自殺者3万人台時代、そのわけは?
信じてきたものを急に失うと人は絶望する
わが国にこれだけ自殺者数が増えたのは、なぜでしょう?
自殺者数3万人台となった最初の年は1998年ですが、前年には山一証券や北海道拓殖銀行の破綻があり、バブル崩壊から始まった不況の絶望感が極まった年でもあります。同時にIT化導入やグローバル経済への移行等、社会の高度情報化、そして産業構造の大変革が本格的に始まった時期でもあり、それを受けて多くの企業で人事制度改変(年功序列制、終身雇用制の廃止、成果主義の導入、雇用の多様化等)も本格的に始まった時期でもありました。
こうしたなか企業では雇用調整が始まり、特にリストラの対象とされた50代を中心とする中高年層の男性にうつ病が増えました。また、この層を中心に自殺者数も増えていったのです。
景気に希望が見えても自殺者数は変わらない
正社員は疲弊し、非正規は困窮する
しかし、景気回復が期待されたその時期でも「3万人台」の自殺者数は変わることなく維持され続けました。うつ病を含む気分障害の患者数も増加し続け、働き盛りである30代、40代にも自殺が目立つようになりました。
30~40代の働き盛り世代では、雇用スタイルの多様化により、正規職員には管理業務、IT化、グローバル化に対応した技能と知識の超高度化が求められるようになり、業務量も精神的負担も増える傾向が強まりました。一方で、非正規職員や自由業者、自営業者には安定的、永続的な雇用や受注が見込まれずに、報酬額の減少も顕著になり、貧困に直面する人も増えてきました。
このように、就業スタイルに関わらず精神的に追い込まれるケースは増大し、この流れは抜本的な対策を打たない限り、続くであろうと予測されます。