家計を直撃する修繕積立金の値上げ。将来に備え、マンション区分所有者が今やるべきこと
現在、分譲マンションの多くが修繕積立金不足に陥っているといわれています。家計に大きなダメージとなる修繕積立金の値上げに向き合い、マンション所有者の悩みを解消するための対策を、マンショントレンド評論家の日下部さんに教えていただきました。
提供:住宅金融支援機構
お話をうかがった方

マンショントレンド評論家:日下部 理絵
第1回マンション管理士試験に合格。新築などマンショントレンドのほか、数多くの実務経験、調査から既存マンションの実態に精通する。テレビ・ラジオなどのメディア、講演会・セミナーでも活躍中。著書に『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』(ダイヤモンド社)、『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)など多数。
突然やってくる修繕積立金の値上げ

光熱費の高騰や食品などの物価高が続く昨今、家計が厳しくなっているのを感じます。さらに分譲マンションの住民に追い打ちをかけるのが、修繕積立金の値上げ。現状、大規模修繕工事の際に資金不足に陥るマンションは「3棟に1棟の割合」といわれています。
日下部さん(以下敬称略)「国土交通省で令和5年度のマンション総合調査を実施しており、まだ結果は公表されていませんが、最新のデータでは、資金不足に陥っているマンションの割合はもっと増えていると予想されます。資金が足りているはずのマンションでも、ふたを開けると足りなかった、ということも多くなるでしょう。
その理由のひとつは、工事費の値上げです。物価高に合わせて建材費が上がり、人件費もアップしました。また、働き方改革の影響などで工期が延びる傾向も。これまで一戸あたり100万円で実施できた大規模修繕が、今は150万円かかってしまうというイメージです」
資金不足に陥ったマンションは、修繕積立金を値上げせざるを得ない事態に……。
日下部「そもそも、修繕積立金が値上がりするものだと認識していない方も多いです。今のマンションは、新築当初から段階的に値上がりする計画になっている場合がほとんどです。その上、新築時の金額設定に余裕がないケースでは、元々の計画以上に上がってしまうこともあります。修繕積立金や管理費はいわば究極の固定費ですから、家計にダイレクトに響いてきます」
資金不足を、修繕積立金の値上げ以外で解消する方法はある?

では、マンションが資金不足に陥った場合、管理組合は修繕積立金の値上げ以外に取れる手段はあるのでしょうか。
日下部「いくつか方法はあるものの、どれも場合によってはリスクを伴います。
- 一時金を徴収する:想定外の出費のため経済的な負担が大きく、区分所有者すべてが応じられない可能性もある。
- 大規模修繕工事を延期する:マンションの状態によっては劣化を放置することになり、資産価値も下がる。
- 金融機関から借入れをする:心理的な抵抗感や、借入先の選定などの課題がある。また、修繕積立金額の見直しなどの対策をあわせて行わないと、返し終わった頃に次の修繕のタイミングになり再び借入れが必要となるなど、根本的な解決にならない。
他に、管理組合の収入を増やすプランとして、携帯電話の基地局となってアンテナを立てる、自動販売機を設置する、駐車場の空きスペースを居住者以外に外部貸しするなどがありますが、不足分をそれらで全て補うのは難しいでしょう」
修繕積立金をアップするしかなくても、大幅な値上げになってしまうと区分所有者の死活問題になりかねません。
日下部「そういう事態を避けるには、早々に住民の意識を変え、できるだけ早く準備を始めることです。平常時であれば、管理組合の懐具合に関心を持たない方も、値上げというピンチがやってくれば興味を持つはず。
物価高や人件費高騰のニュースが多い今は、修繕費が高くなることもイメージしやすい絶好の機会だと捉え、マンション住民が一丸となって積極的に大規模修繕の計画に関わっていきましょう」
安全性の高い金融商品や無料サービスを賢く活用する
大規模修繕への備えとして、修繕積立金を運用するという方法もありますが、いかがでしょうか。
日下部「修繕積立金を運用する際に最も重要なのが、【マンションすまい・る債】のように安全性の高い金融商品を選ぶことです」
【マンションすまい・る債】は、マンション管理組合のための利付き10年債。国の認可を受けて発行されているという安心感に加えて、利率の高さも魅力です。
日下部「【マンションすまい・る債】の今年度の利率は税引き前で0.5%です。50万円を2口購入した場合、10年間の利息は5万円。来るべき大規模修繕に備え、修繕積立金を効率よく運用できます」
手数料なしで、中途換金ができるのもうれしいポイントです。ぜひ上手に活用してください。
【マンションすまい・る債】の詳細はコチラ >>
日下部「どうしても修繕積立金が足りないときは、リフォーム融資を利用して必要な工事を実施するのもひとつの方法です。ですが、借入れをするのは不安ですし、借りる先も限られてきます」
そんなとき、マンション管理組合向けに特化したリフォームローンとして挙げられるのが、住宅金融支援機構の『マンション共有部分リフォーム融資』です。全期間固定金利で担保不要、低金利という好条件で、共有部分のリフォーム工事に対して融資を受けることができます。
日下部「例えば、機械式駐車場など毎月のコストが大きい設備は、融資を受けて早く撤去や改修をした方が、結果的に得になる場合があります。しっかりシミュレーションをした上で、工事に踏み切ることも検討してみましょう」
「マンション共用部分リフォーム融資」の詳細はコチラ >>
大規模修繕工事について、シミュレーションをする際に役立つのが『マンションライフサイクルシミュレーション』というサービスです。
これは、マンションの修繕時期や工事にかかる費用などを、WEB上でシミュレーションできるというもの。比較検討がしにくい項目も客観的なデータで見ることができ、利用は無料です。
日下部「管理会社が作成する長期修繕計画は、25~30年間のものが多いですが、40年後の状況までシミュレーションできます。修繕積立金の値上げに際して、データをもとに説明でき、合意形成にも役立つはずです」
「マンションライフサイクルシミュレーション」の詳細はコチラ >>
大規模修繕の時期に管理組合の役員になった場合は、何から手を付けていいのか戸惑うことも多いでしょう。そんなときの参考書となるのが、住宅金融支援機構がホームページ上で無料公開している『大規模修繕の手引き』です。
日下部「一目瞭然で大規模修繕の進め方がわかりますし、やるべきゴールが見えることで安心感が違います。よくここまでの内容を無料で公開できたなと思うほど本当によくまとめられているので、気軽に活用してみてはいかがでしょう。基礎的な知識が得られ、管理会社や施工会社との話し合いの手掛かりにもなります」
「大規模修繕の手引き」の詳細はコチラ >>
マンション区分所有者ひとりひとりができること

修繕積立金が不足する原因や対処法は、マンションごとに異なります。区分所有者も個々に経済状況やライフスタイルが違い、いろいろな意見を持つ方がいるはずです。
日下部「情報がないばかりに、解決策に対して合意が得られないマンションを多く見かけます。値上げというピンチは共通ですから、ぜひ住民同士で情報交換を活発にしてみてください。
- 自分の家の家計だと思って興味を持ち、積極的に関わる。
- 何か削減できるものやムダがないかチェックしてみる。
- マンション住民同士のコミュニケーションを深める。
ひとりひとりが管理組合にも興味を持ち、巻き込まれていくスタイルがお勧めです」
よいコミュニティができるほど、有効な対策が取りやすくなり、マンションの資産価値を守ることにもつながります。
日下部「住民同士で問題意識を共有し話し合うことで、お互いを知るいい機会にもなります。区分所有者全体でピンチをチャンスに変えて、大規模修繕を上手に乗り切ってください」