすると思わぬ心の壁が出現して中途半端な謝罪になりがちです。次のページではその心理と対策についてお伝えします。

謝罪が中途半端になってしまう心理とは

筆者は企業研修に立たせていただくことが多く、謝り方のロールプレイングにも多く立ち会っています。参加している人達は短時間で素晴らしい謝罪の言葉を構成しますし、ロールプレイングもスムーズです。しかし、実際に謝罪する場面では、責任問題が生じるため弁解が増えてしまいがちです。謝ることによって生じる「不利益」を恐れたり、責任を回避したいという気持ちが働いたりするのは自然なこと。無意識のうちに影響を受けていることを知っておきましょう。

研修では過去に失敗した事案を発表してもらい、ケーススタディとして分析するワークを行うのですが、実際にやってみると余計なひと言、残念なお詫びの仕方が多いことに気づきます。

頭でわかっているつもりでもできない。そんな状況を改善するためには、責任を認めるメリットについて考え、恐れや不安を少なくするのが有効です。

責任を認めるメリットとは

謝罪というと「能力がないように見られるのでは」「責任をとらされるのでは」など、デメリットを意識しがちです。しかし、謝ることには以下のようなメリットもあります。
  • 反省の気持ちが伝わる
  • 悪い印象が回復する
  • 相手との人間関係が回復する
  • 誠実さが伝わる
謝るということは、相手の感情に一歩踏み込む行為。誠意ある謝罪はピンチをチャンスに変える可能性も秘めています。お詫びをする際には、デメリットよりもメリットを意識して臨みましょう。伝わりやすい構成を普段から繰り返して練習しておくのも、咄嗟の時にもいい対応ができる方法です。

謝罪の場では感情の食い違いを前提に

謝る側と謝られる側には「認識の差」があります。謝る側は50くらいだと見積もっていることが、謝られる側にとっては90くらいの出来事だったりすることもザラなのです。こちらも研修でよく行うのですが、それぞれの役割でゲームをしてもらうと、思わぬ認識の違いに皆さん驚かれます。

50くらいの認識で謝ったつもりでも、無意識に自己弁護をしてしまうため30くらいの謝罪になってしまうのは、よくあること。相手は90くらいに感じているわけですから、そこにギャップが生まれるのも当然です。「謝ったのに」「誠意がない」といった感情の食い違いがあることを前提に、相手の感情に歩みよった謝罪を心がけたいですね。

謝罪をして許してもらえるのと、こじらせてしまうのでは、その後に大きな差をもたらします。冷静に考えられる今、イザという時に備えて、上手な謝罪の仕方に慣れておきましょう。

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