住み続けるほど大きな差!「買った後のお金」から考える家選び

人生で最も大きな買い物ともいわれるマイホーム。買った後も住宅ローンをはじめ、税金、光熱費、マンションなら管理費・修繕積立金など、さまざまなお金を定期的に払っていく必要があります。ここでは住宅購入のお金に詳しい大島浩之さんの話をもとに、家を買った後にかかるお金の代表例と、それらの費用を大きく減らせる住宅選びのポイントを考えてみましょう。

提供:国土交通省

お話をうかがった方

大島 浩之

「住宅ローン・住宅購入のお金」ガイド:大島 浩之

住宅ローンを切り口に、ライフプランニングを提案するCFP®。上智大学文学部新聞学科卒業後、大手ハウスメーカーや不動産業者などを経て、現在では、FP試験の講師を務める傍ら、住宅ローンを切り口に、住宅購入をはじめとしたライフプランニングの相談を受ける。

意外とかかる⁉ 住宅購入後に必要なお金

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マイホームを購入し住宅ローンの返済が始まると、「それ以外にもあれこれお金が必要になることを実感するはず」と大島さんは言います。

「マンションなら管理費、修繕積立金、駐車場代が毎月かかるお金の代表例。管理費は管理人の人件費、管理会社への委託料、設備の点検費・清掃費、共用部分の光熱費などが含まれます。また駐車場を使わない人でも、機械式駐車場があれば平置き駐車場と比べてメンテナンス費用が高額になり、管理費に影響してきます」

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修繕積立金はマンションの外壁塗装の塗り替え、給排水管・照明器具・エレベーターといった設備のメンテナンスなどの費用に充てられ、20年、30年といった長期的観点で作られた修繕計画をもとに、月々の修繕積立金を払っていきます。

「ただ、修繕積立金は段階的に増額する予定で計画するところも多く、その場合は5年後、10年後など決められた時期の増額は避けられません。当初の金額だけ考えていると家計のやりくりが難しくなるので、将来の増額も考慮しておきましょう」

一方、戸建てでは管理費や修繕積立金を払うことはありません。その代わりに建物外壁や庭の清掃を自分または業者に依頼して行うほか、ハウスメーカーが推奨する時期を参考に、キッチン・バス・トイレなど水回りの設備交換、窓やドアなどの修繕、交換、屋根・外壁の修繕などのメンテナンスを定期的に行う必要があります。また、防犯カメラなどセキュリティ設備の設置費用も自己負担です。

「メンテナンスの目安は10年から15年おきが多いのですが、数十万円から100万円超とまとまった費用が必要です。これらが定期的に、場合によっては立て続けにかかるので、準備のため毎月1、2万円を積み立てておく方がいいでしょう」

忘れず手続き! 家計負担を減らす軽減措置

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このような購入後にかかる費用のうち、大島さんによれば「マイホーム取得を支援するため、固定資産税が新築戸建て住宅で3年間、新築マンションで5年間は半額に減額される特別措置が図られています」とのこと。

「加えて住宅ローン減税で、年末のローン残高の1%が所得税から10年間控除されるため(控除しきれない場合は一部翌年の住民税から控除)、所得税等の負担が軽減されます。控除の適用条件は床面積が50平方メートル以上、借入期間が10年以上などで、多くの新築住宅・マンションは該当すると思います」

住宅ローン減税は消費税率引上げに対する措置で、2020年12月までに居住した場合は控除期間が13年間に延長されます。なお、国が定める省エネ基準を満たした「省エネ住宅」なら、こうした支援制度がさらに有利な条件で利用できます。

・固定資産税の減額措置
減額期間を新築戸建て住宅3年間→5年間、新築マンション5年間→7年間とそれぞれ2年間延長

・住宅ローン減税
控除対象となる住宅ローンの残高上限4000万円→5000万円に拡充

ただ、これらの減額措置や減税を受けるためには、申し込みや確定申告などの手続きが必要です。あらかじめ必要な手続きを調べ、忘れないように対応しましょう。

光熱費が年間約6万円※3も減る!? 家計にやさしい省エネ住宅

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省エネ住宅の特色は断熱性などに優れ、快適で健康的な暮らしや経済性・耐久性の向上に役立つこと。このため「前述の支援制度の拡充に加え、マイホーム購入後のさまざまな費用の負担軽減により、ライフサイクルコストの面で優位性があると考えています」と大島さんは期待を寄せます。

「ライフサイクルコストとは、一般的に製品の製造・利用・廃棄まで含めたトータルのコストを指します。ただ、マイホーム購入で考えるなら、住宅ローンの返済総額や諸費用をはじめ住んでいる間に必要な費用(ランニングコストも含む)の総計と、売却時の資産価値との差額と捉えればいいでしょう」

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省エネ住宅は一般の物件に比べて割高な傾向が見られますが、購入時・購入後の各種支援制度が充実しており、住んでいる間に必要な費用の軽減などが期待できます。

「何より暮らしの快適さ、家族全員の健康にも役立つのですから、長く住むことを考えるなら省エネ住宅は有力な選択肢の一つになると思います」

法改正で国も後押し!将来的な資産価値はどうなる?

省エネ住宅は今後ますます増えるだろうという大島さん。「2021年4月からは、建築士から建築主に対する省エネ性能の説明義務制度も始まる予定です」と続けます。

これは2019年5月に公布された建築物省エネ法の改正によるもので、検討中の住宅が省エネ基準に適合するかどうか、適合しない場合は省エネ性能の確保にどのような措置が必要か、などの説明が義務化※5されます。

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「国がさまざまな支援制度や説明義務制度を導入し、省エネ住宅の普及を推進しているのは、2015年のCOP21(気候変動枠組条約 第21回締約国会議)で採択されたパリ協定を踏まえ、国際社会との約束事として、2030年に向けた温室効果ガスの削減目標の達成を目指しているからです」

さらに国の未来投資戦略2017では、「2020年の新築住宅の省エネ基準適合率を100%とし、ハウスメーカー等の新築注文戸建住宅の過半数をネット・ゼロ・エネルギー・ハウス化する」という具体的な目標を設定しており、今後はZEH※4をはじめとした省エネ住宅の普及が加速すると見込まれます

「社会全体でサステナビリティーが課題となった今、『エネルギー資源の無駄遣いを防ぎ、温室効果ガスの排出を抑制し、地球環境に優しい』という視点も住宅選びに必要でしょう。さまざまな支援制度で省エネ住宅の購入時・購入後の負担が軽減されている現状は、そうした選択の後押しをしてくれるはずです。また、将来的な資産価値という点でも、適切な評価が期待できるでしょう


※1【省エネ基準への適合のための追加コスト等の試算例】国土交通省資料より 
◆計算モデルは、木造戸建住宅(6地域)を想定。新築時の掛かり増し費用は、H4年省エネ基準(断熱等級3)に適合している住宅(複層ガラス)とH28年省エネ基準(断熱等級4)に適合している住宅との差額
※2【住宅ストックの断熱性能と住宅の省エネ改修に要する費用】国土交通省資料より
◆省エネ改修に要する費用は、H4年省エネ基準(断熱等級3)に適合している住宅をH28年省エネ基準(断熱等級4)に適合させるための費用
※3 住団連調べ。太陽光発電による売電は含みません。各数値はシミュレーション用に試算したもので、実際の光熱費を保証するものではありません。
・計算モデルは事業主判断基準モデルを使用
・光熱費シミュレーションは株式会社インテグラルのホームズ君「省エネ診断エキスパート」にて計算
・建設地について、温暖地は6地域の東京都23区、寒冷地は2地域の北海道札幌市を想定
・それぞれの断熱仕様は、「これまでの住宅」はH4年基準相当、「一般的な省エネ住宅」はH28年基準相当、「高度な省エネ住宅」はZEH基準相当を想定
・光熱費単価は、電気:26円/kWh、ガス:180円/㎥、灯油:100円/ℓにて計算
・ZEH基準相当の太陽光発電設備は、温暖地、寒冷地ともに4kWにて計算
※4 ZEH(ゼッチ)……ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称。外皮の断熱性能等の大幅な向上などで室内の快適性と大幅な省エネルギー性を両立させ、再生可能エネルギーの導入により、年間の1次エネルギー消費量の収支がゼロとなることを目指した住宅
※5 分譲住宅・賃貸住宅の売主・仲介事業者等に対して購入者・賃借人への説明を義務づけるものではありません。