ベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」とは
「株式の割合は最低で25%最高で75%の範囲内に、債券の割合は75%から25%の間とすべきである」ベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」は、第2次世界大戦後間もない1949年に初版が出版され以来版を重ね、60年近く経った今でも読み継がれている名著です。そして、彼の理論は今日でもまったく色あせることはありません。
賢明なる投資家
『新賢明なる投資家』は、グレアムの原文を完全な形で残しながら、ジェイソン・ツバイクが今日の市況を勘案した注解を加え、グレアムの挙げた事例と今日の事例を対比させて、時代を超えた応用力を持たせている名著。 |
理論だけでなく、グレアムの投資実績も目を見張るものがあります。ここに、彼が設立したグレアム・ニューマン社の記録があります。
グレアム・ニューマン社は1936年からグレアムが引退する1956年までに株式市場全体のパフォーマンスが年12.2%だったのに対し、少なくても14.7%のパフォーマンスを上げていました。これはウオール街の歴史上最良にして最長記録のひとつなのです。グレアムは、間違いなく20世紀最大の投資アドバイザーであり、投資家です。
グレアムが遺したことばで、印象的なものには、次のようなものがあります。
○投資で成功するカギは自分自身に内在する。
○過去50年以上にわたる経験と市場観察によれば、「テクニカル・アプローチ」によって、長期にわたり利益を上げた者などひとりもいない。
○個人投資家にできないことは「プロのゲームでプロに勝つこと」、自分のゲームで自分にコントロールできることで勝てば良いのだ
それにしても、私が、一番貴重だと思うグレアムのことばは、冒頭の「株式は25~75%、債券は75~25%で分散投資」という基本的ルールです。たぶん、このルールは現在でもほとんどの個人投資家に当てはまる公式であり、それを始めて公言したのがグレアムだと思うからです。
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投資家のポートフォリオにおける債券と株式の比率を機械的ともいえる形で決める方法をグレアムが提唱しているのは、自分の感情を制御できない人間の本質を考慮してのことであります。
個人投資家は個別銘柄など選ぶ必要なし
また、彼は「個人投資家」をこのようにも説明しています。個人投資家の強みは、自分のことは自分で考えるという自由とぜいたくが味わえることなのに、個人投資家は株式市場の今にこだわりすぎるから、投資に成功できない。グレアムは、ほとんどの個人投資家は防衛的であるべきだと考えていました。
「大半の投資家は個別銘柄など選ぶ必要などないということを繰り返し申し上げておいたほうがいいだろう。銘柄選びをしてみようという人のほとんどが、思っていたほどうまくできないことを悟らされる~運のいい人は早くからそのことに気づいているが、運の悪い人は気づくまでに何年もかかる。自分でうまく銘柄選びができるのは、ほんの数パーセントの投資家にすぎない。もしかしたら、みんながインデックスファンドの力を借りるのが理想なのかもしれない」。
これほど昔からインデックスファンドによるパッシブ運用を彼が重視していたということもすごい先見性です。
な~んだ、そんな平凡なことか!と思うなかれ!グレアムは、平凡で満足できない投資家のためには、ハイリスクな投資法も開示しています。
積極的投資家に勧める三つの分野
デビッド・ドッドとの共著なる『証券分析』は、60年以上にわたって100万人以上の投資家たちに読み継がれ、今でも投資家たちのバイブル。 |
○比較的人気のない大企業に投資すること
○割安証券の購入
○特殊状況での算段棒~「骨折り仕事」
将来が有望なビジネスや人気のある会社に投資するという安直な選択だけで投資が成功することはなく、より本質的な価値を見極めて割安な仕入れをしなければ、積極的投資家は報われないと考えていました。
常に手堅い結果を得ることができる
最後に、皆さんが安心するグレアムのことばを紹介します。「過去57年間を振り返れば、世界を揺るがすような時代の浮き沈みや悲惨な出来事にもかかわらず、堅実な投資原則に従えば概して手堅い結果を得られるという事実は、常に変わることがなかった」。
現在の世界一の投資家ウオーレン・バフェットをして、「私にとってベンジャミン・グレアムは、著述家や師をはるかに超越した存在でした」といわしめたグレアムは1976年に静かに息をひきとりました。しかし、彼の古典はいまだに世界中で読まれ続けています。
もちろん、私たち個人投資家にも、多くの警鐘と知恵を提供し続けています。人間の愚かさは、同じ失敗を繰り返させるようですから。
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