フリーランスが、個人事業として“1人1企業”なら、「職人」という職種は、1人で最終製品を造り上げる“1人1メーカー”です。
大量生産・大量消費の一方で、伝統や職人気質に守られてきた匠の世界は、究極のオンリ-ワン(自己ブランド化)、そこには職業の原点と新たな価値観があるように思います。
今回は、バイオリン職人の道を選び、その修行に励む古川皓一さんに取材・ご協力をいただき、現代のバイオリン職人の世界をご紹介します。
プロフィール
1975年、大阪生まれ。バイオリンの製作学校「バイオリン工房クレモナ」(大阪高槻市)で、1997年から4年間学ぶ。卒業後、日本、イタリアで修行に励む。2003年クレモナのバイオリン製作者コンクール「トリエンナーレ」へ出品、ディプロマを取得。現在、自宅の工房にて製作や修理の仕事を行う。製作者グループ「ピアチェーレ」(岩井孝夫氏主催)に参加 。・liuteria di koichi furukawa
バイオリン作りの本場はイタリア!
普通の楽器は、100年たてば壊れて使えなくなってしまう。しかし、バイオリンは古くなればなるほど木が乾燥して、益々よい音色を出すそうです。名器と称される「ストラディヴァリ」(名工、アントニオ・ストラディヴァリ作の楽器のこと)は、あまりにも有名ですが、それら優れた職人の手によって製作された楽器は、著名な奏者の手を経て、なんと200年、300年と弾き継がれて今に至っているそうです。バイオリン作りの本場はイタリア。北イタリアにあるクレモナは、アマティ、ストラディヴァリ、グァルネリと、名器を生み出す職人を次々に輩出して、バイオリン製作のメッカと呼ばれています。
---イタリアの工房での修行はどうでしたか?
僕はクレモナではなくてジェノバの街で、修行させてもらいました。約3ヶ月間でしたが、楽しかったです。ジェノバはイタリアの中でもかなり都会で、海も山もあり、いろいろ便利でいい街です。現地の工房では、仕事のやり方や仕事に対する考え方も違ってとても勉強になりました。
イタリアには、日本のような大きな楽器店や楽器商がありません。今も、師匠となるマエストロと弟子が1~3人ぐらいの工房が主となっています。親の家業を継ぐことも多いようで、代々一家で製作している工房もあります。
日本だと、お客さんと職人の間に楽器商が入ることが多いのですが、向こうでは、音楽家や演奏家との距離がもっと近いように感じました。演奏家が工房に訪れて、直接マエストロと話し合いながら調整したり、アドバイスしながら製作をしています。
クレモナは、中世の雰囲気を残した静かな街です。今も80を超える工房があって、バイオリン作りの拠点です。世界中からプロの職人を目指す学生が集まってきます。日本からの留学生は年々増えているようです。街には、立派な劇場があって、頻繁に無料コンサートなどがあります。音楽が身近にあるように感じました。
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