常に合理的に行動しようとする姿勢を持つ
例えば、「結婚は何のメリットもないから、するつもりはない」と損得勘定で捉えた若者の発言を聞くと、苦々しく感じる人もいるかもしれません。しかし考えてみれば、「いつも一緒にいたいから」という気持ちで結婚に至るとすれば、それは好きな人と一緒にいられるという心理的な満足感というメリットが得られます。それは自分にとっては十分「トク」なことだと言えます。
子供をたくさん作ることも、「にぎやかな家庭を作れる」、「自分の夢を托せる」、「かわいい子供たちと生活できる」というように、結局は得があるから選択しているようなものだと言えます。
逆に子供を作らないという判断は、時間的・経済的に余裕ができる、というメリットがあるからです。しかし、その代償として、老後は二人きりでどちらかが先に旅立てば一人ぼっちになる。
体の自由がきかなくなると施設などで他人に面倒を見てもらうしかない、子育てを通じて得られる自身の成長や子供や孫に囲まれた生活を味わえない、という損失もありますが、それらを比較検討して選択するのが損得勘定であり、合理的な意思決定です。
中には「今が良ければ」……という判断をしている人もいるかもしれません。しかしその場合は本当の意味での損得勘定ではなく、目の前の損得にまどわされ、先を見据えた全体での損得勘定では考えられなかったということになります。つまりこれは合理的な意思決定ではないのです。
不動産投資でも、今の利回りに惑わされると、後で大変な目に遭います。結局は賃貸が埋まってこそ実現される利回りですから、空室になると、利回りは低下します。売却するときに値下がりしていれば、さらに利回りは悪化します。入り口から出口までのトータルで見ないと本当の損得が決まらないのと同じです。
損得勘定で他人と付き合おうとしては逃げられる、と言われますが、友人にしろ、同僚にしろ、取引先にしろ、誰でも自分にメリットがあるから付き合っているのではないでしょうか。いつも不平不満ばかりで一緒にいると自分まで気分が暗くなる、という人と付き合わなくなるでしょう。
やはり一緒にいて楽しい人、自分を儲けさせてくれる人など、心理的か物理的かどうかに関わらず、メリットがあるから付き合うし、その人のために尽くすのではないでしょうか。ボランティアだって、「他人が喜ぶ姿を見ると自分もうれしい」と結局は自分にメリットがあるからやるのだと考えることもできます。
本当の損得勘定とは、相手の損得も考えて行動できること
自分にとっての損得だけを考える打算的な人は、自分では合理的な思考の持ち主と考えていても、人は離れて行きます。つまりそれは合理的ではないということです。相手にとっての損得も考えて行動すると、結局は自分も得することになる。そうした大局観で損得勘定を考えることが本当の合理的思考です。
そう考えると、私たちの生活は損得勘定で考えることで、より豊かで充実していくものだと考えることができるのではないでしょうか。そして、こういう思考特性というのは習慣によって作られるものですから、プライベートでも常に合理的であろうとしない人が、ビジネスの現場で合理的に判断できるとは思えません。
一切のムダを省くことが必ずしも良いこととは言えないかもしれませんが、損得勘定、大いに結構ではないでしょうか。