大学生の就職活動/就職活動での業界・企業研究

後悔しない業界&会社研究講座<基本編>(4ページ目)

業界&会社研究には二つの目的がある。一つはその会社への自分の熱意を確認するため。もう一つは自己PRが的外れでないかを検証するためだ。後で後悔しないためにも、面接で恥をかかないためにも、真剣に取り組もう。

執筆者:見舘 好隆

その志望会社の業界は、どのような競争状態なのか?

さて、最後にその志望会社の業界は、どのような競争状態なのかを考えてみよう。マイケル.M.ポーターは競争は業界の経済的構造によってもたらされると考え、業界の競争状態を決める基本的要因として以下の5つの要因を挙げた(ポーターの5つの力)。

    • 新規参入業者の脅威
      例えば医薬品業界に新規参入するには巨額の投資が必要で、政府の認可も難しい。また流通チャネルもマツモトキヨシなど一般小売ならまだしも、病院への新規営業はライバルたちに抑えられていて大変困難。参入障壁は非常に高い業界と言えよう。また、航空会社も携帯もテレビ局も投資と認可のハードルがめちゃくちゃ高そう。プロ野球もそうでしたが、最近マスコミに叩かれ新規参入障壁は大分低くなった。逆に参入障壁が低いのはどこだろう。参入投資が安い旅行業界は低いと言えそうだ。
       
    • 業界内競争
      スカイマークエアラインズやエアドゥが参入した時、JALとANAが強烈に反応したことを覚えていますか?JALとANAは、羽田~福岡線、羽田~札幌線の同時間帯の路線のみ値段を下げて新参入組の価格優位性を無くした。
      またジャスコ(イオン)は店舗を市街地にあえて作らず、地方に出店攻勢をかけている。なぜなら東京近郊中途半端に大きな店を作っても、近くにもっと大きな店を作られてしまっては元も子もないからだ(今のダイエーの低迷の原因の一つ)。しかし、人口10万人以下の小さな街であれば、その人口に十分に見合った大きな店をつくってしまえば、後から他の大型店は参入しにくい。このように業界内の競争にはいくつかの原則がある。
       
    • 代替製品の脅威
      その商品カテゴリーでいくら大きなシェアを占めていても、思いもしない代替製品によってクリティカルなダメージを負うこともある。例えば「ポケベル」。携帯メールの登場で最大手の東京テレメッセージは倒産した。MDウォークマンもiPodの登場で蚊帳の外へ。今やauの着うたフルの登場でiPodもうかうかできない。あなたが目指す業界や会社は同じようなリスクが無いか、検討をしておく方がいい。
       
    • 買い手の交渉力
      例えば自動車部品メーカーであれば、買い手は自動車メーカーしかなく、自動車メーカーのほうが優位に交渉する力を持つことになる。また買い手が購入する商品に差別化が無ければ、買い手は当然安いものを買うことになる。取引先を買えるコストが安ければ、取引先は簡単に仕入先を変える。また買い手が川上統合をする可能性もある(例:ラーメンチェーンが製麺を行う場合、製麺会社は買い手を失う)。よって卸先の競争力もチェックが必要だ。
       
    • 売り手の交渉力
      例えば旅行業界において国内の航空券や鉄道の手配先は数社に限られている。例えばJALに「もう卸しません」と言われたらもうJALのチケットを組み込んだパッケージツアーは作れなくなるし、JRが仕入れさせてくれなければJRの切符プラス宿泊のプランは作れない。またパソコンメーカーにとって、マイクロソフトのWindowsやインテルのPentiumは無くてはならない存在だ。よって仕入先の競争力もチェックが必要だ。


以上、このように志望会社を徹底的に研究することはもちろん、企業戦略、その業界の競争状態など、一つ一つ噛み砕いて理解を深めていかなくてはならない。

結構大変かもしれない。でも、もっとその会社を好きになるかもしれないし、逆に魅力を感じなくなってライバル会社に浮気するかもしれない。面接を受ける前にそんな感情が沸いておいたほうが、あとで後悔しなくて済む。

そして何よりも、自己PRが的外れでないか?を検証できることが重要だ。

面接で恥をかかないためにも、是非取り組んでほしい。


※業界・会社研究に関して、今まで明確なアドバイスは他の就職本や就職情報誌にも無かったと思う。自己PRを作る上でも、そして意中の会社や仕事を決めるためにも必須の作業なのだから、これからももっと掘り下げて行きたいと考える。今回はマイケル.M.ポーターの著書を参考にしたけど、その他フィリップ・コトラー、P・F.ドラッカー、ジェイ・B・バーニーなど、企業戦略に関わる名著者の書籍はたくさんある。経営学の観点で業界・会社研究すると、本当に面白いよ。大学の経営学の教授にいろいろ尋ねてみるとヒントを教えてくれると思う。だって彼らが得意とするケーススタディは、会社研究そのものなんだから。

※ケーススタディは「BookPark」で買えるよ。ここでは慶應義塾大学ビジネス・スクールや一橋大学イノベーション研究センターの論文を購入できる。志望会社のケーススタディは必ず買うべし。ライバルに圧倒的な差をつけることができる
【編集部おすすめの購入サイト】
楽天市場で就職関連の書籍を見るAmazon で就職関連の書籍を見る
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます