中古住宅購入の魅力と、事前に知っておきたいお得な制度
不動産の価格が高騰している今、中古住宅を選ぶ人も増えており、その魅力が改めて見直されています。今回は、中古住宅を購入する前に知っておきたいことについて、住まいの性能・安全に詳しい一級建築士の井上恵子さんに聞きました。
提供:住宅金融支援機構
お話をうかがった方

All About『中古住宅・中古一戸建て』『住まいの性能・安全』ガイド:井上 恵子
安心・安全な住まいを見極め、女性視点でサポートする一級建築士。マンション設計や、性能評価申請にも多く携わる。設計事務所設立後は、子育ての経験を生かし保育園の設計なども行う。その他、戸建て・マンション購入のセミナー講師や、新聞・雑誌のコラムなどで活躍。著書多数。
改めて見直されている中古住宅購入の魅力

在宅勤務の定着やコロナ禍をきっかけに、家族のライフスタイルにより合う住まいを求め、住宅の購入やリフォームを検討する人が増えています。検討時に気になるのは、住宅価格の推移でしょう。
井上恵子さん(※以下敬称略)「現在、建築に使う木材や鉄鋼などの建材や、住宅設備価格の値上げの影響を受け、新築住宅では価格の高騰が続いています。それらの値上げにより当初の予算を大幅にオーバーしてしまったり、資材の在庫不足で工事が止まってしまったりするケースもあるようです。戸建て住宅でもマンションでも、住宅価格が高騰したため、購入できる層が限られている印象もあります。
その点、中古住宅は新築住宅と比べると入手がしやすいでしょう。新築から中古へシフトしたことで、もし住宅購入の予算が余れば、より希望に近づけるようなリフォームもできます。リフォームでも建材は用いますが、新築ほど多くの建材や設備は使わないため、新築と比べ建材価格の値上げによる影響は受けにくいでしょう」
中古住宅を選ぶメリットは、手頃な価格のほかに、どのような点があるのでしょうか。
井上「立地にこだわる人にとっても、中古住宅は魅力だと思います。どうしてもこのエリアに住みたいというとき、新築よりも中古の方が物件を見つけやすくなります。さらに、既に住宅が建っているので、建物自体とその周辺環境、マンションの場合は管理状況などを事前に確認したうえで購入できるのも、中古住宅のメリットと言えるでしょう」
中古住宅の購入で使えるお得な制度は?

中古住宅の購入時にも、新築住宅と同じように“お得な制度”は利用できます。性能がよい中古住宅ならさらにお得になるケースも。ここでは、主な減税制度をご紹介しましょう。
■住宅ローン減税
住宅ローンを利用して一定の要件を満たす中古住宅を購入した時に利用できます。控除期間は10年間で、控除率は年末ローン残高の0.7%。借入限度額は、一定の省エネ性能を満たすなどの認定住宅等が3000万円、それ以外の住宅が2000万円です。
■住宅取得資金など贈与の特例
父母や祖父母などから住宅購入資金の贈与を受けたときに、一定の要件を満たせば贈与税が非課税になる制度です。非課税枠は、耐震・省エネ・バリアフリーなどの一定基準を満たす質の高い住宅は1000万円、それ以外の住宅は500万円です。
■登録免許税の軽減
登録免許税とは、不動産を登記するときにかかる税金です。中古住宅の取得には所有権移転登記税が必要ですが、床面積の最低基準や新耐震基準を満たしているなど、一定の条件をクリアしていれば、「建物」の登録免許税が軽減されます。一般住宅の場合は税率が2.0%から0.3%に軽減され、大規模な修繕工事、耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修など、一定の要件に該当するリフォーム工事が行われた買取再販住宅を購入した場合は2.0%から0.1%に軽減されます。
なお、これらの減税制度は購入年度により内容が変わるため、利用を検討する際に詳細を確認しましょう。
さらに、自治体によっては、購入時に一定の要件を満たせば補助金が受けられるケースもあります。住みたいエリアが決まったら、一度自治体のホームページをチェックすると良いでしょう。
中古住宅を購入する前に確認したいこと

魅力の多い中古住宅ですが、購入をする前には、新築住宅とは異なる視点で確認すべきことがあります。
井上「必ず現地に足を運び、外観や室内を目視でチェックしましょう。特にチェックしたいのは、室内のシミやカビの有無で、もし有れば雨漏りや湿気により断熱材などが濡れてしまい、建物が傷んでいる可能性があります。
あと、住宅履歴情報も確認したいですね。住宅履歴情報とは、新築時の図面や建築確認の書類、建築後の修繕やリフォームの実施状況などの記録を保存、蓄積したものです。
建築確認の書類には建築確認申請を取った年月が記載されているため、耐震性の程度がある程度分かります。ちなみに、昭和56年6月1日以降に建築確認申請を取得した住宅は新耐震基準となり、他の条件も満たせば住宅ローン減税を利用できます」
中古住宅の場合、リフォーム前提で購入するケースもあるでしょう。この場合、何を確認しておくと良いのでしょうか。
井上「もし、戸建てで間取りを変えるようなリフォームを考えているなら、工法を確認してください。例えば、木造在来工法は壁や窓の位置を変えやすいのですが、壁で建物を支える2×4工法では壁や窓の位置を動かせない場合があります。
マンションなら、不動産会社を通じて管理規約を入手しましょう。管理規約にはリフォームの手続きに関することや、マンション独自のルール、例えば分電盤やガス給湯器の上限サイズ、使用できる内装材の種類などが記載されています」
【フラット35】は、中古住宅の購入にも利用できる
新築同様、中古住宅も住宅ローンを利用して購入するケースは多いでしょう。住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する【フラット35】は、中古住宅の購入でも利用が可能です。
井上「【フラット35】は、中古住宅を購入するときはもちろん、中古住宅購入と合わせてリフォームをするときにも利用できます。条件が合えば金利の引下げが受けられるので、ローンの利用を検討している人は、まずは引下げ条件を確認されることをおすすめします」
【フラット35】について詳しく見る >>
金利引下げメニューは幅広く用意、上手に活用を
【フラット35】の金利引下げメニューは、国が目指している高品質な中古住宅の増加と、中古住宅の流通促進を支援するために幅広く用意されています。
例えば、【フラット35】Sは、省エネルギー性、耐震性などを備えた質の高い住宅を取得する場合に利用でき、性能に応じて金利の引下げ期間と引下げ幅が決められています。
【フラット35】維持保全型は、維持保全・維持管理に配慮した住宅や、既存住宅の流通に資する住宅を取得する場合に、金利の引下げが受けられます。中古住宅の場合、インスペクション実施住宅や既存住宅売買瑕疵保険付保住宅、安心R住宅などが対象となります。
【フラット35】リノベは、中古住宅の購入とあわせて、一定の要件を満たすリフォームを実施することで金利引下げが受けられます。引下げ幅は、リフォーム工事費や工事内容によって変わります。
井上「とても興味深いのが、【フラット35】地域連携型です。地方公共団体と住宅金融支援機構が連携し、子育て世帯や地方移住者等が住宅を取得する場合に、地方公共団体の補助金の交付とあわせて【フラット35】の借入金利が一定期間引き下げられるというものです。
各団体によって要件は異なりますが、要件を満たせば補助金がもらえるうえに【フラット35】の金利引下げも受けられるお得なメニューです。住みたいエリアが決まっているなら、【フラット35】地域連携型のWEBサイトをチェックして、検討している団体が連携しているか確認しましょう」
分からないことや不安なことは相談し、納得して購入しよう

雨風をしのぎ、人の暮らしを支える住宅は、年数を経ることで不具合が生じやすいものです。
井上「【フラット35】を利用する場合、技術基準を満たしているという適合証明が必要になるため、検査機関か適合証明技術者に基準のチェックを依頼する必要があります。
【フラット35】の物件検査に合格する中古住宅であれば、一定以上の品質を備えていると考えられますが、中古住宅ならではの不安として、住み始めてから大きな不具合が発生したらどうしよう……ということもあるかと思います。そのような不安を感じる方は、既存住宅売買瑕疵保険に加入している物件を選ぶことをご検討ください。
既存住宅売買瑕疵保険とは、中古住宅の検査と保証がセットになった保険制度で、売買後に構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分に瑕疵が見つかった場合、補修費用等の保険金が支払われるというものです。
既存住宅売買瑕疵保険に加入している中古物件であれば、公益財団法人である『住宅リフォーム・紛争処理センター』で、住宅トラブルの「専門家相談」や「紛争処理」などのサービスが受けられます。さらに【フラット35】維持保全型の利用も可能です。
住宅は人生で高いお買い物のひとつです。不安や分からないことがあれば中古住宅の販売会社や専門家に相談し、納得したうえで購入しましょう」