早めに知るべき!住宅購入の際に説明義務があるほど重要なこと

住む立地や建物の状況によっては命や健康に関わる可能性もあるため、住宅購入は慎重に検討したいもの。不動産や注文住宅の契約前には、説明が義務化されていることもありますが、重要なことを事前に知っておくにこしたことはありません。そこで、不動産取引などに詳しい田中謙次さんに、「事前に知っておくべき重要なこと」を聞きました。家族のため未来のため、安心の住まい選びをしましょう。

提供:国土交通省

お話をうかがった方

田中 謙次

「宅建試験」ガイド:田中 謙次

建試験を知りつくす不動産取引法務の専門家。株式会社Kenビジネススクール代表取締役社長。2004年に設立した同社は登録講習、登録実務講習の実施機関として、国土交通大臣の登録を受けている。パーフェクト賃貸不動産経営管理士、うかるぞ宅建士シリーズ、サクッとうかる宅建士シリーズ他多数の書籍を執筆。企業研修の講師としても幅広く活躍している。

契約前に必ずある「重要事項説明」とは?

paragraph_0_img_0

田中さん(以下省略)「土地やマンション、既築の戸建住宅などの不動産を取り引きする際、不動産会社が行わなくてはならないものに「重要事項説明」というものがあります。宅地建物取引業法(以下、宅建業法)の定めにより、売買契約を行う前に、宅地宅建取引士が、内容を記載した書面に記名・押印し、書面を交付したうえで口頭説明を行うことが義務付けられています。実際には、契約書を結ぶ前に1ヵ月ほどかけて、双方で項目・内容を確認しながら書類作成を進めていくことが多いようです」

「一方、新築で注文住宅を建てる場合には、ハウスメーカーや設計事務所の建築士が「重要事項説明」を行うことになっています。不動産取り引きと注文住宅建築の場合では、項目・内容が異なりますが、いずれも住宅購入が高額な取引であることを踏まえて、トラブルの回避や購入者の不利益にならないよう法令で定められたものです。当然、説明することが目的ではなく、理解してもらうことが目的です。ですから購入者としても内容をしっかり理解する必要があります」

契約書を結ぶ前から徐々に説明が始まるようですが、もっと早い段階で知っておくにこしたことはありません。後悔しない住宅購入に向けて、どのような内容なのか事前に見ておきましょう。

災害リスクなどもチェック!重要事項説明のポイント

paragraph_1_img_0

【土地・不動産】
「土地・不動産取り引きの重要事項は、大きく「物件の状況」「権利関係」「契約条件(お金)」から成り立っています(下記参照)。法令上の制限や契約条件など、どれも重要な内容ばかりですが、ここで取り上げたいのは「土砂災害警戒区域内か否か」の事項です」

「たとえば、災害のリスクについて、土砂災害や津波災害の警戒区域にある場合は説明対象となっていますが、「洪水・浸水想定区域」は対象外。自身でも自治体のハザードマップなどを確認する必要があります」

「一方、建物の状態については、2018年から不動産会社にホームインスペクション(住宅診断)の説明と、検査事業者の斡旋可否を告知することが義務化されました。ホームインスペクションとは、資格を有する専門家が、住宅の劣化状況や欠陥の有無などを調査し、改修の時期や箇所、その費用などを調査・助言すること。インスペクションが実施済みであれば、不動産会社は重要事項説明の際に調査結果を伝えなくてはなりません」

「もし何の説明もされないとしたら、建物に不利な条件のある可能性や、その不動産会社自体の信頼性が疑わしいということにもなりかねません。このほか、耐震診断や住宅性能評価の有無、アスベスト使用調査の有無など、「長く、安心して、健康に、住み続けられる家かどうか」を見極めるうえでも、ぜひ事前に確認しておいてほしい項目です」

paragraph_2_img_0

※国土交通省「重要事項説明理解のためのチェックリストイメージ」をもとに筆者作成
※重要事項説明で確認すべき事項をすべて網羅しているわけではありません

【注文住宅】
新築注文住宅の場合は、不動産取り引きではなく工事請負契約となるため、建築士法に基づいて事前に説明すべき重要事項が定められています。

・作成する設計図書の種類
・工事と設計図書との照合の方法
・工事管理の実施と状況に関する報告の方法
・報酬の額及び支払の時期
・契約の解除に関する事項 等
※「重要事項説明及び書面交付について」新・建築士制度普及協会より


家を建てるときに「省エネ性能」に関する説明も義務化!?

さらに、建築物省エネ法の改正により、建築士から建築主への省エネ性能の説明義務制度が始まる予定です(2021年4月より)。

これは、新築で建てる注文住宅などを対象に、検討中の住宅が「省エネ基準に適合しているかどうか」と「適合しない場合は、省エネ性能を確保するためにどのような措置が必要か」などの説明が、建築士に義務付けられる※1というものです。

背景には地球温暖化への対策が急務であることも関係しており、国としても様々な方針を打ち出しています。例えば、『エネルギー基本計画』の中で、2020年までにハウスメーカー等が新築する注文住宅の半数以上でZEH※2の実現を目指すとしています。

それだけではありません。重要事項説明の内容と関連する部分もありますが、『長く安心して健康に暮らす』ために、省エネ基準に適合した家(=省エネ住宅)かどうかはとても大切なのです。

安心安全で家計にもやさしい省エネ住宅

paragraph_4_img_0

では『長く安心して健康に暮らす』うえで、省エネ住宅にはどのようなメリットがあるのでしょうか。それは、災害や健康、そしてお金の面など、じつにさまざまです。

●災害に強い
万が一の災害でライフラインが止まったとしても、断熱性能が高い省エネ住宅は、少ないエネルギーで比較的快適な室温を保つことができます。また、太陽光発電や蓄電池などの自家発電を備えたZEH※2であれば、つくっておいた電力を使えるので安心です。

●家族の健康を守る
高断熱の住まいは、寒暖差による体への負担を軽減し、ヒートショックなどのリスクを抑えたり、アレルギーの原因となるカビやダニを抑制しやすくなります。

●家計にもやさしい
買う時や買った後も家計にうれしいことがたくさん。例えば、省エネ住宅を購入する場合、ローン減税や金利優遇、固定資産税の優遇など税制面でのメリットもあります。また、省エネだからこそ光熱費などのランニングコストが抑えられます※3。さらに、もし売却する場合にも性能評価が高ければ、有利に働く可能性が高いでしょう。

paragraph_5_img_0

住宅購入において、説明義務があることはそれだけ重要とされる理由があります。今後、ますますトレンドになっていくであろう省エネ住宅についても、事前に理解を深めて、安心安全で長く住める家づくりを目指してください」

重要事項説明の内容や省エネ住宅について、事前に知っておくことはこれから住宅購入を検討する上でとても大切なこと。早めの情報収集を心掛け、住まい選びを成功させましょう。


※1 分譲住宅・賃貸住宅の売主・仲介事業者等に対して購入者・賃借人への説明を義務づけるものではありません。
※2 ZEH(ゼッチ)……ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称。外皮の断熱性能等の大幅な向上などで室内の快適性と大幅な省エネルギー性を両立させ、再生可能エネルギーの導入により、年間の1次エネルギー消費量の収支がゼロとなることを目指した住宅
※3 住団連調べ。太陽光発電による売電は含みません。各数値はシミュレーション用に試算したもので、実際の光熱費を保証するものではありません。
・計算モデルは事業主判断基準モデルを使用
・光熱費シミュレーションは株式会社インテグラルのホームズ君「省エネ診断エキスパート」にて計算
・建設地について、温暖地は 6 地域の東京都 23 区、寒冷地は 2 地域の北海道札幌市を想定
・それぞれの断熱仕様は、「これまでの住宅」は H4 年基準相当、「一般的な省エネ住宅」は H28 年基準相当、「高度な省エネ住宅」は ZEH 基準相当を想定
・光熱費単価は、電気:26 円 /kWh、ガス:180 円 /㎥、灯油:100 円 /ℓにて計算
・ZEH 基準相当の太陽光発電設備は、温暖地、寒冷地ともに 4kW にて計算