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「礼金」の性質と最新事情(2)(3ページ目)

礼金とは一体何か?歴史的な背景と、現状、そして将来的な予測をまとめた記事に引き続き、判例とともに礼金事情に迫ってみました。

加藤 哲哉

執筆者:加藤 哲哉

賃貸・部屋探しガイド

<控訴人(借り主側)の主張>
・この契約における礼金の約定は、消費者契約法10条前段に該当する。

・礼金は賃借人が一方的に強要されているものであり、何の根拠も対価もない。

・仮に、賃借権設定の対価、あるいは賃借権確保の対価、賃料の前払いなどと考えたとしても民法上当てはまらない。

・また、消費者契約法10条の後段にある基本原理である信義則(民法第一条二項)に反する。
(礼金に関する約定は、もともと賃借人が一方的に強要されているものだから、返還しない旨の約定が明確であるためには、単に返還されないことを記載するたけでは足りず、その趣旨や説明の明確性が求められるものである、ということ)

・礼金は、UR賃貸(旧公団)や特定優良賃貸住宅では禁止されている。

・平成17年3月ごろ首都圏、愛知、京阪神の3大都市圏における礼金などの額を調査したところ、京滋地域の礼金の平均額は2.7ヵ月(敷金のない物件に限れば3.3ヵ月)であり、首都圏の1.5ヵ月や愛知の1.1ヵ月に比して突出して高い。


<被控訴人(貸し主側)の主張>
・礼金は、(1)賃借権設定の対価(2)賃料の前払い という複合的な性質を有するものであり、賃料の支払義務は民法に定められているから、この約定は消費者契約法10条には該当しない。

・もし、礼金が単に「賃料」かどうかという形式的な解釈をすれば、賃料という名目以外の金銭の支払いに関する契約条項はすべて消費者契約法10条前段に当てはまることとなり、たとえば礼金や更新料などが社会的に広く利用されてきたという実態に合致しない。

・消費者が受ける不利益とその条項を無効にすることで事業者が受ける不利益とを総合的に衡量したうえで、信義則に反するかどうかは判断されなければいけないが、本件の礼金約定は、一方的に消費者の利益を害するものとはいえない。

・賃貸借契約は、一般に広く行われる契約であり、「賃料」「更新料」「礼金」などの用語も広く使われている。また、敷金とは異なり、のちに返還されないことは一般に広く理解されている。

・今日、賃貸物件情報はインターネットや情報誌などによって巷に溢れており、消費者は比較検討することができ、その上で選択して契約の申し込みを行っているのである。

・京都市内では、賃貸物件の約20%が空室になっており、賃借人は物件選択において有利な立場にある。礼金が設定されていない物件もあり、賃借人が選ぶことも可能。



>>>裁判の争点、そして判断のポイントは?
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