グループ内再編はじまる!
9月20日、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)は、過払い金返還で業績の下方修正を迫られる三菱UFJニコスに対して、第三者割当増資を引き受けるかわりに、その上場を廃止し完全子会社化すると発表しました。同時にニコスの信販部門をジャックスに譲渡し、さらにニコスの従業員6600人の4割に当たる2890人を今後3年かけて削減する予定です。「いよいよ、MUFGのニコス(旧日本信販)解体が始まった」という声が高まっています。3大メガバンクによる「規模の拡大」が進む!
クレジット業界はここ4~5年、3大メガバンクを軸とした「規模の拡大」競争が進んでいます。MUFGは最も多くのカード会社を抱え、整理・統合に苦心してきましたが、結局は自らの色を強く打ち出した体制作りに踏み切ることとなりました。ニコスの口座数と総取扱高だけを吸収し、従業員は半分に減らして居抜きで取り込む策を取ってきたのです。いずれ、「ニコス」の名前も消えるといわれています。日本のクレジット業界を引っ張ってきた老舗が消滅するわけで、予想されていたこととは言え、残念でなりません。しかし、メガバンク中心で進んでいる「規模の拡大」戦略は予断を許さない状態です。みずほFGも三井住友FGも業態の異なるカード会社の扱いで苦しんでいます。みずほFGの前衛に立ったクレディセゾンは、UCカードと統合して銀行系カードへの道を邁進し始めましたが、社内では寄って立つべき流通系カードの色が薄れだしたとの危機感が強まり、みずほFGとの関係もギクシャクし始めていると言われています。
三井住友FGはセントラルファイナンスとオーエムシーカードを加えてMUFGはに匹敵するほどの大所帯になりました。9月からは社内のグループ整理に関しての話し合いがもたれていますが、「即時発行」の流通系オーエムシーの強みをどう生かすかといった点で議論が白熱することが予想されます。
顧客ニーズに応じたきめ細かなサービス!
信販系、流通系のカード会社は加盟店や顧客のニーズをきめ細かく吸い上げる能力に長けています。カードビジネスのあり方としては、銀行系の上を行くというプライドもあります。その人たちとメガバンクがどう折り合いをつけるのか、これは非常に難しい問題でしょう。と言うのも、メガバンクの志向は彼らと若干異なると思えるからです。たとえば、MUFGは今後、カード部門を銀行、証券、信託と同列に引き上げ、育成する方針を打ち出しています。彼らが目指すのは、おそらくシティバンクやチェースといった米国メガバンク流のカードビジネスと思われます。
サービスの目玉となるのはリボ金利の引き下げでしょう。米国ではリボ払いが主流であり、利用者にとっては金利優遇が魅力の1つになっています(低利で融資できるのは規模が大きいからにほかならないが・・・)。加えて、預金、証券、信託、ローンとのクロスセルがサービスの中心。ポイント、割引など多数の特典を盛り込んだ日本のカードとは異なり、かなり平板で味気ないものになるでしょう。そうなると目の肥えた日本の消費者の支持を受けるかどうかは疑わしいと言えます。
規模の拡大に邁進するのはよいことですが、メガバンクは安易に米国型の収益重視のモデルに乗るのではなく、日本の信販、流通が培った顧客ニーズに応じてきめ細かなサービスを取り入れるカード作りを心がけてもらいたいものです。そうでなければ、消費者の反発を呼び、より顧客ニーズを捉えた電子マネー運営会社などの新興勢力にとって代わられる可能性もあるからです。