統合失調症/統合失調症の原因・症状

統合失調症による幻聴の症状…内容・対処法

【医師が解説】幻聴が聞こえるのは、統合失調症の特徴的な症状のひとつです。人の会話が聴こえることも多く、内容は悪口や命令であることも少なくありません。日常生活を送る上で大きな障害になってしまう幻聴の原因や具体的な症状、幻聴であると本人に自覚症状がない場合でも周りが気づけるポイントについて解説します。適切な薬物治療で対処することができます。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

幻聴とは……幻覚症状の一つで誰もいないのに音や会話が聞こえる

統合失調症の症状である幻聴

統合失調症の代表的な症状の一つである幻聴。人の会話や悪口や命令などが、現実のものと全く区別できない状態で聞こえるのは非常に辛いものです


誰もいないはずのところから物音や人の声が、現実のものと区別できないほどはっきりと聞こえる「幻聴」。聞こえる音声は、単純な物音、音楽、人の声、複数の人による会話、また、判別不能なものなど、様々です。

幻聴は、統合失調症などの病気がない人でも、特殊な状況下において、一時的に経験することがあります。例えば、伴侶を亡くして悲嘆にくれている時に、死んだはずの伴侶の声が聞こえた気がした、というようなものです。これらは一時的なものですが、精神疾患、特に、統合失調症ではこの幻聴が主症状として現れます。具体的な幻聴の内容や症状の出方、治療法について詳しく解説します。
 

統合失調症の幻聴の種類・特徴

統合失調症の幻聴のタイプには以下のものがあります。
  • 何か行動しようとすると、それに対するコメントが聞こえる。多くの場合、ネガティブなコメント。
  • 命令する声が聞こえる
  • 複数の人が会話をしていて、しばしば自分の噂や悪口を言っているのが聞こえる
  • 自分の頭の中の考えが、外部の別の声として聞こえる
最後の「自分の考えが声となって聞こえてくる」はなかなかイメージしにくいかもしれません。何か考えている時に、その考えが声になって、耳からはっきり聞こえると感じるという不思議な現象です。
 

幻聴という自覚症状が本人になくても周りが気づけるケース

幻聴は実際には聞こえる音声ではないので他の人が症状を知ることはできませんが、身近な人が幻聴の症状に悩んでいる場合や、それが幻聴であるという自覚症状がない場合であっても、本人の言動から幻聴の症状に悩んでいるのではないかと推測することもできます。
  • よく独り言を言うようになった
  • 人の話を聞いたり話しかけたりしているような言動がある。誰もいないのに誰かと会話をしているように見えることがある
  • 誰もいない空間に向かって叫ぶことがある
     

幻聴の内容・具体例・体験談……自分の悪口や命令してくる声など

実際に幻聴を体験した場合に、どのような声が聴こえるのかも解説しましょう。

■幻聴の内容:自分の悪口が聞こえてしまうケース
20代の女性。最近数日間、家の外から聞こえる会社の上司の声に悩んでいます。その声は「彼女は怠け者だ」「他の同僚とうまくコミュニケーションがとれない」「彼女には罰を与えなくては駄目だ」などと言っています。窓から上司の姿を探しても、どこにも見当たりません。上司は自分に会いたくないのだと考え、窓から外に向かって「ちゃんと話をしたい。私のことを誤解しています」と叫んで呼びかけました。しかし、家の人には上司の声は聞こえておらず、急に窓の外に向かって何か叫んでいるという違和感を与えます。

■幻聴の内容:命令された気がして、行為をしてしまうケース
32歳の男性。「あの家へ行って玄関のドアをノックして、その家にある物を取ってきなさい」と命令してくる声が聴こえます。何度も命令されるので、実行するしかないという思いにとらわれ、実際にその家に行って玄関のドアをノックしました。ドアが開いたので、その家の人に、命令の声に従って物を取りにきたということを伝えました。家の人はびっくりして、ドアはすぐ閉められてしまいました。


このように幻聴は、周りの人には全く聞こえず、内容も合理的でないものですが、本人にとっては現実の声と変わらず、大変うるさく不快なものです。聞こえてくる声が原因で眠れなくなったり、仕事に集中できなくなったり、物事を楽しめなくなったりと、正常な生活を送る上での障害になることもあります。

また、上記の例のように、幻聴によって自分自身の行動がコントロールされてしまう危険もあります。幻聴が聞こえたら、すぐに治療を受けることが望ましいです。実際、薬物療法は幻聴の治療にとても有効です。
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