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【連載】説得と交渉の営業心理学 第9回 初頭効果と親近効果

複数のデータを提示して説得する場合、データの提示順序によって説得効果が異なることが明らかになっている。初頭効果・親近効果と呼ばれるその心理法則を紹介しよう。

執筆者:鹿俣 之信

どの順番で見せる?

あなたの手元には、3種類のデータがある。どのデータも顧客を説得するためのものである。3つのデータのうち1つは説得効果が大きいデータで、残りの2つは説得効果が小さいデータである。ここであなたに質問。あなたは、どのような順番で顧客に資料を提示しますか?

効果小 → 効果小 → 効果大
効果大 → 効果小 → 効果小
効果小 → 効果大 → 効果小

私たちは、顧客に対してどのようなデータを示すかについて、強い関心を持っている。しかし、どのような順番でデータを提示するかについては関心が低いようである。もし、同じデータでも提示する順番によって説得力が増減するとしたら、信じられるだろうか?

強いデータは先か後か

これまでの心理学実験の結果によると、データの提示順序によって説得効果が異なることが明らかになっている。

複数のデータを示すとき、最初に示したデータが最も強く影響することを初頭効果(アンチクライマックス効果)という。逆に、最後に示したデータが最も強く影響することを親近効果(クライマックス効果)という。

初頭効果が現れるか親近効果が現れるかは、説得する相手によって異なる。諸研究の結果をまとめると、相手の関心が低い場合は初頭効果が現れ、相手の関心が高い場合は親近効果が現れると判断できる。

つまり、相手の関心が低い場合は、最初に強力なデータを示し、相手の興味を引きつけることが重要だということ。一方、相手の関心が高いときは、関連データを示して証拠を固めながら、最後に強力なデータを示すほうが説得力があるということである。

ちなみに、効果小 → 効果大 → 効果小という順序でデータを示すのは、最も説得効果が小さい。

セールスの現場では

セールスの現場では、顧客が関心を持っているか持っていないかを把握し、状況に応じてデータの提示順序を変えるのが望ましい。パワーポイントのプレゼンならば、スライドの表示順序を変更すればいい。印刷資料の場合は、初頭効果を狙う資料と、親近効果を狙う資料の二種類を用意しておけばよいだろう。


【連載】説得と交渉の営業心理学
第1回 二度目は断れない
第2回 拒否させて譲歩する
第3回 一面呈示と両面呈示
第4回 結論を言わない暗示的説得
第5回 手に入りにくいほど欲しくなる
第6回 他人の真似をする社会的証明
第7回 人を服従させる権威の力
第8回 連合によるイメージ操作
第9回 初頭効果と親近効果

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