統合失調症/統合失調症の原因・症状

【統合失調症】Vol 1.幻覚症状は精神病?

幻覚とは、ありもしないものを見たり聞いたりしてしまうことです。心を病むと、幻覚がよく起きます。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

幻覚とは、実際には存在しないものを知覚することで、声が聞こえてくる幻聴、幻が見える幻覚、また匂いを感じる幻臭などがあります。

●幻覚が見えたら精神病?

幻覚が見えると「精神病かしら?」と考えてしまう人がいますが、幻覚があったからといって、精神病とは、限りません。正常な人でも、特殊な状況下では、幻覚を経験する事があります。このような幻覚は、幻視、つまり、まぼろしをみているのが一般的です。人口の10%から27%の方が、幻覚を経験したという統計があります。寝起きや、寝入り時に幻をみることはよくあります。

●どんな精神病で幻覚はみられる?

様々な障害で幻覚の症状が認められますが、統合失調症の幻聴薬物中毒の幻視てんかんの幻臭が有名です。

次に代表的な幻覚の例として、統合失調症の幻聴について紹介します。

●統合失調症の幻聴

まず本人は幻聴を幻とは認識できません。幻聴が、あたかも誰かが喋っているような実際の声として聞こえます。そして、彼らを脅迫したり、責めたり、悪口が聞こえてきます。また、何かしようとすると、「するな」といちいち口を挟んできたりもします。例えばテレビのチャンネルを変えようとすると、「変えるな」と言われます。また、複数の人が会話をしているのが聞こえることもあります。自分自身の考えが声となって聞こえる事もあります。例えば、本を黙読していると、書かれている内容が一語一語、明確な声として聞こえてきたりします。

考えてみて下さい。みなさんも、もし突然、声が聞こえてきて、あれこれ言われるとびっくりし、大変怖く思われるでしょう。事実、統合失調症の人は、世の中がとても、怖い灰色の世界と感じます。始終、耳元で大きな声で、さまざまな事がガンガンと響き渡り、悪口を言われたり、あれこれ命令されたり、時には「死ね」などと言われ、たいへん怯えてしまいます。中には「死ね」と言われ、そのまま自殺してしまう人もいます。統合失調症では、10~15%の人が自殺してしまうという統計があります。予測の困難な場合が多く、大変な問題です。 

また「殺せ」という声を聞いて、人を殺してしまう事がごく稀にあります。実際、精神病者による犯罪は大きな社会問題となっていて、責任能力を問うのは、難しく、精神鑑定家による鑑定が必要となります。 

時々、電車の中など、公共の場所で、明らかに気が変な様子で、一人でぶつぶつと何やら呟いている人を見かける事があります。彼らはどうして、独り言を言っているのでしょうか? 幻聴が関係している場合もあります。そのような場合は、彼らは、聞こえてくる声に対して、返答しています。つまり、本人にとっては、会話をしているのですが、周りの人からみると、独り言なのです。このような状態では、精神科医の診断を受けて、適切な薬物療法を受ける事が必要で、場合によっては緊急入院となります。 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

科学的には、脳内の神経伝達物質であるドーパミンが、幻覚の発現に関与していると考えられています。そのドーパミンの働きと関係のある薬物が、精神科では用いられ、こうした薬物の効用で、幻覚の発現をコントロールすることができます。今も、幻覚の理解を目指して、さかんに研究が行われています。

AllAbout 関連記事
・ビューティフル・マインド

関連サイト
・統合失調症について
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます