起業資金調達のためのポイント
起業・独立時に頭を悩ますのが、資金のこと。起業独立資金のうち、自己資金でまかなえない分については、日本政策金融公庫の新創業融資を借りるが一般的です。でも、日本政策金融公庫への借入申込書類には独特の特徴があるため、起業家にとっては難解な内容なのも事実。ただ、ポイントを押さえて臨めば怖くありません。ガイドの豊富な起業支援経験から日本政策金融公庫から新創業融資を引き出すポイントについて解説していきます。日本政策金融公庫の新創業融資制度の特徴
新創業融資は起業家にとって有利な融資制度です
日本政策金融公庫の新創業融資には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
新創業融資制度のメリット
■新ビジネスの育成に力を入れている日本政策金融公庫は、政府系金融機関として税金を使い、政策的に起業・独立を後押ししています。一般の銀行などがリスクを恐れ、起業・独立資金を融資することに消極的なのに比べて、日本政策金融公庫は政府系金融機関として新しいビジネスの育成に積極的に取り組んでいます。
■無担保無保証と連帯保証人署名の不要
日本政策金融公庫の新創業融資では、無担保無保証で最大3,000万円まで借入が可能です。無担保無保証ということは、担保がいらないどころか、経営者本人の連帯保証の署名さえ不要ということです。日本における一般企業向け融資では、経営者本人が連帯保証人になることは、まだまだ残っていますので、それと比べて非常に有利な制度といえるでしょう。
■1ヶ月程度で融資実行
起業・独立時の公的融資制度として、市区町村、都道府県など自治体の創業融資を受けるという手段もあります。その場合、自治体、金融機関、信用保証協会と3つの機関が関わりますので、融資実行までに約2ヶ月程度と相当な時間が掛かってしまいます。それと比較すると、日本政策金融公庫の新創業融資については、申込みから融資実行まで1ヶ月程度ですので、起業・独立後の素早い事業展開が可能となります。
新創業融資のデメリット
■金利が若干高い日本政策金融公庫の新創業融資は、通常の経営時の融資に比べて十分に有利な金利水準。ただ、自治体の創業融資の場合、利子補給など各種優遇措置を実施している場合もあるので、それと比較した場合、日本政策金融公庫の新創業融資の金利水準の方が若干高い場合があります。
審査でクリアするべき4つのポイント
日本政策金融公庫の新創業融資を受けるにあたり、審査でクリアすべきポイントが4つあります。しっかりと押さえておきましょう。ポイントを押さえずに審査に臨むと、折角のチャンスを棒に振ってしまう可能性が大です。1.自己資金
新創業融資を受けるには、事業全体にかかる金額の1/10の自己資金が必要です。できれば1/3程度を用意するのが理想。自己資金の額は起業・独立に対する本気度を計る尺度にもなります。起業・独立を決意し、準備を進める間になるべく多く用意しましょう。
といっても、一時的に誰かから借りてくるなど、いわゆる見せ金はダメ。見せ金が原因で審査に落ちてしまう失敗例も見受けられます。審査では見せ金ではないかどうか確認のため、過去1年分の個人の通帳をチェックし、厳しく審査されます。
2.業種経験、経営者の能力
一般的な企業融資の審査であれば、過去の実績から経営者としての能力を測ることはできますが、創業融資の場合は未知数です。そこで、創業融資の場合、創業計画書に記載されている起業の動機、過去の履歴書、面談時の態度などから経営者としての経験、能力などが審査されることになります。
また、過去の個人の通帳を審査する際にお金とのつきあい方(きちんと返済する信用できる人間か)も見られます。例えば、毎月貯蓄をしているか、クレジットカードは使い過ぎていないか、怪しいお金の出し入れはないか、消費者金融、カードローンなどは利用していないかなどです。起業・独立を決意した時点から、お金とのつきあい方には慎重になるべきです。
3.返済可能性(事業計画書)
返済可能性とは、「きちんと返済できる事業計画書になっているかどうか」です。
具体的に言うと、税引き後利益+減価償却費(償却前利益といいます)が年間の返済額を上回っているかどうかです。そのためには、事業として継続的に売上、利益が上がる事業の仕組みができているか、そのことを事業計画書にきちんと表せているかが重要となります。一番多い失敗例は、事業計画書にこの返済可能性を説得力をもって表せていないパターンです。
4.資金使途(事業計画書)
資金使途とは「借りたお金を何に使うか、きちんと示すことができるか」ということです。つまり、いくら自己資金があっても、最大3,000万円の制度であっても、借りるお金の使い途がハッキリと示せなければ借りることはできないということです。
主に設備資金と2、3ヶ月分の運転資金が資金使途として認められます。審査に通るにはこの資金使途を事業計画書、創業計画書に説得力をもって表せているかが重要です。また、その証明のために業者などの見積書の提出が求められます。これから契約する賃貸物件などの場合は、見積書の代わりに物件チラシなどが必要です。