将来を見据えて備えておきたい!マンションの修繕積立金のこと

分譲マンションの所有者なら誰もが気になる「修繕積立金」。近年では修繕積立金が不足しているマンションが増えているというデータもあります。今回は、修繕積立金不足を防ぐ方法や、修繕計画について、マンション管理コンサルタントの土屋さんに、教えてもらいましょう。

提供:住宅金融支援機構

お話をうかがった方

土屋 輝之

さくら事務所 マンション管理コンサルタント:土屋 輝之

2003年さくら事務所に参画。不動産仲介から新築マンション販売センター長を経る間に、不動産売買及び 運用コンサルティング、マンション管理組合の運営コンサルティングなどを幅広く長年にわたって経験。 不動産、建築関連資格も数多く保持し、深い知識と経験を織り込んだコンサルティングで支持される不動産売買とマンション管理のスペシャリスト。

マンション住民を悩ます、修繕積立金の不足

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マンション共用部分の修繕工事に用いる修繕積立金。国土交通省の調査によると、現在、修繕積立金が、マンションの長期修繕計画に対して不足しているマンションは34.8%もあります。その原因には、どのようなものがあるのでしょうか。

土屋さん(以下敬称略)「新築に多いのが、購入者の負担額を安く見せるために修繕積立金の徴収額を低く設定しているケース。また、日本の多くの分譲マンションは、徴収額が段階的に上がる『段階増額積立方式』を採用していますが、当初の計画通りに徴収額の増額を実行できないと、修繕積立金が不足することになります」

そもそも、修繕積立金の徴収額の根拠となっているのは長期修繕計画ですが、この計画内容そのものが原因というケースも多くみられるそうです。

土屋「長期修繕計画の作成にあたり、マンション管理士や建築士などの専門家が必要という決まりはありません。私が過去にチェックした計画書の中には、必要な設備工事費が丸ごと抜けていたり、エレベーター交換工事費の見積り1億2000万円が1200万円となっていたり、ということもありました。

また、新築時に作られた長期修繕計画を、管理組合が一度も見直していないということも。近年は工事単価が上昇傾向にあり、当初の計画のままでは工事の資金が足りなくなってしまうため、定期的な見直しは必須と言えます」

また、修繕積立金は、定期的に実施する大規模修繕工事はもちろん、突発的な設備故障の修理費にも用いられます。

土屋「例えば、給水ポンプなどの日常生活に支障をきたす設備が故障した場合、すぐに修理しない訳にはいきません。設備故障が重なることによって、修繕積立金が不足する場合もあります。

このようにさまざまな原因から修繕積立金が不足した場合、修繕積立金の増額や一時金の徴収で対応できなければ、大規模修繕工事の実施のために、管理組合が金融機関から工事費を借り入れることになります」

国土交通省の調査によると、大規模修繕工事費を修繕積立金だけで行った割合は72.3%。修繕積立金の不足分を借り入れるケース自体は約3割と、珍しくありません。

土屋「広さや築年数などが同じであれば、修繕積立金が十分に積み立てられていなかったために今後借り入れが必要になるマンションと、修繕積立金が十分であったために借り入れが不要なマンションでは、購入後に修繕積立金が大幅に増額される可能性や管理組合の運営に関する不安などから、後者が選ばれやすくなるのではないでしょうか」

※平成30年度のマンション総合調査

修繕積立金不足を避ける方法とは

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マンション生活の安全性や快適性を保ち、資産価値を損ねないためにも、修繕積立金不足は避けたいもの。では一体どうすればいいのでしょうか。

土屋「長期修繕計画の定期的な見直しである程度は避けることができます。しかし、管理組合と管理会社が結ぶ『管理委託契約』では、管理会社による長期修繕計画の見直しのための費用が含まれないことが多く、この場合は管理組合が新たに予算を設けて計画を見直す必要があります」

国土交通省が定めた『マンション管理計画認定制度』では、7年程度ごとの長期修繕計画の見直しが推奨されています。あわせて、できるだけ早いタイミングで修繕積立金の徴収額を見直すことも重要だとか。

土屋「前述の『段階増額積立方式』は、時期が来れば自動的に修繕積立金の徴収額が値上がりするように思われがちですが、実際には理事会が管理組合総会に議案を提出し、承認されるという手続きが必要です。

修繕積立金の値上げは重大な決定事項であり、自分が理事のときはなるべく避けたいなと思う方もいるかもしれません。しかし、値上げを先送りすると不足分が増え、結果的に値上げ幅が大きくなってしまうと、ますます値上げが難しくなる悪循環に陥ります。

管理組合の総会で理由を丁寧に説明すれば、マンション居住者の理解を得てスムーズに値上げを可決することができます。まずは、理事会も管理組合も自分事として管理組合運営を考えていくことが最も大切です」

2022年4月からスタートした「マンション管理計画認定制度」を取得することも、よりよいマンション管理のために役立つのだとか。この認定を受けたマンションの市場評価向上も期待されています。

修繕金の計画的な積立をサポートする【マンションすまい・る債】

多くの管理組合では、所有者から徴収した修繕積立金を普通預金や定期預金に預けていますが、近頃は運用に取り組む管理組合が増えているのだとか。

土屋「修繕積立金はその性質上、運用先の選定は慎重に行う必要があります。その性質を踏まえ、私が携わった管理組合では住宅金融支援機構の【マンションすまい・る債】を採用しているケースが多いです。長期修繕計画や修繕積立金に対して意識が高い管理組合ほど採用されていると感じています」

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【マンションすまい・る債】は、住宅金融支援機構が国の認可を受けて、管理組合向けに発行する利付10年債です。1口50万円から購入でき、最大10回継続して積立が可能。中途換金時に手数料がかからない点も魅力です。

定期的に利息が支払われるだけでなく、マンション共用部分リフォーム融資を利用するときに金利が年0.2%引下げられるなどの特典も。募集スケジュールが決まっており、2023年度は4/17(月)~10/13(金)までが応募受付期間です。

土屋「【マンションすまい・る債】の利率は、昨年度まではどのマンションでも一律でしたが、2023年度から通常は0.475%、マンション管理計画認定を受けていれば0.525%と利率が上乗せされます。このインセンティブによって、修繕積立金の運用商品として選ばれる優先度がさらにアップするでしょう」

もともと十分有利といえる設定ですが、さらに上乗せがあるとなれば見逃せません。

現在受付中!【マンションすまい・る債】の詳細はコチラ >>

管理組合が活用したい、住宅金融支援機構のサービス・商品

管理組合の活動をサポートするために、住宅金融支援機構では他にもサービス・商品を用意しています。

『マンション共用部分リフォーム融資』は、マンション管理組合が実施する共用部分のリフォーム工事を対象とする融資です。専門家による調査設計の実施、耐震診断の実施、長期修繕計画の作成等に要する費用のみの場合も融資の対象となります。

融資金利は全期間固定のため返済計画が立てやすく、管理組合の合意形成がしやすくなります。また、耐震改修工事や浸水対策工事、省エネルギー対策工事の実施、マンション管理計画認定の取得、【マンションすまい・る債】の併用などで、融資金利が最大年0.6%引き下げられます。

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『マンション共用部分リフォーム融資』を利用するケースとしては、先ほどお話にあったように、工事費の高騰により修繕積立金だけでは資金が足りなくなってしまった場合や、修繕積立金の値上げを予定通りにできなかった場合などが想定されます。

土屋「例えば次のような場合にも利用が考えられます。ひとつは、施工不良などの不測の事態が発覚して大規模修繕工事のときに予定していた工事費では足りずに融資を受けるケース。分譲時の施工会社や工事会社に非があれば、裁判・調停を経て、受け取った賠償金は繰り上げ返済に充てられます。

もうひとつは、次回以降の大規模修繕工事を考慮した追加工事のための工事費を借り入れるケースです。例えば、今回の大規模修繕のときに追加で工事すれば1000万円で済むが、改めて工事すれば3000万円必要になるような場合。今回融資を受けてまとめて工事をした方が、長期的には費用を抑えられます」

「マンション共用部分リフォーム融資」の詳細はコチラ >>

『マンションライフサイクルシミュレーション』は、修繕工事の費用やタイミングを、パソコン上から無料でシミュレーションできるサービスです。自分の住んでいるマンションと規模や築年数が同じマンションの平均的な大規模修繕工事費を把握したり、今後40年間の修繕積立金の過不足の試算、融資を利用した場合の資金計画の比較などが無料で行えます。

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土屋「『マンションライフサイクルシミュレーション』のシミュレーション結果には、近年の工事費相場も反映されているため、専門家の私が見ても精度が高くしっかりした内容です。

もし、今の大規模修繕工事の計画に不安があるなら、『マンションライフサイクルシミュレーション』を試してみてください。シミュレーション結果が現在の計画と大差なければ、今の管理会社に改めて相談して不安を解消するとよいでしょう。もし大きく乖離していたら、専門家に費用を払ってじっくりと相談することをおすすめします」

「マンションライフサイクルシミュレーション」の詳細はコチラ >>

マンション所有者は管理組合の一員であるという意識を持つこと

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ここまで、修繕積立金が不足する理由や、不足を避けるための方法を紹介しました。もし、現在所有しているマンションの修繕積立金が足りないことが判明したら、どう対応すればよいのでしょう。

土屋「まずは不足額を正確に把握すること。そうしないと、いつ、何をするべきなのか見当がつきません。管理組合や理事会でできれば築60年までの長期修繕計画を立て直し、不足を解消するには毎月いくら徴収すればよいのかを算出しましょう。

長期修繕計画の内容も必ずチェックしてください。近年、耐久性の高い材料や工事方法の進化により、修繕周期を延ばすことも可能になっています。60年スパンで考えると、大規模修繕の周期を12年とした場合、工事の実施回数は5回ですが、周期を18年に延ばすことができれば工事の実施回数は3回となります。この場合、60年間に必要な修繕積立金を約15%削減できるというデータもあります。

とはいえ、修繕積立金不足に特効薬はありません。マンションの資産価値を維持するために住民一人一人が現実を直視し、管理組合や理事会が臆さずに話し合い解決へと進めてください」

修繕積立金不足に陥らないために、理事会は常にアクティブに活動し、所有者は管理組合の一員であるという意識を持つことが大切なのだとか。将来を見据えてマンションの修繕積立金を計画的に積み立てつつ、賢く運用やサポートを活用するのがおすすめです。

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