転職のノウハウ/転職のノウハウ関連情報

予告手当のことご存じですか 解雇を巡る法律知識(後編)(2ページ目)

会社が従業員を解雇する場合、前もって予告しなければなりません。ただ、一定の決まりに従って手当を支払えば、即日解雇も可能です。後編では、この解雇予告と予告手当の問題を取り上げます。

執筆者:西村 吉郎

■解雇予告も予告手当もない場合

Q:予告手当なしの即日解雇は無効か

過日、会社から業務成績の不良を理由に即日解雇を通知されました。この場合、30日分の予告手当がもらえると聞きましたが、そのような手当はもらっていません。この場合、解雇そのものの無効を主張できるのでしょうか。

A 通告から30日が過ぎれば有効に
労働基準法は、使用者(会社)が従業員を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその予告をしなければならない、と定められています。この予告をせずに即日解雇する場合には、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。これが、予告手当と呼ばれるものです。

問題は、30日前の予告もなく、予告手当の支払いもないままに解雇を行った場合の効力はどうなのかということですが、労基法の定める規定に従っていない以上、この解雇は即時解雇としての効力がないのは明かです。しかしながら、最高裁判所は、この場合でも解雇の通告から30日を経過した時点、もしくは予告手当を支払った時点で、その解雇は有効に成立するという判決を下しています。

つまり、会社が即時解雇に固執するというのであれば、法的にみて即時解雇の要件を満たしていないのでその解雇は無効となりますが、即時解雇にこだわらないというのであれば、だまっていても通告から30日が過ぎてしまえば解雇は有効になってしまうのです。

あなたの場合、会社が即日解雇を申し渡したというのであれば、即日解雇そのものの無効を訴えることができます。会社が即日解雇を撤回して30日が過ぎるのを待つということになったら、その間はまだ社員としての身分は残っているのですから、当然のこととして給与の支払いを受ける権利があるということになるでしょう。

Q:勤務先が突然の廃業で予告手当がもらえない

最大の取引先倒産のあおりを受けて、勤務先の会社の社長が事業の廃止を決めました。社員は全員即日解雇となりましたが、予告手当は「不可抗力だから」との理由で支給されません。仕方ないとあきらめるしかないのでしょうか。

A 不可抗力にあたらず、予告手当支給義務がある
労働基準法は、使用者は、労働者を解雇しようとするときは、少なくとも30日前に予告するか、30日前に予告しないとき、すなわち即時解雇する場合は、30日分以上の平均賃金を予告手当として支払わなければならない、と定めています。突然に解雇されたのでは収入がストップし、生活に困ってしまいますから、少しでも困窮を和らげようとする趣旨です。

例外として、不可抗力により廃業する場合(会社全部が廃業する場合に限らず、複数の工場や営業所を廃止する場合を含む)のほか、解雇される従業員の側に、予告の利益を与えるに値しないほどの悪質で重大な懲戒行為がある場合で、労働基準監督署の承認を得ることによって、予告手当のない即日解雇が可能とされています。

ただし、この場合の不可抗力とは、地震などの自然災害や戦争などをいいます。あなたの会社のように、大口の取引先が倒産して新たな受注や売掛金回収の見込みが立たなくなるような事態に至った場合は、不可抗力にはあてはまりません。取引先を分散させるなどしてリスクを分散させる努力を、経営者として当然しておくべきだったといえるでしょう。このようなケースでは、使用者に対して予告手当の支払いを請求することができます。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 7
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます