香味表現の第2回
グラスを立ちのぼる香味は饒舌
また文化の異なる国や地域によっても味覚の捉え方は異なるだろう。たとえばスコティッシュがオレンジーと単に柑橘系の甘さを指したとしても、日本人は温州みかんのようなふくよかさがある、と具体的に感じ取るかもしれない。
この記事はあくまでブレンダーをはじめとした業界のプロたちが構築した香味区分を語っているに過ぎない。ウイスキー入門者の方々が香味について書かれたものを目にしたり用語を耳にしたときに、あんな感じか、と理解がおよぶ手助けになればいいと考えている。とにかくウイスキーを自分なりに感じ、自分の好きな香味を愉しめばいいのであって、ウイスキーの香味表現用語を理解しているからといってウイスキー通というわけではない。
では、2回目。前回の香味表現1[A~E]を参考にしながら読み進めていただきたい。
香味表現の解説[F~O]
Finish/フィニッシュはアフターテイストと同様に使われる。飲んだ後の余韻、印象を語る場合に使う。 *香味表現1/Aftertaste参照Flavor(Flavour)/フレーバーは香味(香りと味の両方を含む)、風味。とくに印象的な風味(持ち味)に使われる。 *香味表現1/Aroma、Bouqet参照
Floral/花のような感覚。フローラルはザ・マッカランをはじめスコットランドはスペイサイドのトップ・クラスのモルトウイスキーが抱いている香味。シングルモルト山崎もこの感覚を抱いている。エステリーと重なる。Flowery(フラワリー)が使われることもある。
Fragrance/フレグランスはエステル様の仲間で、香水の感覚。バラとかスミレといった花の香りも想起させ、エステリーと重なる。
Fruity/果実香。フルーティーもエステル様の仲間で、よく使われる。エステリーと重なる。リンゴ、洋梨、バナナ、パイナップル、メロン、イチゴ、イチジク、プラム、レーズンなどフルーツの甘く好ましい香り。 *香味表現1/Ester参照
Fullbody/フルボディとは香味が豊かに満ちていて、芳醇なコクがあるウイスキーのことを言う。日本語には「厚みがある」といった表現があるが、ほぼそれに近い。ミディアムボディ、ライトボディ(後述) *香味表現1/Body参照
Heavy/ヘビー。酒質の印象が強く、香味成分が多く複雑で、重く感じられること。
Idoione/ヨード。アイラ島をはじめスコットランドのとくにヘブリディーズ諸島の島々のピート(ヘザーをはじめとした植物が炭化して堆積したもので、泥炭、草炭という。大麦麦芽の発芽を止める乾燥時に燃やし、その燻香がスモーキーフレーバーを生む)に含まれる、海藻のヨウ素。クレゾールを想わせる独特の香り。アイラモルトのラフロイグ、ラガブリン、アードベッグのスモーキーさの中にその強い特長が感じられる。ピーテッドモルト、スモーキー(後述)
次頁では、M~Oまでを紹介する。(次頁へつづく)