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カスピ海は海か湖か?(3ページ目)

カスピ海は海か湖か? これが結構重要な問題なんですね。なぜか? 海と湖で異なる国際法の扱い。それをめぐる周辺国の利害。くわしく解説してみました。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【日本より大きな湖、カスピ海は実は海?】
2ページ目 【カスピ海が海か湖かでこんなに違うイランの事情】
3ページ目 【実はカスピ海は「第二のペルシャ湾」だった!?】

【実はカスピ海は「第二のペルシャ湾」だった!?】
石油をめぐる各国の思惑


カスピ海は実は石油が豊富だ、ということがわかってきているのですね。どうやらペルシャ湾並みに埋蔵されているらしく、それがこの問題を複雑にしているのですね。

世界第一位の石油輸入国アメリカも、カスピ海には大注目です。危ない中東などより、ロシアなど紛争の少ない地域から、安定して石油を買いたい。

ところが、アメリカとイランはブッシュがイランを「悪の枢軸」の一つにあげるくらい、関係は険悪。アメリカもおそらく、ロシアの言い分を支持するでしょう。

しかし、イランとしても譲れません。石油輸出国機構(OPEC)の主要加盟国であるイランとしては、OPECによる石油生産体制をなんとか守り、自分たちの武器にしたい。そのためには、自分たちの取り分がすくなくなる、ということと同じくらい、OPEC非加盟国のロシアなどの石油産出が多くなることに、警戒をしているはずです。

また、トルコもからんできます。EU加盟を果たしたいトルコとしては、なんとかそれにみあう経済力をつけたい。カスピ海の石油はこれにうってつけ。離れているように見えますが、沿岸国のうちカザフスタン・トルクメニスタン・アゼルバイジャンはトルコ系語族の民族。関係は良好です。

かれらから石油を優先的に買わせてもらって、石油工業をおこしてEU加盟を果たしたい! そんなトルコの思惑もからんできます。当然トルコは、カスピ海=海という主張に同調するでしょう。

なんだか旗色の悪いイランですが、石油の産出だけでなく、紛争まで「第二のペルシャ湾」にならないように、平和的にカタをつけてほしいところですね。

 

●こちらも要チェック! 政治についての基本知識と基本用語
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