人間は現実を不完全にしか認識できないという発見を、ソロスは強力な投資手法へと開花させました。他人には、見えないもが見えるとき、ソロスはその本領を発揮します。
「イングランド銀行を破綻させた男」
ジョージ・ソロスは、実は日本人にはなじみ深い人物です。なぜなら、彼はコミックの「サラリーマン金太郎マネーウォーズ編」に登場するキャラクター、ジョー・ロスのモデルとなっているからです。皆さんも、ロスには会ったことがあるかも? |
ジョージソロスは科学哲学者ポパーの弟子であり、どん底のハンガリーからアメリカへ渡り成功した稀有の投機家です。
彼の代名詞は「イングランド銀行を破綻させた男」!
1992年に70億ドルのポンド売りを行ったソロスは、結局1992年9月16日のいわゆる「ブラック・ウエンズデイ」を引き起こしポンドは暴落させました。イギリス政府の為替介入に対抗して70億ドルのポンド売りを行ったソロスは,実に20億ドルの利益を手にしたのです。
大衆は悪いことをして彼がお金をもうけたように思うかもしれませんが、そうでないところが経済のおもしろさです。この暴落で2割も安くなったポンドのおかげでイギリス経済は持ち直しました。イギリスの経済を守ったのは、イングランド銀行なのか?投機家のソロスなのか?実はわからないものだということです。
ソロスは投資家であろうとするよりも、悪びれずに「投機家」でありました。投機家がいるから資本主義が元気になり、マーケットが存在するわけです。投機家が存在することによってマーケットが厚くなり、結局は資源の最適配分が効率的になります。ソロスは自分の社会的役割を、投機家として果たしたのです。
元FRB議長ポール・A・ボルカー は、ソロスの著書『ソロスの錬金術』(原題:The Alchemy of Finance)の序文に次のような寄稿をしています。
『ジョージ・ソロスは彼を非常に大きな成功をした投機家、まだ有利なときに主に引き下がるという十分に賢明な投機家であると評点をつけた。現在、彼の巨大な勝利金の大半は開かれた社会(商業の自由における感性だけでなく、新しい考えの寛容、違った考え方及び振る舞い方への寛容といったより重要と思われることについて)になるために好意的な移行している新興国に援助されています。』
バフェットとソロス
ソロスとバフェットの一番大きな違いは、ソロスは事業家とか投資家を目指したことは一度もなかったということです。
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ソロスはよりアカデミックな世界に関心があり、金融市場を、自分の哲学的着想を実験する場としてとらえてきました。そこがユニークなところです。
では、株式市場に対してどんなポリシーをソロスは持っていたのでしょうか?
彼は、学会で主流となっている「市場効率説」に真っ向から異を唱えます。市場の評価は常にゆがんでおり、その歪みが基本的価値に影響を与えているということです。現在の株価は企業の業績を受動的に反映しているのではなく、将来の株価と企業の業績を決定する重要な要因だといいます。
たとえば、株式市場は景気後退を予知できると一般に考えられていますが、むしろ株式市場は景気の後退を加速させる働きがあると彼は考えます。彼の見解は・・・
1.市場はいつもある方向にバイアスしている
2.市場の現在の状況は、市場の将来の展開に影響を与える
彼は、2本の曲線を使って市場のゆがみを説明します。それは、株価と一株当たり利益(EPS)です。彼にとって、株式市場は単純な歪みの場です。
しかし、通貨の市場(為替市場)においては、どう考えていたでしょうか?
ソロスが語る、「為替とリートの世界」は次のページで!