定年・退職のお金/老後の生活費と家計管理

老後の生活費としてかかるお金は29万円、貯蓄額2160万円【2021年版・動画でわかりやすく解説】

老後の不安のひとつはお金の準備ですね。老後の生活費として、貯金はいくらあったら安心できるのでしょう? 毎月いくら使う?老後資金の希望と現実とは?などをデータをもとにチェックしてみましょう。金融広報中央委員会が毎年実施している「家計の金融行動に関する世論調査(2020年)」によると、老後のひと月当たりの最低予想生活費の平均は29万円、年金支給時に最低準備しておく貯蓄残高の平均は2160万円ということです。

平田 浩章

執筆者:平田 浩章

ファミリーのためのお金入門ガイド

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セカンドライフに関わる年金や生活費、貯蓄などについて、どう考えているのか

老後の生活費がいくらかかるのか知りたい人は多いでしょう。そもそも老後は毎月いくら何にお金を使う?などの気になる老後のお金について解説していきます。

【老後にかかる生活費や考え方を動画でわかりやすく解説】



<目次>

老後の1カ月あたりの生活費と準備しておきたい貯蓄額、平均は?

最近ではすっかり忘れられた感がありますが、2019年6月に金融庁が「老後資金が2000万円不足する」と発表して多くのメディアで報じられたことを覚えているでしょうか?

当時、発表された概要は公的年金だけでは老後資金が足りないから、今から資産形成を自己責任でやってくださいというものでした。

その話題を取り扱うテレビ番組では、インタビューなどで答える人からは「今から2000万円を貯めるのは無理」「年金って100年安心プランだったんじゃないの?」「投資で資産形成をしなさいって言われても、リスクがあるし……」というようにネガティブな反応が支配的でした。

結局、この発表は撤回を余儀なくされましたが、ファイナンシャルプランナーである筆者からみると、至極、当たり前のことを発表していたという受け止めです。

ただ、今まで国も分かっていたのに、ひた隠しにして触れなかったことを、突然発表したことと、言葉足らずな点で概ね不評を買ったようですが、発表された内容については基本的に正しいことだったと考えています。

実際に多くの方がセカンドライフに関わる年金や生活費、貯蓄などについて、どう考えているのか見てみましょう。

金融広報中央委員会が毎年実施している「家計の金融行動に関する世論調査(2020年度)」で、老後の生活費や貯蓄に関して、アンケートによる全世代(20代~70歳以上)の平均額の回答が公表されています。

●老後のひと月当たり最低予想生活費 29万円
●年金支給時に最低準備しておく貯蓄残高 2160万円


実際にセカンドライフを過ごす60歳以上の方たちの回答を振り返ると1995年は27万円でした。その後2019年までの回答は25万円から29万円の間で推移しています。

1995年から約4半世紀経った2020年の回答もほとんど変わらない29万円という回答に驚きました。その間に生活費や消費税も上昇しているのに、最低予想生活費があまり変わっていないのは、あまり贅沢も言っていられないという、あきらめのような実感がこもった金額のようにも感じられます。
 

モデル世帯の年金額は平均22万496円

一方、厚生労働省が毎年発表している、モデル世帯における夫婦2人の年金額の2021年度の金額は1カ月当たり22万496円でした。皆さんが想定している最低生活費(27万円)を年金だけで賄うのは厳しそうです。
 

皆さんが老後に望む生活水準は?

現役世代の皆さんは老後のひと月当たりの生活費として、いくら使うか、いくら使いたいか考えてみたことはありますか? 金額で何万円という額は頭に浮かばないかもしれませんね。

イメージしやすくするには、現在の生活水準を維持したいか、支出を下げて我慢するか、今よりゆとり生活を送りたいかと考えてみるとよいですよ。

現在、生活費25万円でやりくりしている家計の場合、次のように考えると大まかな老後の生活水準がイメージできます。

・現状維持:老後資金も25万円使いたいということになります。
・ガマンする:20万円前後か、それ以下の生活費になるかもしれません。
・ゆとりある生活を望む:現状の生活費25万円にプラス5万円か10万円、それ以上を上乗せした生活水準です。
 

老後の生活費、費目別に見るといくら?

総務省の「家計調査(二人以上の世帯)」2021年2月分によると、無職世帯(セカンドライフ世帯が多く含まれます)の1カ月の平均支出は次のとおりです。

●支出総額 244,757円
<内訳>
・食費        64,715円
・住居        15,295円
・水道光熱  26,252円
・家具、家事 8,403円
・被服費等    4,088円
・保健医療  15,609円
・交通通信  23,065円
・教育       361円
・教養娯楽  16,377円
・その他   31,145円
(主な内訳-理美容、おこづかい、交際費、嗜好品、諸雑費など)
・税金 社会保険料 39,449円

老後の生活費について、ある程度イメージできたでしょうか? しかし、単純にはいきません。老後の生活に対する備えの大きな落とし穴である「物価上昇」を、常に頭の中に入れておきましょう。

では、引き続き物価上昇によってどれだけ、皆さんの老後の生活が影響を受けるかを見てみます。
 

物価上昇があなたの老後を脅かす

物価上昇について特に注意が必要な点は、老後を迎えるまでにどのぐらいの「時間(期間)」があるかということです。

例えば現在35歳の人で生活費が25万円の家計の場合だと、老後の年金の受給が始まる65歳になるまで30年間という時間があります。

老後も現在の生活水準を維持したい場合は、単純に考えると25万円あれば生活ができると考えてしまいそうですが、そうはなりません。

65歳までの間に、物やサービスの金額が値上がりしていくことを想定しておく必要があります。今、25万円で手に入るもろもろのものが、毎年2%(日銀が目標にしている物価上昇率)ずつ物価上昇していくと、いくらになっているでしょうか?
 

老後の生活費を電卓で計算してみよう

物価上昇した場合の老後の生活費は、皆さんの電卓で簡単に計算できます。やってみましょう。

毎年2%ずつ物価上昇するということは、物の値段が1.02倍になっていくということです。数字のキーで「1.02」と打って、「×(かける)」のボタンを2回続けてチョンチョンと叩きます。続けて金額を「25」と打ち、30年後なら「=(イコール)」ボタンを連続で30回たたきます。まとめると、1.02「×」「×」25「=」「=」「=」……30回です。

電卓に表示されている数字が、今25万円で買えるものが、今後2%ずつ値上がりしていった場合の30年後の値段です。私の電卓では45万2840円になっています(電卓の四捨五入などの設定で若干異なる場合があります)。

では、実際の物価の動向と、期待したい年金はどうでしょうか?
 

物価が上がっても、年金収入は増えない

政府と日本銀行は経済政策の一環として、物価を毎年2%ずつ上げると目標に掲げて取り組んでいます。そうなれば当然のごとく皆さんの生活費などの支出の負担が増えることとなります。

このように国の思惑どおりとなれば、消費税などと異なり、その後、物価は毎年2%ずつ上がっていくことになります。会社員世帯などでそれ以上に所得が増えていく家庭や企業は喜べるのですが、最も打撃を受けるのは年金生活者です。

今、25万円の生活費でやりくりしている家庭の場合で、将来の年金が25万円もらえるとしても、生活は成り立たないということになります。現在25万円で買えるものやサービスは、物価が2%ずつ上昇すれば30年後には約45万円。約半分しか買えないということになります。そうなった時に生活費を20万円削れるでしょうか? 相当に厳しいですね。
 

年金額を抑制する「マクロ経済スライド」って何?

物価が上がれば年金も上がるのでは?という気もしますが、2004年の年金改正法案の成立によって導入された「マクロ経済スライド」という仕組みが障害になりそうです。

このマクロ経済スライドというのは、仮に物価が2%ずつ上昇したとしても、年金はその上昇率に対して0.9%差し引いた1.1%しか上げないというものです。

物価が今後30年間2%ずつ上昇したとしたら、現在100万円のものの値段は単純計算で60%アップの160万円になります。年金は、30年後でも1.1%×30年で33%しか増えないことになり、100万円が133万円になります。物価160万円と年金133万円では生活が厳しくなるのは目に見えています。
 

時間を味方につけて老後に備えよう

物価上昇にさらされた現実と、私たちの希望する生活水準、多くを期待できない年金のバランスは厳しいものになりそうです。「老後はまだまだ先のこと、何とかなるさ」とは、言っていられそうもありませんね。でも大丈夫! まだまだ時間があります。

このように環境が変わっていくと、個人での対策も必要になってきます。家計の収支バランスの見直しと改善・金融商品の上手な活用による財産づくりや、人生全体を見渡して賢くマネーバランスをとっていけば、これからでも十分に準備可能です。着々とマネーの知恵をつけながら行動に移すことでがんばっていきましょう。

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