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未亡人と亡くなった夫の弟との悲恋物語「乱れる」

酒屋を営む戦争未亡人と、戦死した夫の弟との悲恋を、きめ細やかに描いた作品です。時代はまさに価値観が大きく変わろうとしていた時で、未亡人の心は義弟の存在を通じて新旧の価値観のあいだを激しく行き来します。見所は、女性を撮らせたら右に出るものはいないと言われる成瀬監督が撮る様々な女性、未亡人と義弟が徐々に距離を縮めていく電車のシーン、高峰秀子の鬼気迫った表情です。

投稿記事

新旧の価値観のあいだを千々に乱れる未亡人の心


■監督
成瀬巳喜男
■主演
高峰秀子、加山雄三
■DVD発売元
東宝ビデオ

ある田舎町で、義母とともに酒屋を営む戦争未亡人(演:高峰秀子)と、戦死した夫の弟(演:加山雄三)との悲恋を、きめ細やかに描いた作品です。時代はちょうど、田舎にもスーパーマーケットなるものが出現しはじめた頃。まさに価値観が大きく変わろうとしていた時代。そんな端境期にあって、未亡人の心は義弟の存在を通じて新旧の価値観のあいだを激しく行き来する。千々に乱れる。

成瀬巳喜男はよく、女性を撮らせたら右に出るものはいないと言われる監督です。
『流れる』という、ほとんど女性しか登場しない映画を撮ったほど。

本作にも、貞淑な女性、意地悪な女性、派手な女性、いかにも人が好さそうな女性など、さまざまな女性が登場します。それが1つめの見所。

2つめは、後半、未亡人と義弟が電車に乗っているシーン(ネタバレになるので詳しくは書きませんが)です。少し離れた席に座っていた2人は、みかんを受け取り、手渡し、雑誌を交換したりしながら、徐々に距離を縮めていきます。本作のなかでも、もっとも美しいシーンです。

3つめは、高峰秀子の演技。彼女の微笑みの演技に、どれだけのヴァリエーションがあるか、
ぜひとも注目しながら観てください。最後のシーンのクローズアップにもご注目ください。
あれほど鬼気迫った表情のできる女優さんは、おそらく現代にはほとんどいない気がします。


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