社会ニュース/よくわかる政治

大統領を支える強力わき役たち

長官とか副大統領、補佐官など最近よくテレビで見るアメリカ政府の高官たち。彼らの仕事と役割、日本の閣僚との違いについて解説してみました。

執筆者:辻 雅之


(2001年10月16日)

1ページ目 【なぜアメリカの「長官」はあんなに活動的にみえるのか?】
2ページ目 【大統領の次に偉い「副大統領」、その仕事は?】
【大統領の決断に重要な影響? 補佐官というポスト】
3ページ目 【ブッシュ陣営のすごさとブッシュ大統領】

【なぜアメリカの「長官」はあんなに活動的にみえるのか?】

とうとう始まってしまったアフガン空爆。そんななか、パウエル国務長官、ラムズフェルド国防長官が前後して関係各国を歴訪したというニュースが報じられました。

まあ日本の政治家もあっちこっち行っているのですが、やはり「歯痛で欠席」報道が伝えられる田中真紀子外相ら日本の閣僚にくらべると、堂々とした(ように見える)記者会見の様子といい、どうしても活動的に見えてしまいます。

日本の「××大臣」にあたるアメリカの「××長官」ですが、この両者には制度的に大きな違いがあります。

日本の首相は国会で指名されて決定しますが、これは実際には国会の与党(今でいうと自民党・公明党・保守党ですね)の代表者が首相になるということ。その代表者である首相が、大臣のほとんどを与党所属の国会議員から選んで任命します。このように国会と内閣の関係が密接な政治制度を「議院内閣制」といいます。

このようなことから、やはり首相や大臣たちはどうしても出身である与党の影響を受けがちです。あまりないことですが、内閣が与党の方針に従わず勝手なことをするならば、与党は自分たちが選んだ内閣を「不信任」して葬り去ることも制度的には可能です

いっぽう、アメリカの各長官は議会の議員からいっさい選ばれません。それどころか、与党(この場合大統領の出身党)の党員である必要もありません(反対党の党員であればさすがにむずかしいですが、それでもない可能性はない)。国民に選ばれた大統領が議会に関係なくおもに自分の判断で、長官を選ぶことができるのです。

そのため、各長官は大統領にのみ責任をとればよく、日本の大臣のように議会できびしく質問攻めにあったり与党の顔色を見る必要もないため、比較的のびのびというか、旺盛に活動することができるわけです。

そしてこのことは、アメリカ大統領と日本の首相のパーソナリティの違いにも現われているようにみえます。

日本の首相は与党や大臣たち、官僚などの意見をうまくまとめていく「調整型」のリーダーがつくことが特に近年多くなっています。亡くなった「人柄の小渕」首相や、村山元首相などは典型的な「調整型」首相といえるでしょう。森前首相も、世論の調整は不発でしたが、「滅私奉公」がモットーとあってやはり党内の調整はうまい人でした。

いっぽうアメリカの大統領は政策の幹の部分は大胆に決定し、しかし細かいところは部下に思いっきり任せるタイプ、「監督型」ともいえるようなリーダーが特に近年成功をおさめているといえます。この30年で大統領再選を果たしたレーガンとクリントンはいかにもこのタイプでしたし、ケネディもどちらかといえばこのタイプ。

まああくまで日米両国の「最近の傾向」の差なのですが、興味深い違いではあるような気がします。

アメリカの大統領と長官の話をしたところで、ニュースを見てると気になるその他の重要ポスト、「副大統領」と「補佐官」の話を次ページでしておきましょう。
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