未消化状態の有給休暇はトラブルのもと!

有給休暇を未消化のまま放置するとトラブルの種となります

有給休暇を未消化のまま放置するとトラブルの種となります

有給休暇は正式には「年次有給休暇」と呼ばれ、労働基準法で条件が決められています。入社して即有給休暇を付与する企業もありますが、法令上は入社後6ヶ月間継続勤務10日付与義務が生じます。自社就業規則の記載はどうなっているかチェックしてみましょう。

有給休暇は、条件を満たすことで定期的に日数が加算されます。企業の実態をみてみると、完全取得されている企業は非常に少ないですね。平成26年「就業条件総合調査」結果(厚生労働省)によると、年次有給休暇の付与日数は18.5 日、そのうち労働者が取得した日数は9.0 日で、取得率は48.8%となっています。

なんらかの取得方法の工夫をしないと、「未消化」の問題が生じたままの状況下での労務環境になってしまいます。この状況下で大きな問題になるのが退職時の未消化有給休暇の処理です。処理方法を一歩間違えると大きなトラブルになります。

法令上のルールを確認した上で、現実的なトラブル回避策を本記事で具体的に考えていきましょう。事前に対策をとることで無用なトラブルを避けることができるのです。

そもそも法令でどのように決まっているの?

就業規則に記載されている有給休暇は、法定休暇です。そもそもどういう条件で付与されるのでしょうか。下記で要件を確認しておきましょう。

1.入社して最初の有給休暇の要件
  • 6ヶ月継続勤務し
  • 全労働日の8割以上出勤した従業員に対して
  • 継続または分割した10労働日の有給休暇を付与する義務
(1)継続勤務
いわゆる在籍期間のことです。在籍していれば休職期間、長期の病欠期間なども通算されますので間違いのないように。

(2)全労働日
1年の総歴日数から就業規則などで定まっている所定休日以外の日のことです。

(3)出勤日
次の期間・日は出勤したものとされます。間違えて理解していませんか。
  • 業務上の負傷・疾病で療養のため休業した期間
  • 法令による育児・介護休業をした期間
  • 労働基準法による産前産後休業をした期間
  • 有給休暇を取得した日
その他、有給休暇は、1日単位で付与するだけでなく、一定の条件により時間単位で付与することもできるようになっています。

2.勤続による有給休暇日数の増加

前記のとおり、6ヶ月継続勤務10日の付与となりますが、その後1年ごとの継続勤務により次のとおり加算されます。

  勤続年数     付与日数
  • 6ヶ月          10日
  • 1年6ヶ月     11日(1日加算)
  • 2年6ヶ月      12日(1日加算)
  • 3年6ヶ月      14日(2日加算)
  • 4年6ヶ月      16日(2日加算)
  • 5年6ヶ月      18日(2日加算)
  • 6年6ヶ月以上    20日(2日加算)
6ヶ月経過日からは、1年ごとに括弧内の日数が加算されるのです。最大6年6ヶ月後には付与日数は20日となり、その後は毎年20日付与されます。

3.有給休暇の繰り越し

有給休暇は翌年に限り繰り越しが可能です。たとえば、前記により6ヶ月経過時点で10日付与された日数を1日も使わなかった場合には、1年6ヶ月経過時点では11日+繰り越し分の10日で計21日となるのです。

4.最大で40日付与される従業員も存在

したがって、繰り越しと加算される日数の関係で、勤続年数が長い従業員では、20日(繰り越し分)+20日(当該年度分)で、最大40日付与される場合もあるのです。自社の従業員の付与状況をチェックしてください。このような状況下ではトラブルになる可能性が非常に高いことがよくわかりますね。

企業側で有給休暇の時季を変更できます

従業員から有給休暇を請求されたら、請求どおりの時季に付与させなければ違反になるのでしょうか。1日であれば、あまり問題にはならないと思いますが、連続した数日取得の場合や事業の繁忙期などの場合には、事業の運営に支障をきたすことが考えられますね。

こうした場合、企業側でその取得時季を変更することができます。事業活動に支障がでないように請求された時季を変更することができるのです。判例をみてみると、有給休暇当日に請求された休暇を、その当日に時季を変更した場合でも有効とされた事例もあります。

企業実務では、多くの場合企業側と従業員側での取得時季の調整をして支障がでないような処理がなされていますね。ビジネス世界では労使による事前の調整は、トラブル回避の大前提です。

退職時の未消化有給休暇の対応

未消化の有給休暇を防ぐため計画的付与を検討しましょう

未消化の有給休暇を防ぐため計画的付与を検討しましょう

今まで有給休暇の法的根拠を確認してきました。勤務を継続することで、場合によっては繰り越し分を含め最大40日付与される有給休暇。日本のビジネス社会では、従来から有給休暇の取得日数がきわめて少ない状況です。本人からの請求で取得されるので、なかなか請求しづらい職場環境になっているのが見てとれます。

この状況下で退職することになると、未消化の有給休暇の取得問題で労使間トラブルに巻き込まれることがあります。退職予定者が、未消化の有給休暇をまとめて取得してから退職する旨の退職届を提出する場合です。

企業側からすると、未消化分をまとめて取得されると非常に困りますね。結論から言いますと、法令上、退職予定者の未消化有給休暇の請求は認めざるをえません。消化されるまでの間はいまだ在籍中ですから退職するまでは取得する権利があるのです。

・企業側で取得時季を変更することはできません
企業側では前記の時季変更権で対応したいところですが、退職後には時季変更権がなくなってしまいますから退職日を超えて時季の変更はできません。したがって時季の変更をすることはできないのです。

・退職者の有給休暇の買い上げ
有給休暇の消化日をもって退職するのではなく、未消化の状態で退職する場合はどうでしょうか。この場合、未消化分を企業側で買い上げることは自体は違法ではありません。実際この取扱いをする企業も存在します。

未消化有給休暇のトラブル回避の具体策!

以上のように退職時にはかなりの制限がかかりますので、未消化分を認めない処理をするとトラブルになることが予想されます。次から、企業側で事前に取っておくと有効な対策を解説いたします。この対策をとれば完全に回避できるわけではありませんが、ぜひ対応しておきたい内容です。

1.就業規則の退職条項の記載内容を変更する

退職時に未消化分をいっぺんに請求されると事務の引き継ぎに支障がでることが予想されます。また最大で40日分も消化されると、仕事をしていないのに多くの賃金の支払いが必要になります。就業規則で次の対策をとりましょう。

・就業規則の退職事項の記載事項の工夫
「退職日までに業務の引き継ぎを完了させ業務に支障がでないようにし、所属長の確認を受けることとする」

このような記載をすると、退職をする場合には業務に支障がでないように退職日を決めなければならないことが明確になりますから、従業員に対して企業側のメッセージが伝わります。よく考えると問題なく事務引き継ぎをすることは、円満退職のポイントでもありますね。実務上は当人との話し合いで、退職日を引き継ぎに必要な日数分だけ延ばすこともありえるでしょう。

2.有給休暇の計画的付与を最大限に活用する

有給休暇は、従業員からの請求により取得させなければなりません。自社の労働環境から取得しづらい状況をそのままにするのではなく、一歩進んで労使で取得に向け計画的に取得を進める方法があります。これは労働基準法で許されている合法的な取得促進方法です。

(1)自社で計画年休制度を導入する
労働組合又は従業員の過半数の代表者と書面協定で、有給休暇を取得する時季を決めておくことができます。具体的には有給休暇の日数のうち5日を超える部分の取得時季を計画的に決めておくことです。なお対象外の5日分は協定にかかわらず、従業員本人が自由に取得できます。従業員の請求がなくても、労使の書面協定によって強制的に付与させることになりますので取得が促進できますね。

(2)計画的付与の具体的方法
事業活動の閑散期や夏季休暇として付与日を事前に特定すると効果的です。会社側・従業員側両者でそれを見越して事業活動ができますね。従業員側では気兼ねなく取得することができるようになります。未消化有給がでないように工夫しましょう。

【具体的な方式】
  • 個人別付与方式
    (従業員個人ごとに取得日を決める方法)
  • 一斉付与方式
    (事業場全体で一斉に付与する方法)
  • 班・グループ別付与方式
    (交代制で付与させる方式) 
自社で採用できるものはありますか?労使で取り決めておくことで、従業員の同意、就業規則の定めなどを要することなく消化促進をすることができるのです。退職時の未消化有給休暇のトラブル回避を事前の対策で防いでいきましょう。

<関連資料>
年次有給休暇ハンドブック(厚生労働省)
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