株主になって、会社員兼オーナーになろう
株式を買う人は「株主」として会社の経営権の一部を握ることになります。もちろん、発行株式数に占める自分の持分割合しか権利はないので、ほとんどの人は0.01%にも満たないでしょうが、それでもあなたは株主になることで、その会社の一口オーナーになれます。トヨタやソニーのような有名企業でも、あなたは株を買うことで「資金を提供する側」になれます。投資信託でもあなたは株主になっています。一口10000円の投資信託がTOPIX上場企業を買っているとしたらあなたは、一挙に1600社以上の株主になるということです。数円ずつ多くの会社のオーナーになっているのと同じことです。ただ、投資信託の場合はたくさんの人の資金をとりまとめて株を買っていますので、一人一人に株主としての権利はほとんどありません。それでもあなたはたくさんの会社に「資金を提供する側」になれるのです。
私たちは日頃、「会社員」としての立場しか知らずに暮らしています。上司に頭を下げたり、会社のためにあくせく働くことで一定の報酬を得る身分しか知らないわけです。おそらくニュースを見ていてもスポーツやゴシップ、犯罪事件のニュースばかりで、経済報道にあまり目をとめないのではないでしょうか。
そうした人にはぜひ「株主」の立場を知ってみて欲しいと思います。株主になるとずいぶん世の中が変わってきます。まず、あなたは給与を会社からもらう立場であると同時に、自分の資産を会社の経営に投じている立場になります。あなたに対して会社は敬意を払い、株主総会の議事について事前・事後の報告をしてくれますし、株主総会に参加する権利を与えてくれます(今勤めている会社の株主総会に参加したことありますか?)。あなたは「会社の経営」をチェックする立場になれるわけです。
また、株主に対する感謝として利益の一部を配当として分配してくれます。配当のルールは各社ごとに様々ですが株価の3%にもなる場合もあります。あなたは資産を投じたオーナーとして、会社の利益の一部を還元してもらえるわけです。ボーナスはどこか受け身になって「ありがとう」という気分になりますが、配当は違います。あなたが株を持つオーナーなのですから、利益の配分に預かれるのは当然の権利なのです。配当をもらって、あなたは「うむ。よくがんばっているな」と思うでしょう。
また、株主優待もありがたいものです。株主に対するお礼の一環として会社の商品等を送ってくれます。食品メーカーなどは自社商品をくれますし、旅行会社や航空会社などは優待券をくれたりします。これもあなたがオーナーであるからです。
こうした直接的なメリット以外にもあなたの「目」が変わってくるはずです。自分が株主となっている会社の取り組みについてニュース等で気がつくたびあなたは「経営者はちゃんとやってるのかな?」といったことを考えるようになります。あるいは「同業他社はどうなんだろうか」とか「今、日本経済はどう動いているのだろうか」「他に景気のよい業種はあるんだろうか」などと考えるようになるはずです。政治家のコメントを見ていても他人事ではなく「もっとこうしてくれれば経済がよくなるのに」と思うようになるかもしれません。そこまでくれば、あなたはただの「雇われ会社員」ではなく立派な「社会人」になれたということです。また、株主の立場は、将来転職を考えるときのヒントになるかもしれません。
いずれにせよ、社会に対する視点が大きく広がってくるきっかけになると思います。それは消費者であり会社員(労働者)であるだけでは絶対に味わえない気分であり視点なのです。
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